土用の丑の日といえばこい 養殖 生ではなく、うなぎを思い浮かべる人が多いだろう。しかし各地には昔からこい料理、ふなの甘露煮、どじょう鍋、あゆの塩焼きといった川魚の郷土料理が受け継がれてきた。うなぎ一辺倒では見えてこないが、実は川魚は種によって「得意な栄養素」がはっきり分かれている。並べてみると、その違いこそが各地の食文化が長く残ってきた理由のひとつに思えてくる。
こいはビタミンDが際立つ
こい 養殖 生は可食部100gあたりビタミンD 14µgを含む。ビタミンDはカルシウムの吸収を促し、骨の形成に関わるとされる脂溶性ビタミンだ。食事摂取基準では成人の目安量が1日9.0µgとされ、あわせて耐容上限量(過剰摂取の上限)も定められている。この成分値は養殖のもので計測されている。ここで押さえておきたいのは、成分表の数値がいずれも可食部100gあたりだという点だ。こいの廃棄率は50%で、頭部・内臓・骨・ひれを除いた身の値として計測されている。筒切りにした1切れには骨も含まれるから、口に入る身は切り身の重さより少なくなる。エネルギーは可食部100gあたり157kcal、たんぱく質17.7g、脂質10.2gと、川魚の中では脂の乗りも感じられる数値だ。
ふなはビタミンB1、どじょうはカルシウムとリン
ふな 生は銀ぶな・源五郎ぶな・にごろぶななどが対象で、可食部100gあたりビタミンB1を0.55mg含む。ビタミンB1は糖質などの代謝・エネルギー産生を助ける補酵素とされ、食事摂取基準では成人でおおむね1日0.8〜1.2mgの推奨量が示されている。1尾約50gが目安だが、ふなも廃棄率50%——可食部はおよそ25gなので、1尾ではおよそ0.14mgになる計算だ。エネルギーは93kcal、脂質2.5gとこいよりずっと控えめで、あっさりとした身であることがうかがえる。
一方、どじょう 生はカルシウム1100mg、リン690mgという数値が目を引く。カルシウムは骨や歯の主要な構成要素で細胞の働きにも必須とされ、リンはカルシウムとともに骨をつくりATPなどエネルギー代謝に関わる成分とされる。食事摂取基準ではカルシウムは成人でおおむね1日650〜800mgの推奨量、リンは成人で1日800〜1000mgの目安量が示され、いずれも耐容上限量(過剰摂取の上限)も定められている。どじょうは丸ごと食べる食品として成分値が計測されている点が大きい。骨まで含めて丸ごと口にするからこそ、この数値になっていると考えられる。1尾はわずか数gなので、可食部100gあたりの数値をそのまま「たくさん摂れる」と捉えるのではなく、何尾かをまとめて食べてようやく実感がわく量になる。ビタミンB2も1.09mgと多く、こちらは多くの栄養素の代謝に関わり、皮膚や粘膜の健康維持を助ける成分とされる。食事摂取基準では成人でおおむね1日1.2〜1.7mgの推奨量が示されている。
あゆはバランス型
ここで「あゆにも何か際立った栄養素があるはず」と身構えると、少し肩透かしを食う。あゆ 天然 生はエネルギー93kcal、たんぱく質18.3g、脂質2.4gと、一点突破というよりは全体にバランスの取れた数値が並ぶ。1尾80gほどを目安に、香ばしく焼いて骨まで味わう塩焼きは、川魚らしい食べ方の代表格といえるだろう。
なお、川魚とは別に海の魚であるうるめいわし 丸干しも参考までに触れておくと、可食部100gあたりビタミンB12は25µgで、アミノ酸や核酸の代謝に関わり赤血球の形成を助ける成分とされる。食事摂取基準では成人の目安量が1日4.0µgとされている。ただし丸干しは食塩相当量が5.8gと高く、食塩相当量は成人でおおむね1日6.5〜7.5g未満という目標量が示されていることを念頭に置きたい。少量で味わう食べ方が向いている。
毎日の食卓への取り入れ方
うなぎだけを特別扱いせず、こいの筒切りを味噌煮に、どじょうを鍋でまるごと、ふなを甘露煮で、あゆを塩焼きで——と持ち味の異なる川魚を使い分けると、食卓の幅は自然と広がる。どれも一度に大量に食べる食材ではないからこそ、少量ずつ組み合わせて楽しみたい。たんぱく質は成人でおおむね1日50〜65gの推奨量が示されており、川魚はその一部を担う選択肢のひとつと考えるとよいだろう。
まとめ
こいはビタミンD、どじょうはカルシウムとリン、ふなはビタミンB1——川魚は種ごとに違う持ち味を持っている。うなぎ一辺倒では見えてこなかったこの違いこそ、各地の郷土料理がそれぞれの川魚を選び、今日まで受け継いできた理由なのかもしれない。次にどこかの土地でまだ知らない川魚料理に出会ったら、その魚がどんな栄養素を得意としているのか、成分表を覗いてみたくなるはずだ。
※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準・e-ヘルスネット「カルシウム」(厚生労働省)・e-ヘルスネット「リン」(厚生労働省)
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。