著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。
掲載誌:Microchemical Journal
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の背景と目的
ブラジルは世界最大のサトウキビ生産国で、砂糖はその主要な産物の一つです。サトウキビ栽培では害虫対策にさまざまな種類の農薬が使われることがあり、その結果、砂糖が農薬で汚染されるおそれがあります。
研究チームは、サトウキビから作られた砂糖を対象に、21種類の農薬を一つの手順でまとめて取り出し、濃縮して測定する分析法を提案することを目的としました。このように複数の農薬の残留を同時に調べることを「多成分残留分析」と呼びます。
どのような方法を用いたか
著者らが用いたのは「低密度液相マイクロ抽出(LD-LPME)」と呼ばれる手法です。水より軽い(密度の低い)少量の溶媒を使い、試料から目的の成分を溶媒側へ移して集める前処理の方法です。抽出した成分は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)で測定しました。GC-MSは、混ざった成分を分離し、それぞれを質量の情報から見分けて量を測る装置です。
研究チームは、使う溶媒を150マイクロリットル、試料を0.36グラムと、どちらも少量に抑えることを重視しました。
分析法の性能と砂糖からの検出結果
論文によると、提案した方法は妥当性の確認(バリデーション)に成功したと報告されています。濃度と測定値の比例関係を示す直線性の指標R²は0.9919〜1.0000、検出できる最小の濃度である検出限界は1キログラムあたり0.24〜4.52ミリグラムでした。測定のばらつきを示す相対標準偏差は3.0〜20%、加えた農薬をどれだけ取り戻せたかを示す回収率は60〜118%とされています。
この方法で工業的に製造された砂糖の試料を分析したところ、有機塩素系や有機リン系を含む農薬の残留が確認され、濃度は1キログラムあたり2.32ミリグラム未満から89.2ミリグラムの範囲でした。最も高い頻度で検出された農薬はα-HCHで、濃度は1キログラムあたり2.32ミリグラム未満から22.2ミリグラムでした。
研究チームは、加工の度合いが低い砂糖で農薬残留の濃度が高かったと報告しています。デメララ糖ではγ-HCHが最大89.2ミリグラム、結晶糖ではフェニトロチオンが最大69.3ミリグラム、ブラウンシュガーではα-HCHが最大22.2ミリグラム(いずれも1キログラムあたり)でした。
また、試料の前処理が環境にどれだけ配慮されているかを評価する指標「AGREEprep」で、この方法は0.48の評価を得ており、著者らはほかの試料処理手順と比べて環境面での持続可能性が高い可能性を示したとしています。
この研究が示すこと
この研究は、少ない溶媒と少量の試料で、サトウキビ由来の砂糖に含まれる多種類の農薬を一度に調べる分析法を提案し、その性能を確認したものです。あわせて、工業的に製造された砂糖の試料から複数の農薬残留が検出され、砂糖の種類や農薬によって濃度に違いがあったことも報告されています。
原著論文の著者・所属:Josenai Penha Porto(Food Science Postgraduate Program, Faculty of Pharmacy, Federal University of Bahia, 40170-100 Salvador, BA, Brazil)、Madson Moreira Nascimento(National Institute of Science and Technology in Energy and Environment (INCT E&A), Federal University of Bahia (UFBA), Ondina University Campus, 40170-115 Salvador, BA, Brazil; SENAI CIMATEC University, Integrated Laboratory of Applied Research in Chemistry, 1845 Orlando Gomes Avenue, Piatã, 41650-010 Salvador, BA, Brazil)、Jeancarlo Pereira dos Anjos(Department of Chemistry , Federal University of São Carlos (UFSCar) , Washington Luís Highway , km 235 , 13565-905 , São Carlos , SP , Brazil; National Institute of Science and Technology in Energy and Environment (INCT E&A) , Federal University of Bahia (UFBA) , Ondina University Campus , 40170-115 , Salvador , BA , Brazil)、Marcelo Andrés Umsza-Guez(Food Science Postgraduate Program, Faculty of Pharmacy, Federal University of Bahia, 40170-100 Salvador, BA, Brazil)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Josenai Penha Porto, Madson Moreira Nascimento, Jeancarlo Pereira dos Anjos, et al. Innovative procedure based on low-density liquid-phase microextraction (LD-LPME) for pesticides multiresidues determination in industrialized sugars from sugarcane. Microchemical Journal 2026-08-06. DOI: 10.1016/j.microc.2026.119319. 原著ライセンス:CC BY.