著者の所属・活動拠点の国は、バングラデシュです。

掲載誌:Food Science & Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

肥満は脂質異常、脂肪肝、腎臓病、血液の変化など、さまざまな健康上の問題と関連することが知られています。食事や運動に加えて薬による治療もありますが、副作用が使用の妨げになることもあり、日常の食品に含まれる成分が肥満やそれに伴う代謝の乱れにどう関わるかが研究されています。

チア(学名 Salvia hispanica L.)の種子は、オメガ3脂肪酸の一種であるα-リノレン酸や、ポリフェノールを含むことで知られています。ただし、チアシード油が肥満や脂質に与える影響については、研究によって結果が分かれていました。腎臓や血液への影響についての報告も限られており、油の量によって内臓脂肪や肝臓・腎臓の働きへの影響がどう変わるかは、まだ調べられていなかったと著者らは述べています。

そこで研究チームは、高脂肪食で肥満にしたマウスにチアシード油を3段階の量で与え、肥満の程度、血液の状態、血中の脂質、肝臓と腎臓の状態がどのように変わるかを調べました。

どのように調べたか

実験には雄のマウス48匹を用い、期間は15週間でした。研究チームは、バングラデシュで登録されたチアの品種の種子から溶媒を使って油を抽出し、餌に混ぜて与えました。

最初の5週間は、マウスを三つに分けました。通常の餌を与える群、バターを15%加えた高脂肪食で肥満にする群、そして通常の餌に最も多い量のチアシード油を加え、肥満していないマウスへの悪影響がないかを確かめる群です。続く10週間は、肥満にしたマウスを4群に分けました。高脂肪食だけを続ける群と、高脂肪食に加えてチアシード油を体重1キログラムあたり1日200ミリグラム、400ミリグラム、600ミリグラム与える群です。

研究チームは体重と餌の量を記録し、実験の終わりに内臓脂肪や臓器の重さを量りました。さらに、血液中の赤血球・白血球・血小板などの数、コレステロールや中性脂肪、肝臓や腎臓の働きの目安となる値を測りました。肝臓と腎臓の組織は顕微鏡で観察し、どの群か分からない状態で傷み具合を点数化しました。

主な結果

高脂肪食だけを続けたマウスは、通常の餌のマウスより大きく体重が増え、肥満の状態になりました。チアシード油を与えた群では、高脂肪食だけの群に比べて治療期間中の体重増加が抑えられました。抑えられた割合は、600ミリグラム群で13.31%、400ミリグラム群で9.35%、200ミリグラム群で5.39%と、量が多いほど大きくなりました。1日に食べた餌の量には群による差はありませんでした。内臓脂肪の指標も量に応じて下がり、600ミリグラム群では高脂肪食だけの群より50.31%低い値でした。

血液検査では、高脂肪食によって赤血球、ヘモグロビン、血小板、リンパ球などが減り、白血球や好中球、赤血球の大きさのばらつきを示す値などが増えていました。チアシード油を与えた群では、これらの変化が改善の方向に向かったと報告されています。血中の脂質については、総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロールが下がり、HDLコレステロールが上がりました。

肝臓では、高脂肪食によって脂肪がたまる変化や細胞の傷みがみられ、肝臓の状態の目安となる血中の酵素の値なども上がっていました。チアシード油を与えた群ではこれらの値が下がり、600ミリグラム群で最も効果がはっきりしていました。腎臓でも、腎臓の働きの目安となるクレアチニンや尿素窒素の値が下がりました。組織の観察でも、肝臓・腎臓とも傷みが軽くなっていました。ただし、量の違いによる差は、統計的に一貫して確認されたわけではありません。腎臓の組織については、低い量や中間の量では保護が部分的にとどまったと著者らは述べています。

肥満していないマウスに600ミリグラムを与えた群では、血液の値に通常の餌の群との違いはみられませんでした。肝臓や腎臓の組織も通常の群とよく似ていました。

この研究が示すこと

この研究は、高脂肪食を与えたマウスにおいて、チアシード油が体重増加や内臓脂肪の蓄積を量に応じて抑えたことを報告しています。あわせて、血液、脂質、肝臓、腎臓にみられた変化も改善の方向に向かいました。著者らは、この実験条件では1日400ミリグラムと600ミリグラムが安全で効果的な量だったと結論づけています。

一方で、抽出した油の脂肪酸の組成やα-リノレン酸の含有量は測定されていません。そのため、どの成分が作用したのかを直接結びつけるには慎重さが必要だと著者らは述べています。抗酸化作用や脂肪の合成への影響といった仕組みも、可能性として論じられている段階です。これはマウスでの結果であり、チアシード油の量と体への影響の関係を、血液や肝臓・腎臓まで含めて調べた一つの手がかりといえます。

原著論文の著者・所属:Sabbya Sachi(Department of Pharmacology Bangladesh Agricultural University Mymensingh Bangladesh)、Mst. Prianka Jahan(Department of Fisheries Technology Bangladesh Agricultural University Mymensingh Bangladesh)、Sree Alok Kumar(Department of Pharmacology Bangladesh Agricultural University Mymensingh Bangladesh)、Mahmudul Hasan Sikder(Department of Pharmacology Bangladesh Agricultural University Mymensingh Bangladesh)、Md. Zahorul Islam(Department of Pharmacology Bangladesh Agricultural University Mymensingh Bangladesh)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sabbya Sachi, Mst. Prianka Jahan, Sree Alok Kumar, et al. Dose‐Dependent Anti‐Obesity and Protective Effects of Chia ( Salvia hispanica L.) Seed Oil Against Hematological and Hepatorenal Dysfunction in High‐Fat Diet–Fed Mice. Food Science & Nutrition 2026-07-28. DOI: 10.1002/fsn3.72161. 原著ライセンス:CC BY.