著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、ナイジェリア、南アフリカです。
掲載誌:Food Production Processing and Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
重度急性栄養不良(SAM)は、低・中所得国で子どもの病気や死亡の大きな原因となっています。その治療には、すぐに食べられる治療用栄養食品(RUTF)が使われています。RUTFはエネルギーが高く、常温で長く保存できるペースト状の食品で、入院せずに地域で治療できるようにした点が画期的でした。標準的なRUTFは、ピーナッツペースト、脱脂粉乳、砂糖、植物油からできています。
論文によると、従来のRUTFは治療効果が示されている一方で、課題もあります。たとえば多くのアフリカ諸国では粉乳を輸入に頼るため、製造費が上がり、地元の生産者が関わる余地も小さくなります。そこで研究チームは、ピーナッツも乳も使わず、地元で手に入る植物性原料だけでRUTFを作れるかを調べました。原料は大豆、アフリカ原産の豆であるバンバラマメ、穀物のソルガムです。さらに、ビタミン・ミネラルを補う配合の一部に、モリンガの葉の粉末を使いました。
著者らが確かめようとしたのは三つの点です。この植物性RUTFが国際的な栄養基準を満たすか、タンパク質の質が十分か、そして子どもの世話をする人に受け入れられるかです。
どのように調べたか
研究は南アフリカ・リンポポ州のベンダ大学で行われました。原料の配合比率は「線形計画法」で決めています。これは、栄養目標などの条件を満たす最適な組み合わせを数学的に求める手法です。研究チームは、まず各原料の水分、タンパク質、脂質などを実際に測定しました。その値を計算に入れて、候補となる配合を作りました。ビタミン・ミネラル補給の方法は三通り比べています。市販の配合剤(プレミックス)のみ、モリンガのみ、両者の組み合わせです。
できた試作品は、実際に成分を分析しました。そのうえで、試験管内での消化のされやすさ(タンパク質消化率)を調べました。また、PDCAASも求めています。PDCAASは、消化率と必須アミノ酸のバランスを合わせて、タンパク質の質を評価する指標です。色は測定機器で数値化しました。
受け入れやすさは、5歳未満の子どもがいる21〜45歳の母親・養育者25人に評価してもらいました。参加者は、どの試作品か分からないようにして試食しました。見た目、香り、味、食感、総合評価をそれぞれ9段階で採点し、平均5点(好きでも嫌いでもない)以上を受け入れ可能の目安としました。試食の後には同じ参加者でグループ討論を行い、RUTFについての知識や試作品の印象、購入の意思を聞き取りました。
主な結果
線形計画法では18通りの候補配合ができました。そのうち5つが、世界保健機関(WHO)が示すタンパク質、脂質、炭水化物の基準を満たしました。この5つは、計算上の予測値と実際の分析値の差も10%未満に収まっていました。
5つの配合のタンパク質消化率は71.03〜81.99%でした。PDCAASは60.02〜65.75%で、5つすべてが2〜5歳児向けとされる60%以上という目安を満たしたと報告されています。どの配合でも、最も不足しやすいアミノ酸はリシンでした。
色はモリンガの量で変わりました。モリンガを多く入れるほど色が暗く、緑がかりました。論文はその理由を、葉に多く含まれる葉緑素によるものとしています。
試食では、5つすべての平均点が受け入れ可能の目安である5点を上回りました。総合評価が最も高かったのは「RUTF 4」で、最も低かったのは「RUTF 5」でした。著者らは結論として、モリンガとビタミン・ミネラル配合剤を組み合わせた配合が最も高く評価されたとまとめています。
グループ討論では、味、香り、食感について好意的な声が多く聞かれました。ピーナッツバターのような身近なスプレッドに似ているという意見もありました。緑色の薄いものを好む声はありましたが、論文によると、参加者は見た目よりも健康への効果を重視する傾向があり、色は受け入れの大きな妨げにはなりませんでした。多くの参加者は、子どもに必要なら購入したいと答えました。ただ、価格や入手のしやすさを心配する声もあり、政府の補助を望む意見や、病院まで受け取りに行く負担を挙げる意見が出ました。また、RUTFが栄養不良の子どものためのものだとは知られていましたが、成分や対象年齢についての知識は限られていました。生後6か月未満の子どもにも与えられると考えている人もいました。
研究が示すこと
この研究は、地元で手に入る豆類と穀物を線形計画法で組み合わせれば、ピーナッツも乳も使わずに、国際的な栄養基準とタンパク質の質の目安を満たすRUTFを作れることを示しました。母親たちからの評価もおおむね良好でした。地元原料による治療用食品の可能性を示す結果だといえます。
一方で、著者らは限界も挙げています。今回評価したのは養育者で、実際に食べる子どもではありません。また、重度急性栄養不良と診断された子どもの養育者も参加していません。そのため、結果は養育者の受け止め方を示すもので、治療の場での子どもの好みや食べ方をそのまま表すものではありません。さらに論文は、大豆にもアレルギーの可能性があると述べています。
原著論文の著者・所属:Oluwaseun F. Akinmoladun(Department of Health Science, University of the People, Pasadena, CA, 91101, USA; Department of Human Nutrition and Dietetics, Faculty of Allied Health Sciences, University of Medical Science, Ondo, Nigeria; Department of Nutrition, Faculty of Health Sciences, University of Venda, Private Bag X5050, Thohoyandou, 0950, South Africa)、Victoria A. Jideani(Department of Food Technology, Cape Peninsula University of Technology, P.O. Box 652, Cape Town, 8000, South Africa)、Oluwaseun P. Bamidele(Department of Food Science and Technology, University of Venda, Private Bag X5050, Thohoyandou, 09590, South Africa)、Cebisa N. Nesamvuni(Department of Nutrition, Faculty of Health Sciences, University of Venda, Private Bag X5050, Thohoyandou, 0950, South Africa)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Oluwaseun F. Akinmoladun, Victoria A. Jideani, Oluwaseun P. Bamidele, et al. Optimized plant-based peanut- and milk-free RUTF meets protein quality standards and demonstrates favourable maternal acceptability. Food Production Processing and Nutrition 2026-08-02. DOI: 10.1186/s43014-026-00401-z. 原著ライセンス:CC BY.