著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Ilmu Gizi Journal of Nutrition Science
ライセンス: CC BY-SA 2.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
尿路感染症は、急性の呼吸器や消化管の感染症と並んで、子どもによく見られる感染症です。著者によると、腎機能の低下や急性腎障害、尿路から全身に広がる重い感染(尿路性敗血症)の原因となることがあり、長い目で見ると腎臓の瘢痕化や高血圧、末期の慢性腎臓病につながるおそれもあります。
一方、栄養不良は免疫の働きを弱めて子どもを感染症にかかりやすくします。感染症は食欲を落とし、体が自らを分解してエネルギーを得る「異化」の状態を招いて、必要な栄養量を増やします。このため、栄養不良と感染症は互いに悪化させ合う関係にあると論文は説明しています。
この論文は、そうした状況にある一人の子どもに対し、標準化された「栄養ケアプロセス(NCP)」を実践した過程を報告する症例報告です。目的は、病状の安定を支えること、異化状態で増えたエネルギー必要量を満たすこと、そして栄養状態のさらなる悪化を防ぐことでした。
対象となった患者と栄養ケアの進め方
対象は8歳4か月の男児です。緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が関わる尿路感染症、腎臓そのものの障害による急性腎障害、そして「マラスムス型」と呼ばれる重度のたんぱく質・エネルギー栄養不良と診断され、2026年3月にインドネシアの総合病院の小児病棟に入院しました。マラスムスは、エネルギーが長く不足して体がやせ細った状態を指します。主な訴えは下腹部の差し込むような痛みで、排尿時の痛み、発熱、白く濁った尿も見られました。
栄養ケアプロセスは、栄養スクリーニング、栄養アセスメント(評価)、栄養診断、栄養介入、モニタリングと評価という段階を順に踏む手法です。著者はこの流れに沿って、6日間の介入を行い、その経過を記述的にまとめました。
まず、子ども向けの栄養リスク判定ツール「STRONGkids」で評価したところ、点数は4で、栄養不良の高リスクと判定されました。体重は13.9キログラム、身長は108.1センチメートルで、年齢に対する体格指数(BMI)の標準偏差スコアはマイナス3.02と、重度の栄養不良に分類されました。血液検査では、ヘモグロビン値が1デシリットルあたり8.5グラムの重い貧血が見られ、細菌感染の指標であるプロカルシトニンも高い値でした。腎機能の指標である血中尿素窒素(BUN)とクレアチニンも大きく上昇していました。
食事の面では、自宅での摂取量がエネルギーで必要量の約6割にとどまり、入院後も処方された量を十分に食べられていませんでした。これらをもとに、著者は「口から摂る量の不足」「栄養不良」「栄養に関わる検査値の異常」の三つを栄養診断として挙げました。
段階的な栄養介入と経過
介入では、尿路感染症と栄養不良の回復期であることを考慮した腎臓病向けの食事が、口から、主に流動食の形で、1日3回の食事と2回の間食に分けて提供されました。1日の目標は1,440キロカロリーで、たんぱく質54グラム、脂質40グラム、炭水化物216グラムとし、水分は1日1,200ミリリットルに制限されました。
腹痛と食欲の低下があったため、最初の3日間は目標の50%から始め、4〜5日目には普通の食事と流動食を組み合わせて80%に、6日目には100%へと段階的に増やしました。あわせて、本人と家族に対して食事内容の理解と継続を促す栄養指導も行われました。
論文によると、提供された食事のうち実際に食べられた割合は、1日目の65.3%から3日目には83.3%まで上がりました。量を増やした4日目は腹痛と食欲低下が続いて目標に届きませんでしたが、5日目には90%に達し、全量を処方した6日目は86.8%でした。
検査値では、ヘモグロビンが8.5から9.7へ上がり、BUNは91から61へ、クレアチニンは4.96から3.82へ下がりました。ただし、いずれも正常範囲には戻っておらず、著者は検査値から見た状態はまだ不安定で、引き続き経過観察と介入が必要だとしています。尿検査で陽性だった血液とたんぱくは、介入の終わりには陰性になっていました。腹痛は最終日にも残っていたものの、初日に比べて軽くなったと報告されています。一方、6日間で体重は増えず、13.9キログラムのままでした。
この報告が伝えること
著者は、体の状態や食べられる量に合わせて栄養量を少しずつ増やしていく方法が、患者の病状の安定と回復の過程を支えたと結論づけています。同時に、体重の増加は見られず、検査値も正常には戻っていないことから、さらなる工夫が必要だとも述べています。
これは一人の患者を対象にした短期間の記録であり、栄養ケアの効果を比較して確かめた研究ではありません。それでも、感染症と腎障害、重い栄養不良が重なった子どもに対し、評価から診断、介入、見直しまでを一つの手順に沿って進める様子を具体的に示した点に、この報告の意味があります。
原著論文の著者・所属:I Komang Wangun Astawa(Poltekkes Kemenkes Makassar)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):I Komang Wangun Astawa Standardized NCP in Pediatric Patients UTI by Pseudomonas and Marasmus : Inggris. Jurnal Ilmu Gizi Journal of Nutrition Science 2026-08-31. DOI: . 原著ライセンス:CC BY-SA 2.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。