著者の所属・活動拠点の国は、ギリシャです。

掲載誌:Plants

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

水不足の影響を和らげられるか

研究チームは、プロリンというアミノ酸を豊富に含む酵母由来製剤を葉に散布することで、水不足がブドウに及ぼす影響を和らげられるか調べました。背景には、地中海地域のブドウ栽培で、干ばつへの対応と水の効率的な利用が重要になっていることがあります。

試験はギリシャの大学の試験圃場で、2022年と2023年に実施されました。対象は赤ブドウ品種のアギオルギティコと白ブドウ品種のアシルティコです。灌漑を制限した条件と、灌漑せず降雨だけに頼る条件で、それぞれ製剤を散布する区と散布しない区を比較しました。十分に灌漑し、製剤を散布しない区も比較の目安として設けました。

研究チームは収量や果実の成分を両年に調べ、葉の面積、枝の成長、光合成などは2022年に測定しました。2023年の夏は前年より高温で雨が少なく、異なる気象条件での比較となりました。

生育と果実成分に、品種ごとの違い

アギオルギティコでは、製剤による葉の面積や枝の長さの増加が、灌漑制限下よりも降雨だけに頼る条件で大きくなりました。例えば、降雨だけに頼る区の枝の長さは、無散布で54.9センチ、散布区で102.2センチでした。統計解析でも、これらの生育指標に対する製剤の効果は、水分条件によって異なることが示されました。朝に測定した光合成などの応答にも、水分条件による違いが認められました。

一方、アシルティコでは、葉や枝の成長について、水分条件によって製剤の効果が変わるという統計的な裏付けは得られませんでした。光合成などの応答も、灌漑の有無によって一貫して変わるというより、測定時期によって変動していました。

アシルティコで明瞭だったのは、糖度の指標となる果汁の可溶性固形分濃度の応答です。両年とも、製剤散布に伴う濃度の低下は降雨だけに頼る条件で大きく、灌漑制限下では小さくなりました。ただし、アギオルギティコの収量では、2年間を合わせた解析で製剤散布の有意な効果は認められず、生育や生理面の応答がそのまま増収につながったわけではありません。

一律の効果ではなく、条件に応じた応答

著者らは、今回の結果をプロリン単独の作用ではなく、ほかの成分も含む酵母由来製剤全体への応答として解釈しています。また、十分に灌漑したブドウに製剤を散布する区はなかったため、水不足のない条件での効果は判断できません。

研究が示したのは、水不足のブドウに対する製剤の効果が、品種や水分条件、測定する形質によって異なるということです。著者らは、この製剤を灌漑管理の代わりではなく、水不足に対応するための補助的な手段として位置づけています。

原著論文の著者・所属:Despoina G. Petoumenou(Laboratory of Viticulture, Department of Agriculture, Crop Production and Rural Environment, University of Thessaly, Fytokou Street, 384 46 Volos, Greece)、Vasiliki Liava(Laboratory of Viticulture, Department of Agriculture, Crop Production and Rural Environment, University of Thessaly, Fytokou Street, 384 46 Volos, Greece)、Athanasia Tsigkreli(Laboratory of Viticulture, Department of Agriculture, Crop Production and Rural Environment, University of Thessaly, Fytokou Street, 384 46 Volos, Greece)、Christos Spyridon Dimpertis(Laboratory of Viticulture, Department of Agriculture, Crop Production and Rural Environment, University of Thessaly, Fytokou Street, 384 46 Volos, Greece)、Dimitrios Saripavlidis(Laboratory of Viticulture, Department of Agriculture, Crop Production and Rural Environment, University of Thessaly, Fytokou Street, 384 46 Volos, Greece)、Emmanouil Kontaxakis(Department of Agriculture, School of Agricultural Sciences, Hellenic Mediterranean University, P.O. Box 1939, 71410 Heraklion, Greece)、Spyridon Souipas(Laboratory of Viticulture, Department of Agriculture, Crop Production and Rural Environment, University of Thessaly, Fytokou Street, 384 46 Volos, Greece)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Despoina G. Petoumenou, Vasiliki Liava, Athanasia Tsigkreli, et al. Mitigating Water-Deficit Stress in Mediterranean Grapevines: Field Responses of Agiorgitiko and Assyrtiko to a Proline-Rich Yeast Derivative. Plants 2026-08-28. DOI: 10.3390/plants15172631. 原著ライセンス:CC BY.