著者の所属・活動拠点の国は、スペインです。

掲載誌:Journal of Food Composition and Analysis

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ムラサキイガイ(Mytilus galloprovincialis)は広く食べられている二枚貝で、体内には海水や餌に由来するさまざまな元素が取り込まれます。研究チームは、スペイン北西部ガリシア地方の沿岸で採れたムラサキイガイについて、多くの元素の含有量をまとめて調べました。

研究では三つの点に注目しています。採取場所によって元素の組成がどの程度違うか、貝の体のどの部位にどの元素が多く集まるか、そして蒸す調理によって元素の濃度がどう変わるか、という点です。

何をどのように調べたか

著者らは、ガリシアの複数の沿岸域から集めた33グループのムラサキイガイを分析しました。測定には、試料を高温のプラズマでイオン化し、質量の違いから元素を見分けて定量するICP-MS/MSという手法を使っています。微量の元素でも多数の種類を一度に測れる方法です。

抄録によると、この分析手順の性能は良好でした。含有量が保証された標準物質を測ると、保証値のある元素の大半で回収率(本来の量に対して測定で得られた量の割合)は87〜119%でした。定量できる下限も、水産物の日常的な監視に使える水準だったと報告されています。

主な結果

多くのデータをまとめて扱う多変量統計解析の結果、採取グループの間で元素組成に大きなばらつきがあることが分かりました。各グループに特有の元素の組み合わせ、いわば「元素の指紋」をもとに、貝を分類することもできました。著者らは、元素の蓄積に環境要因と生物学的な要因が影響していることを示す結果だとしています。

体の部位ごとにも、元素の分布に違いが見られました。銅、ニッケル、コバルト、クロム、ヒ素などは、消化を担う器官である中腸腺に多く蓄積する傾向がありました。一方、亜鉛は外套膜(殻の内側で体を覆う膜状の組織)で濃度が高くなっていました。

蒸し調理の影響は元素によって異なりました。鉄、ルビジウム、カドミウムでは有意な変化が見られました。ヒ素、セレン、ルビジウムは、分析したすべてのバッチで一貫して減少していました。特にヒ素は、蒸した後にすべての試料で濃度が下がりました。蒸し汁からもヒ素などの元素が検出されたことから、研究チームは、元素が調理中に汁へ移ることが、こうした変化の一因になっていると考えています。

研究が示すこと

この研究は、同じ地域で採れたムラサキイガイでも採取場所によって元素組成が異なり、体の部位によって集まりやすい元素が違うことを示しました。また、蒸す調理によって一部の元素の量が変わり、その一部は蒸し汁に移ることも報告しています。貝に含まれる元素を考えるときには、産地、部位、調理の仕方をあわせて見る必要があることを伝える研究です。

原著論文の著者・所属:Rebeca Pérez-Ramírez(Department of Analytical Chemistry, Nutrition and Food Sciences, University of Alicante, P.O. Box 99, Alicante 03080, Spain)、Raquel Sánchez-Romero(Department of Analytical Chemistry, Nutrition and Food Sciences, University of Alicante, P.O. Box 99, Alicante 03080, Spain)、Salvador Maestre-Pérez(Department of Analytical Chemistry, Nutrition and Food Sciences, University of Alicante, P.O. Box 99, Alicante 03080, Spain)、Ana Beltrán-Sanahuja(Department of Analytical Chemistry, Nutrition and Food Sciences, University of Alicante, P.O. Box 99, Alicante 03080, Spain)、José-Luis Todolí-Torró(Department of Analytical Chemistry, Nutrition and Food Sciences, University of Alicante, P.O. Box 99, Alicante 03080, Spain)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rebeca Pérez-Ramírez, Raquel Sánchez-Romero, Salvador Maestre-Pérez, et al. Multielemental characterization of mussels (Mytilus galloprovincialis): Geographic variability, tissue distribution and cooking-induced changes. Journal of Food Composition and Analysis 2026-08-05. DOI: 10.1016/j.jfca.2026.109429. 原著ライセンス:CC BY.