著者の所属・活動拠点の国は、サウジアラビア、トルコ、オーストラリアです。
掲載誌:Food Science & Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
チアシードは食物繊維やたんぱく質のほか、ポリフェノールなどの植物由来成分を含み、油にはオメガ3系をはじめとする多価不飽和脂肪酸が多い食品素材として知られています。一方で、焙煎のような加熱は種子の成分を変えることがあり、成分を取り出す「抽出」の方法によっても得られる量が左右されます。
研究チームは、生のチアシードと焙煎したチアシードについて、超音波を使う抽出と、一般的な湯浴(温水で温める方法)による抽出を比べました。温度と時間を変えたときに、油の量、ポリフェノール類、抗酸化能、脂肪酸の組成がどう違うかを調べています。
何をどのように調べたか
焙煎試料は、薄く広げた種子をオーブンで175℃、30分加熱して用意しました。種子を粉砕した後、メタノールと水の混合液を加え、超音波浴または湯浴で処理しました。条件は25℃と40℃の2つの温度、20分と40分の2つの時間で、処理しないものを対照としています。
得られた抽出液では、総フェノール量(ポリフェノール類全体の目安)、総フラボノイド量、DPPH法による抗酸化能を測りました。さらに、カテキンや没食子酸といった個別のフェノール化合物を液体クロマトグラフィーで分析しました。油については、同じ条件で前処理した後にソックスレー抽出(溶媒を循環させて油を取り出す方法)で取り出し、ガスクロマトグラフィーで脂肪酸の組成を調べています。
主な結果
油の量は、生か焙煎か、抽出方法、温度、時間のいずれにも有意に影響されました。生の種子では、おおむね温度が高く時間が長いほど油の量が増え、両方の方法で40℃・40分が最も高くなりました(超音波の40℃・20分は例外)。著者らは、同程度の条件では超音波のほうが湯浴より油を取り出しやすく、焙煎した種子はどの処理でも生の種子より油の量が多かったと報告しています。ただし、温度を上げて油の量が増える場面では、有用成分の量が減ることも多くみられました。著者らはこれを、油の取り出しやすさと成分の保持との間の温度によるトレードオフと捉えています。
総フェノール量は、どちらの抽出方法でも対照より有意に増えました。生の種子では、超音波で100gあたり約103〜160mg、湯浴で約103〜163mg(没食子酸換算)でした。焙煎した種子ではさらに高く、超音波で約154〜192mg、湯浴で約154〜186mgでした。最も高い値はいずれも25℃の条件で得られ、40℃にすると全体に低下する傾向がありました。著者らは、焙煎で値が高まった理由の一つとして、焙煎で生じる褐色化反応(メイラード反応)の生成物が測定試薬に反応した可能性も挙げています。総フラボノイド量も似た傾向を示しましたが、温度の影響をより強く受け、25℃で高く、40℃では有意に減少しました。
一方、抗酸化能はどの条件でもおよそ6.8〜7.0mmol TE/kgの狭い範囲に収まりました。生と焙煎の間にも抽出条件の間にも有意な差はなく、焙煎によって一貫して高まることもありませんでした。
個別のフェノール化合物では、没食子酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、カテキン、ルチン、ケンフェロールなどが主に検出されました。生の種子では超音波抽出のほうが、焙煎した種子では湯浴抽出のほうが、多くの化合物で高い値を示しました。焙煎した種子を25℃・20分の湯浴で抽出した試料では、カテキンが100gあたり約293mgと報告されています。
油の主な脂肪酸は、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸でした。生と焙煎のどちらの油でも、どの条件でもα-リノレン酸が約69〜70%、オレイン酸が約10%を占めました。生の種子の油では、リノール酸が約18〜19%でした。報告された範囲をみると、抽出方法や温度による違いはわずかでした。
この研究が示すこと
この研究では、同じチアシードでも、焙煎の有無と抽出の方法・温度・時間によって、取り出される油やポリフェノール類の量が大きく変わることが示されました。特にフェノール類やフラボノイドは、穏やかな25℃の条件で多く得られ、温度を上げると減る傾向がありました。その一方で、抗酸化能の値と油の主な脂肪酸の割合は、条件を変えてもほぼ安定していました。チアシードの成分を調べたり取り出したりする際に、どの抽出条件を選ぶかが結果を左右することを伝える研究といえます。
原著論文の著者・所属:Isam A. Mohamed Ahmed(Department of Food Science and Nutrition, College of Food and Agricultural Sciences King Saud University Riyadh Saudi Arabia)、Elfadıl E. Babiker(Department of Food Science and Nutrition, College of Food and Agricultural Sciences King Saud University Riyadh Saudi Arabia)、Mehmet Musa Özcan(Faculty of Agriculture, Department of Food Engineering Selcuk University Konya Turkey)、Belal M. Mohammed(Department of Food Science and Nutrition, College of Food and Agricultural Sciences King Saud University Riyadh Saudi Arabia)、Nurhan Uslu(Faculty of Agriculture, Department of Food Engineering Selcuk University Konya Turkey)、Mahmoud Younis(Department of Food Science and Nutrition, College of Food and Agricultural Sciences King Saud University Riyadh Saudi Arabia)、Fahad AlJuhaimi(Department of Food Science and Nutrition, College of Food and Agricultural Sciences King Saud University Riyadh Saudi Arabia)、Kashif Ghafoor(The School of Agriculture, Food, and Ecosystem Sciences The University of Melbourne Parkville Victoria Australia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Isam A. Mohamed Ahmed, Elfadıl E. Babiker, Mehmet Musa Özcan, et al. Comparative Evaluation of Ultrasonic and Water Bath Extraction on Bioactive Compounds, Phenolics, Fatty Acids, and Lipid Indices of Raw and Roasted Chia Seeds at Different Temperatures. Food Science & Nutrition 2026-08-01. DOI: 10.1002/fsn3.72270. 原著ライセンス:CC BY.