この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Magazine Mitra Investor (edisi elektronik)
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
傷みやすい熱帯果実をどう保つか
ランブータン(Nephelium lappaceum L.)は、インドネシアをはじめ東南アジアで広く栽培される熱帯果実で、主に生鮮のまま流通します。しかし収穫後の劣化が非常に速く、論文は先行研究を引きながら、常温では収穫後わずか1〜2日ほどしか商品価値を保てないと述べています。ランブータンは「非クライマクテリック果実」、つまりエチレンによる呼吸の急上昇を伴って追熟するタイプではないため、品質低下の主因は果皮の急速な水分喪失と、酸化による褐変(茶色く変色すること)だと説明されています。果皮が黒ずむと見た目の価値が大きく損なわれ、供給網全体で経済的損失につながります。
著者らによれば、ランブータンの鮮度保持にはこれまで二酸化硫黄くん蒸、包装法の工夫、紫外線照射、ワックス被覆などが検討されてきました。一方、LED(発光ダイオード)照射は残留物を生じず省エネルギーで、光の波長を選べる技術として他の園芸作物では効果が報告されているものの、ランブータンでは未検討だったと位置づけています。本研究の目的は、白色LEDと緑色LEDの照射がランブータンの貯蔵中の品質にどう影響するかを評価することでした。
8日間の貯蔵実験で調べたこと
研究チームは、西ジャワ州スバン県の農園で収穫された「Lebak Bulus」品種のランブータンを用い、傷や損傷がなく大きさと色のそろった果実を選びました。処理は三つで、LEDを当てない対照区(暗所保存)、波長525ナノメートルの緑色LED区、そして約400〜700ナノメートルの可視光全域にわたる白色LED区です。果実は容器箱に入れ、LEDは箱の内蓋に取り付けて果実表面から約20センチメートル離し、貯蔵期間中は1日24時間連続で照射しました。貯蔵条件は気温25±2℃、相対湿度85%で、期間は8日間です。実験は乱塊法(環境のばらつきを区画分けで抑える配置)で4反復行われました。
測定項目は、重量減少率、果皮の色(明るさを示すL*、赤みを示すa*、黄色みを示すb*の三つの値)、二酸化炭素の呼吸速度、可溶性固形分(TSS、主に糖の量の目安で°Brixで表す)、滴定酸度(TA、有機酸の量の目安)、そしてビタミンC含量です。重量や色、呼吸は果実を壊さずに繰り返し測り、TSS・TA・ビタミンCは0日目、4日目、8日目に果実を用いて分析しています。
白色LED区で示された主な結果
呼吸速度はどの処理でも貯蔵の進行とともに上昇しましたが、著者らは4日目以降に処理間の差が明確になったと報告しています。白色LED区は一貫して最も低い値を示し、4日目には37.04 mL CO₂ kg⁻¹ h⁻¹で、対照区(46.95)や緑色LED区(45.98)より有意に低い水準でした。呼吸は有機物を消費して二酸化炭素を出す代謝過程であるため、この結果は白色LED区で代謝活動がより抑えられていたことを示す、というのが論文の解釈です。
果皮の色では、明るさを示すL*が貯蔵後半にかけて全処理で低下しました。これは論文中で、ポリフェノールオキシダーゼなどの酵素によってフェノール類が酸化され、暗色の物質が生じる酵素的褐変と整合する変化として説明されています。赤みを示すa*については、6日目と8日目に明確な処理差が現れ、対照区が9.63と5.23まで下がったのに対し、白色LED区は19.77と15.92という高い値を保ちました。著者らは、白色LED処理がアントシアニン(赤い色素)の分解を和らげ、赤い色合いを保ったと述べています。緑色LEDが白色LEDより効果が弱かった理由としては、植物の光受容体が緑色の波長には反応しにくい点が挙げられています。
化学的な品質では、TSSは収穫時点でどの処理も約18 °Brixで、貯蔵中に低下したものの処理間に統計的な差は認められませんでした。一方、滴定酸度は4日目に白色LED区が0.47%で最も高く、対照区や緑色LED区を有意に上回りました。ビタミンC含量も4日目と8日目に明確な処理差が出て、白色LED区が最も高く(4日目に2.475 mg 100 g⁻¹)、対照区が最も低い値でした。重量減少については2日目に差が見られ、対照区の10.31%に対して白色LED区は5.22%、緑色LED区は7.78%でしたが、4日目以降は統計的に有意な差ではなくなったと報告されています。
なお著者らは、白色LEDの働きを説明する遺伝子発現などの分子レベルの仕組みは本研究では直接測定しておらず、先行研究に基づく推論にとどまると明記しています。また、ビタミンCの測定に用いたヨウ素滴定法は、果実中の他の還元性物質の影響で値が高めに出る可能性があることにも触れています。
この報告が示すこと
研究チームは結論として、白色LED処理が緑色LEDや無照射の対照よりも、貯蔵中の生理的・生化学的な劣化を遅らせてランブータンの収穫後品質を保つうえで有効だったとまとめています。呼吸の抑制、果皮の色の保持、酸度とビタミンCの維持という複数の指標が同じ方向を向いていた点が、老化(senescence)の進行が全体として遅れたという解釈の根拠になっています。
著者らは同時に、本研究が管理された実験室条件下で行われたものであり、光の強さや照射時間の最適化、経済性の検討などは今回の範囲外だと断っています。それでも、薬剤に頼らず光の質を選ぶことで果実の代謝を調節しうるという本研究の報告は、傷みやすい熱帯果実の扱い方を考えるうえでの一つの手がかりを示しています。
著者:Putri Nabila Sukma Al Yamani(INSTITUT PERTANIAN BOGOR (IPB))、Ketty Suketi(Institut Pertanian Bogor (IPB))、Abdullah Bin Arif(Badan Riset Inovasi Nasional (BRIN))
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Putri Nabila Sukma Al Yamani, Ketty Suketi, Abdullah Bin Arif Postharvest Quality of Rambutan Fruit (Nephelium lappaceum L.) under White and Green LED Treatments during Storage. Magazine Mitra Investor (edisi elektronik) 2026-08-31. DOI: 10.22146/veg.118239. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。