著者の所属・活動拠点の国は、南アフリカです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

伝統的な発酵食品はアフリカの食文化と栄養に欠かせない存在ですが、多くの地域では、その中にどのような微生物がすみ、どのように関わり合っているかが十分に調べられていません。研究チームは、南部アフリカで作られている自然発酵の伝統食品3種を対象に、含まれる微生物の顔ぶれと化学的な特徴を探索的に明らかにすることを目指しました。

対象としたのは、牛乳を自然発酵させた「アマシ」、ソルガムとトウモロコシを混ぜた粥状の発酵食品(ティンと呼ばれる粥のタイプ)、そしてトウモロコシを使った酸味のある発酵粥「マヘウ」です。ここでいう自然発酵とは、特定の菌を意図的に加えるのではなく、原料や環境にもともといる微生物によって発酵が進む方法を指します。

何をどのように調べたか

著者らは、微生物の種類を調べるためにアンプリコンシーケンシングという手法を用いました。これは、細菌の識別に使われる16S rRNA遺伝子と、カビや酵母などの真菌の識別に使われるITS領域という特定の遺伝子部分を増やして読み取り、試料にどのような微生物が含まれているかを推定する方法です。

あわせて、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)による分析も行いました。これは試料に赤外線を当て、どの波長がどれだけ吸収されるかから、脂質、タンパク質、炭水化物、有機酸といった成分の特徴を「指紋」のように捉える方法です。さらに、食品ごとの微生物の構成がどれほど異なるかを比べる「ベータ多様性」の解析も行われました。

主な結果

要旨によると、3種のうち微生物の多様性が最も高かったのはアマシで、細菌ではラクトコッカス属、真菌ではマラセチア・レストリクタが優勢でした。マヘウでは、細菌のクロストリジウム属(Clostridium sensu stricto)と、真菌のマラセチア・レストリクタが優勢でした。ソルガムとトウモロコシの粥状発酵食品は多様性が低く、細菌のワイセラ属が優勢で、真菌ではシンビオタフリナ属の種が見られました。

FTIRの結果もこうした傾向を裏付けるもので、アマシでは脂質やタンパク質に由来する特徴が、穀物を原料とする2種では炭水化物や有機酸に由来する特徴が目立ちました。ベータ多様性の解析では、原料の違いによって微生物の構成がはっきり分かれることが確認され、食品の間で共通する微生物は限られていました。著者らはこれを、それぞれの食品で微生物が特有の環境に適応している表れとしています。

研究が示すこと

研究チームは、原料の組成や加工の仕方が自然発酵の結果を形づくっていることを示したと述べています。また、日和見的に問題を起こしうる微生物が含まれることによる安全面の懸念と、有用な微生物から将来プロバイオティクス候補となる菌株を分離できる可能性の両方を指摘しています。ただし著者らは、検出された微生物が実際に生きているのか、どのような性質を持つのかはまだ確かめられておらず、その存在が重要な意味を持つかどうかは今後の研究で判断する必要があるとしています。

著者らは、遺伝子による微生物解析とFTIRが伝統的な発酵食品の特徴づけに使えることを示した一方で、食品の正体や安全性、機能を見極めるには、定量的な成分分析なども組み合わせる必要があると結論づけています。文化的に大切な食品を科学的に理解するための、出発点となる探索的な成果といえます。

原著論文の著者・所属:Mbuyane Lethiwe Lynett(Department of Life and Consumer Sciences, College of Agriculture and Environmental Sciences, University of South Africa (UNISA), Science Campus, Roodepoort 1709, South Africa)、Chigwada Aubrey Dickson(Department of Environmental Sciences, College of Agriculture and Environmental Sciences, University of South Africa (UNISA), Science Campus, Roodepoort 1709, South Africa)、Tekere Memory(Department of Environmental Sciences, College of Agriculture and Environmental Sciences, University of South Africa (UNISA), Science Campus, Roodepoort 1709, South Africa)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mbuyane Lethiwe Lynett, Chigwada Aubrey Dickson, Tekere Memory. Exploratory Amplicon-Based Metagenomic Profiling and Chemical Fingerprinting of Three Spontaneously Fermented Southern African Traditional Products. Foods 2026-11-03. DOI: 10.3390/foods15213935. 原著ライセンス:CC BY.