著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。
掲載誌:Molecules
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
野菜を乾燥させたスナックやバーは、栄養成分を凝縮した手軽な食品として関心を集めています。ケールはビタミンCやカロテノイド、ポリフェノール類、食物繊維などを含み、こうした乾燥食品の原料として注目されています。一方で乾燥は保存性を高める反面、加熱や酸化によって色や成分が損なわれることがあります。
そこで、温風、赤外線、超音波といった異なる仕組みを組み合わせ、効率よく水分を除きながら品質を保とうとする「ハイブリッド乾燥」が研究されています。著者らによると、これらを組み合わせてケールを乾燥した研究や、それを使ったスナックバーの品質を調べた研究はまだ限られていました。
研究チームは、ケールの葉に対する下処理(湯通しに当たるブランチング)と乾燥方法の違いが、葉の性質や成分にどう影響するかを調べました。さらに、ケールを生のまま加えるか乾燥させてから加えるかによって、ケール入りバーの栄養価や性質、食味がどう変わるかも検討しました。研究チームは、ハイブリッド乾燥がフリーズドライ(凍結乾燥)に近い程度にケールの栄養面の特性を保つと予想していました。
何をどのように調べたか
ケールの葉は、そのまま使うものと、沸騰水の蒸気で60秒加熱するブランチングを施したものに分けられました。乾燥方法は3種類です。60℃の温風で約3.5時間乾かす対流乾燥、温風に赤外線加熱と超音波を組み合わせたハイブリッド乾燥(所要約1時間)、そして零下40℃で24時間凍結した後に減圧下で24時間乾燥させるフリーズドライです。
バーは、ナツメヤシの実(デーツ)、ココナッツ粉、ヘンププロテイン、亜麻仁にケールと水を加えて作られました。生のケールを20%加えたものと、乾燥ケールを10%加えたものの2通りで、乾物の量がそろうよう水の量が調整されています。成形したバー(1本約40g)も同じ3種類の方法で乾燥されました。
測定項目は、乾物量、微生物の増えやすさの目安となる水分活性、緑の色素であるクロロフィルと黄橙色の色素であるカロテノイドの量、ポリフェノール量、試薬との反応で測る抗酸化活性、そしてバーの栄養成分です。加えて、5段階評価による官能評価(見た目、食感、味などの評価)も行われました。
主な結果
乾物量には乾燥方法による有意な差はみられませんでした。一方、水分活性は乾燥方法で異なりました。乾燥したケールの葉はいずれも、微生物が増殖できない目安とされる0.6を下回り、フリーズドライで最も低く(0.2未満)、ハイブリッド乾燥で最も高い値(最大0.55)でした。バーはフリーズドライのもので0.58〜0.62、それ以外は0.71〜0.75でした。
色素については、ブランチングしたケールをハイブリッド乾燥したものがクロロフィルとカロテノイドを最もよく保ちました。その量は原料と同程度か、それ以上でした。フリーズドライの葉では、予想に反して両色素が低い値となりました。論文によると、ブランチング後にハイブリッド乾燥したケールは、フリーズドライの試料と比べてクロロフィルが約66%、カロテノイドが約25%多くなりました。ポリフェノール量は同程度で、抗酸化活性は約19%低い結果でした。
乾燥したケールの葉では、ポリフェノール量と抗酸化活性はフリーズドライで最も高く、対流乾燥で最も低くなりました。乾燥ケールの抗酸化活性は、乾燥方法にかかわらず生のケールの1.4〜2.2倍でした。バーでは、色素やポリフェノール量、抗酸化活性がケールの葉よりかなり低い値でした。著者らは、この違いはバー全体に占めるケールの割合が低いことに最も関連していると考えられる、と推定しています。
色素の結果の違いについて、著者らは次のような説明を示しています。フリーズドライは時間が長く、低温のためブランチング後に残った酵素が働いた可能性があります。これに対しハイブリッド乾燥は短時間で済み、色素が劣化しやすい条件にさらされる時間が短かったと考えられます。ただし、これらの仕組みは今回直接調べたものではなく、あり得る説明として位置づけられています。
乾燥ブランチングケールを10%含むバーの分析では、100gあたりのエネルギーが325〜348kcal、食物繊維が27.0〜27.9%(主に水に溶けない不溶性繊維)、たんぱく質が13.4〜15.2%、脂質が8.9〜9.6%でした。砂糖や油脂は添加されておらず、炭水化物は主にデーツ、脂質は亜麻仁、たんぱく質はヘンププロテインに由来します。食物繊維量はEUの「高食物繊維」表示の基準を4倍以上上回りました。著者らの計算では、1本40gで約10.9gの食物繊維がとれ、これは欧州食品安全機関(EFSA)が成人に示す目安量の約44%に当たります。
官能評価では、ケールとバーのいずれもフリーズドライの試料が最も高く評価されました。ハイブリッド乾燥の試料はおおむね中間で、多くの項目でフリーズドライに近い評価でした。ケールの葉ではブランチングによってすべての評価項目の点数が有意に上がりました。一方、バーに加えるケールが生か乾燥かは、官能評価に有意な影響を与えませんでした。
研究が示すこと
今回の結果では、総合的な品質はフリーズドライが最も優れていました。一方、ブランチングと組み合わせたハイブリッド乾燥は、はるかに短い乾燥時間で色素を最もよく保ち、ポリフェノール量もフリーズドライと同程度でした。著者らはこれを、野菜スナックや付加価値の高い食品素材づくりにハイブリッド乾燥が使える可能性を示すものとしています。
また、ケール、デーツ、ココナッツ粉、亜麻仁、ヘンププロテインといった天然素材だけで作ったバーは、食物繊維が非常に多く、たんぱく質も比較的多い植物性スナックになることが示されました。
原著論文の著者・所属:Hanna Kowalska(Department of Food Engineering, Warsaw University of Life Sciences, 159c Nowoursynowska St., 02-776 Warsaw, Poland)、Agnieszka Salamon(Department of Grain Processing and Bakery, Institute of Agricultural and Food Biotechnology—State Research Institute, Rakowiecka 36 Street, 02-532 Warsaw, Poland)、Jadwiga Wolska-Wilk(Department of Food Engineering, Warsaw University of Life Sciences, 159c Nowoursynowska St., 02-776 Warsaw, Poland)、Małgorzata Chobot(Department of Food Engineering, Warsaw University of Life Sciences, 159c Nowoursynowska St., 02-776 Warsaw, Poland)、Mariola Kozłowska(Department of Chemistry, Warsaw University of Life Sciences, 159c Nowoursynowska St., 02-776 Warsaw, Poland)、Klaudia Wieczorek(Department of Food Engineering, Warsaw University of Life Sciences, 159c Nowoursynowska St., 02-776 Warsaw, Poland)、Agata Marzec(Department of Food Engineering, Warsaw University of Life Sciences, 159c Nowoursynowska St., 02-776 Warsaw, Poland)、Jolanta Kowalska(Department of Food Engineering, Warsaw University of Life Sciences, 159c Nowoursynowska St., 02-776 Warsaw, Poland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hanna Kowalska, Agnieszka Salamon, Jadwiga Wolska-Wilk, et al. The Effect of Hybrid Convective–Infrared–Ultrasonic Drying on Selected Properties of Kale and Nutritional Value of Kale Bars. Molecules 2026-07-31. DOI: 10.3390/molecules31152683. 原著ライセンス:CC BY.