この研究は、インドの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of Ethnic Foods

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref

発酵食品の特徴を、複数の角度から調べる

地域や家庭で受け継がれてきた発酵食品は、原料や作り方によって味も微生物の構成も異なります。著者らは、こうした食品の中で微生物がどのように働き、栄養面の特徴や腸内の微生物との関わりを生み出すのかを整理するため、既存の研究をまとめた総説を発表しました。個人に合った食事を考えるうえで、どのような情報が得られるかも検討しています。

総説が取り上げる「マルチオミクス」とは、微生物のDNA、遺伝子の働き、タンパク質、代謝によって生じる物質などを、複数の角度から調べる方法です。微生物の種類を知るだけでなく、その働きと食品の性質を結び付けて理解することを目指しています。

文献から見えた、原料と製法による違い

著者らは学術データベースなどで文献を探し、採用した78件をもとに知見を整理しました。対象の発酵食品は、乳製品、植物性食品、水産物を原料とする食品に分けて比較しています。新たに食品を作ったり、人に食べてもらったりした実験ではなく、既存の報告を文章でまとめる形式のレビューです。

紹介された研究では、食品中のDNAを直接調べる「メタゲノミクス」によって、通常の培養では見つけにくい微生物も捉えられていました。多くの食品で中心となっていたのは、糖を分解して乳酸を作る乳酸菌です。一方、微生物の構成は一様ではなく、チーズでは乳の種類や季節、熟成期間など、水産発酵食品では原料や塩分による違いが報告されています。

具体例として、白キャベツのザワークラウトを追跡した研究では、発酵初期に検出された腐敗や汚染に関わる細菌が、その後は乳酸菌中心の構成に置き換わったと報告されています。また、ヒマラヤ地域の発酵野菜グンドルックを比較した研究では、伝統的に作られた試料の微生物は、管理された実験室で作ったものより多様でした。総説は、製造環境や地域の違いも発酵食品の微生物群を形づくると整理しています。

微生物の名前から、その働きの理解へ

著者らは、DNA解析によって発酵食品の微生物の多様性が詳しく見えるようになり、品質や安全性、風味を理解する手がかりが増えたと述べています。ただし、検出された微生物が発酵中に具体的に何をしているのか、菌株同士がどう関わるのかは、十分に分かっていない部分もあります。

この総説が示すのは、伝統的な発酵食品を理解するには、微生物の種類と、その働きや生み出す物質を結び付けて見ることが重要だという点です。個人に合った栄養を考えるためにも、まず食品ごとの特徴を詳しく捉えることが土台になると著者らは位置付けています。

著者:Anubha Gupta(Department of Biotechnology, Jaypee Institute of Information Technology, Noida, India)、Indira Partha Sarethy(Department of Biotechnology, Jaypee Institute of Information Technology, Noida, India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Anubha Gupta, Indira Partha Sarethy. Decoding ethnic fermented food systems: a narrative review of multi-omics approaches leading to personalized nutrition. Journal of Ethnic Foods 2026-09-01. DOI: 10.1186/s42779-026-00331-8. 原著ライセンス:CC BY.