この研究は、韓国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:LWT

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究のねらい

この論文の研究チームは、植物性の脂肪であるコンボバターを原料にして、「セチルミリストレイン酸(CMO)」を多く含む「セチル化脂肪酸(CFA)」を酵素の働きでつくる方法を開発しました。セチル化脂肪酸とは、脂肪酸にセチルアルコールという長い鎖を持つアルコールが結合した、エステルと呼ばれる種類の物質です。

著者らはさらに、できたエステルを「オレオゲル」に組み込めるかどうかも調べました。オレオゲルとは、液体の油に少量の構造をつくる成分(ゲル化剤)を加え、固形に近い状態に保ったものです。抄録では、このオレオゲルを食品向けの構造化脂質の土台として使えるかどうかが検討されています。

原料から目的のエステルをつくる工程

研究チームはまず、コンボバターに含まれるミリストレイン酸(MO)という脂肪酸の割合を高めました。リパーゼと呼ばれる脂肪を分解する酵素(Lipozyme TL IM)でコンボバターを分解し、その後マイナス50℃で成分を分け取りました。抄録によると、この工程で脂肪酸全体に占めるミリストレイン酸の割合は16.6%から58.6%に上がりました。

次に、別の酵素(Novozym 435)を使い、溶媒を使わない条件でエステルをつくる反応を行いました。その結果、純度の高いセチル化脂肪酸が得られ、エステル全体のうち59.8%をセチルミリストレイン酸が占めたと報告されています。核磁気共鳴(NMR)、赤外分光、質量分析などの分析を組み合わせて、エステルの結合ができていることと、生成物の分子の組成を確認したとしています。

オレオゲルへの組み込みと保存結果

ゲルの構造を安定させる成分として、著者らは乾燥させたグリセリンモノパルミテート(dGMP)を評価しました。これはグリセリンにパルミチン酸という脂肪酸が一つ結合した物質です。研究チームはdGMPとグリセリンモノオレエートを混ぜた土台にセチル化脂肪酸を加え、オレオゲルをつくりました。

抄録によると、得られたオレオゲルは室温で形を保ち、27.4〜53.6℃の範囲で融解に伴う変化を示しました。この温度による状態の変化は、示差走査熱量測定という、加熱や冷却に伴う熱の出入りを測る方法で調べられました。選ばれた「dGMP10–CFA10」という配合のオレオゲルは、111日間の保存中も構造を保ったと報告されています。

研究が示すこと

この研究は、コンボバターから酵素を使ってセチルミリストレイン酸の多いエステルをつくり、それを室温で形を保つオレオゲルにまとめられることを示しました。著者らは、長期保存で構造が保たれた結果から、このオレオゲルが食品に使う構造化脂質の土台として適している可能性があると述べています。

著者:Min-Jeong Kim(Department of Food Science & Technology, College of Agriculture and Life Sciences, Chungnam National University, Republic of Korea)、Hae-Se Lee(Department of Food Science & Technology, College of Agriculture and Life Sciences, Chungnam National University, Republic of Korea)、Ki-Teak Lee(Department of Food Science & Technology, College of Agriculture and Life Sciences, Chungnam National University, Republic of Korea)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Min-Jeong Kim, Hae-Se Lee, Ki-Teak Lee. Enzymatic production of cetyl myristoleate-rich esters and their formulation in dGMP-based oleogels. LWT 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.lwt.2026.120073. 原著ライセンス:CC BY.