著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。

掲載誌:Horticulturae

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

地中海地域では気候変動によって極端な気象現象の規模や頻度が増し、ブドウの生育や生産性に影響が出ています。著者らは、ブドウの葉や枝が育つ段階の「機能形質」(植物の働きに関わる形や性質)がストレスへの強さを左右する要因であり、それを調べることで乾燥や暑さに強い品種の選定に役立つ可能性があると述べています。

研究チームは、シチリア島周辺の小さな島々で伝統的に栽培されてきた2品種(ジビッボとコリント)と、シチリア本島で最も一般的に栽培されている2品種(カタラットとネーロ・ダーヴォラ)を取り上げ、暑く乾いた気候への適応力を評価・比較することを目的としました。

何を調べたか

4品種はいずれも、灌漑を行わず雨水だけで育てる同じ実験用の品種保存圃場で栽培されていました。同じ条件で育つ株を比べることで、品種ごとの違いを見やすくしています。

研究チームは季節を通じて、気孔コンダクタンス(葉の表面にある小さな穴「気孔」を通じた水蒸気などの出入りのしやすさ)、葉の水ポテンシャル(葉の中の水がどれだけ強く引っ張られた状態にあるかを示す指標で、乾燥の程度を表す)、葉の温度の変化を追跡しました。そして、これらの変化を、葉の水分に関わる性質や、葉脈の中にある水の通り道「木部」の構造的な特徴と関連づけて分析しました。

主な結果

論文によると、4品種の間には機能形質と生理的なふるまいに有意な差が見られました。中でも、葉が張りを失う時点の葉の水ポテンシャル(乾燥が進んで葉がしおれ始める境目を表す値)は最も情報量の多い指標の一つであり、日中の葉の水ポテンシャルや日中の気孔コンダクタンスとともに、品種の違いをよく示していたと報告されています。

ネーロ・ダーヴォラ、カタラット、ジビッボの3品種は、それぞれ異なる生理的な戦略によって、地中海地域の夏から秋にかけての乾燥と暑さに対して高い適応力を示しました。一方、コリントはより影響を受けやすい品種であるとみられました。

研究が示す意味

この研究は、同じ地域で育つブドウでも、品種によって乾燥や暑さへの対処の仕方や強さが異なることを示しています。著者らは、葉の機能形質を分析することが、気候変動のもとでの品種選び、ブドウ畑の管理、そして今後の育種の方針を支える手がかりとして重要であると結論づけています。

原著論文の著者・所属:Loredana Abbate(Institute of Biosciences and Bioresources (IBBR), National Research Council, Via Ugo La Malfa 153, 90146 Palermo, Italy)、Simone Inzerillo(Department of Biological, Chemical and Pharmaceutical Sciences and Technologies (STEBICEF), University of Palermo, Via Archirafi 20, 90123 Palermo, Italy)、Antonio Motisi(Institute of Biosciences and Bioresources (IBBR), National Research Council, Via Ugo La Malfa 153, 90146 Palermo, Italy)、Francesco Carimi(Institute of Biosciences and Bioresources (IBBR), National Research Council, Via Ugo La Malfa 153, 90146 Palermo, Italy)、Maurizio Sajeva(Department of Biological, Chemical and Pharmaceutical Sciences and Technologies (STEBICEF), University of Palermo, Via Archirafi 20, 90123 Palermo, Italy)、Andrea Nardini(Department of Life Sciences, University of Trieste, Via L. Giorgieri 10, 34127 Trieste, Italy)、Elisabetta Oddo(Department of Biological, Chemical and Pharmaceutical Sciences and Technologies (STEBICEF), University of Palermo, Via Archirafi 20, 90123 Palermo, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Loredana Abbate, Simone Inzerillo, Antonio Motisi, et al. Drought Adaptive Strategies in Mediterranean Grapevine Cultivars: Functional Trait Variability. Horticulturae 2026-08-09. DOI: 10.3390/horticulturae12080986. 原著ライセンス:CC BY.