この研究は、中国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖と脂肪酸を結びつけた乳化剤の一種)のうち、水になじみやすい性質を持つ「親水性」のタイプは、ホイップクリームに広く使われています。しかし研究チームによれば、その分子の構造と、油と水の境目(界面)でのふるまい、そして実際の泡立ちの良し悪しがどう結びついているのかは、これまでよく分かっていませんでした。
そこで著者らは、S1170、P1570、S1570という三種類の親水性ショ糖脂肪酸エステルを取り上げ、カゼインナトリウム(牛乳由来のたんぱく質を原料とする乳化剤)で安定化させたクリームの系で、この関係を調べたと報告しています。
調べた方法と界面で起きていたこと
研究では、油と水の境目にどれだけ物質が吸着するか、またその界面がどれくらい弾力を持つか(粘弾性)を測定しました。その結果、ショ糖脂肪酸エステルの濃度が、吸着のしかたと界面の粘弾性に強く影響していたとされています。
濃度が低い場合には、たんぱく質と乳化剤が混ざり合った、より弾力のある界面ができていることと整合する挙動が観察されました。一方、加えすぎた場合には、乳化剤がたんぱく質と吸着場所を奪い合う「競争吸着」が起き、界面を覆うたんぱく質が減って、界面の粘弾性が弱まることと関連していたと報告されています。
さらに、分子構造の違いも結果を分けていました。ポリエステル(脂肪酸が複数結合した成分)の割合が高いS1170は、界面での相互作用がより強いことと整合するふるまいを示し、P1570では界面の弾性を表す指標(弾性率)の低下がより大きかったとされています。
泡立ちへの影響
こうした界面の違いは、実際にクリームを泡立てたときのふるまいの変化と結びついていました。ショ糖脂肪酸エステルを0.10重量%加えた条件では、脂肪球どうしが部分的にくっついていく「部分合一」の進行が遅くなり、最もよい状態に泡立つまでの時間が延び、オーバーラン(泡立てによって空気が入り、かさが増える割合)が増加したと報告されています。
これに対して0.50重量%では、泡立ての早い段階で合一が加速し、クリームから液体がしみ出る量(セラムロス)が増えました。この傾向はP1570で特に顕著だったとされています。
この報告が示すこと
著者らは、ショ糖脂肪酸エステルは多ければよいというものではなく、種類と添加量の選び方によって効果が逆向きにもなりうることを示しています。界面の安定性、脂肪の部分合一、そしてホイップクリームの品質という三者のバランスをとるうえで、適切な種類と量を選ぶことが欠かせない、というのがこの研究から導かれた見方です。
著者:Di Zeng(School of Food Science and Engineering, Guangdong Ocean University, Yangjiang Campus, Yangjiang 529500, China)、Cuiling Li(School of Food Science and Engineering, Guangdong Ocean University, Yangjiang Campus, Yangjiang 529500, China)、Lihua Huang(School of Food Science and Bioengineering, Changsha University of Science and Technology, Changsha 410114, China)、Junwei Wang(School of Food Science and Engineering, Guangdong Ocean University, Yangjiang Campus, Yangjiang 529500, China)、Yongjian Cai(School of Food Science and Bioengineering, Changsha University of Science and Technology, Changsha 410114, China)、Qiangzhong Zhao(School of Food Science and Engineering, South China University of Technology, Guangzhou 510641, China)、Mouming Zhao(School of Food Science and Engineering, South China University of Technology, Guangzhou 510641, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Di Zeng, Cuiling Li, Lihua Huang, et al. Whipped Cream Regulation by Hydrophilic Sucrose Esters: Interfacial Behavior and Whipping Properties. Foods 2026-08-26. DOI: 10.3390/foods15172995. 原著ライセンス:CC BY.