掲載誌:Functional Foods in Health and Disease

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:タンパク質は「量」か「由来」か

年齢を重ねると、骨格筋の量や力は少しずつ低下していきます。加齢に伴って筋肉量と筋力が落ちる状態は「サルコペニア」と呼ばれ、心身の活力が弱った「フレイル」につながることがあります。筋肉を保つには食事からタンパク質を十分にとることが大切とされています。ただし、肉や魚、乳製品などの動物性タンパク質と、豆類やナッツなどの植物性タンパク質のどちらが望ましいかについては、研究によって見方が分かれてきました。

論文によると、動物性タンパク質は一般に、筋肉のタンパク質合成で重要な働きをするアミノ酸「ロイシン」を多く含みます。そのため、植物性タンパク質は筋肉づくりへの刺激が弱いのではないかという懸念があります。一方で植物性の食事は食物繊維やポリフェノールが多い傾向があります。サルコペニアの一因とされる慢性的な炎症を抑えることで、間接的に筋肉に良い影響を与える可能性も考えられてきました。

研究チームは、こうした相反する見方を整理しようとしました。そのために、中高年を対象に、植物性と動物性のタンパク質摂取が、筋肉量、筋力、身体機能、サルコペニア、フレイル、骨密度とどう関係するかを調べた既存研究を体系的に集めて検討しました。

どのように調べたか

研究チームは、医学論文のデータベースであるPubMedとScienceDirectを2026年6月までの範囲で検索しました。さらにGoogle Scholarでの追加検索や、関連論文の引用・被引用をたどる方法で文献を補いました。このように、決められた手順で関連研究を網羅的に集めて評価する方法を、システマティックレビューといいます。

最終的に31件の研究が対象となりました。主な内訳は次のとおりです。ある時点の食事と体の状態を調べた横断研究が13件、集団を長期間追跡した前向きコホート研究が9件、参加者をくじ引きのように割り振って比べるランダム化比較試験が5件でした。研究ごとに対象者やタンパク質の定義、測った項目が大きく異なっていました。そのため、数値をまとめて一つの効果量を出す統合解析(メタアナリシス)は行わず、結果を項目ごとに文章で整理しています。あわせて、各研究の偏りの危険性や、結果ごとの確からしさの程度も評価しました。

主な結果:一様な「勝者」はいなかった

著者らは、研究結果にはばらつきが大きかったと報告しています。いくつかの大規模な研究では、由来にかかわらずタンパク質の総摂取量が多いことが、筋肉量の維持やフレイルのリスクの低さと最もよく関連していました。

一方で、植物性タンパク質に有利な結果を示す研究もありました。米国の看護師を対象とした大規模研究(約8万6千人)では、女性を植物性タンパク質の摂取量で5つの群に分けたとき、摂取量が最も多い群は最も少ない群と比べて、フレイルになるリスクが14%低いという関連が報告されています。反対に、動物性タンパク質の摂取量が最も多い群では、リスクが7%高いという関連でした。香港のコホート研究では、植物性タンパク質の多さと筋肉量の減少の緩やかさとの関連が、炎症の指標が高い人で最も強かったとされています。

動物性タンパク質については、骨密度を調べた2件の観察研究が、いずれも動物性タンパク質に有利な結果を示していました。欧州4か国の研究では、動物性タンパク質の摂取量が多いほど全身や背骨の骨密度が高いという関連が見られました。中国の横断研究では、動物性タンパク質と骨密度の関係は直線的ではありませんでした。摂取量がある程度を超えると、関連が頭打ちになったり逆転したりする形だったと報告されており、その一部は腸内細菌の違いで説明されるとしています。どちらの研究でも、植物性タンパク質の多さは骨密度の低さと関連していました。また、オランダの研究では、動物性タンパク質が多いほどサルコペニアのリスクが低い一方で、体重の増加も大きいという関連が見られています。

介入試験では、10日間のクロスオーバー試験の結果が報告されています。菜食(ヴィーガン)の食事と動物性食品を含む食事とのあいだで、筋肉のタンパク質合成に差はありませんでした。また、エンドウ豆由来のタンパク質と乳由来のホエイタンパク質は、推奨量を上回る量でどちらも合成を高めました。植物由来のサプリメントを用いた2件の試験では、偽薬と比べて筋肉量の指標や握力の改善が見られています。

ただし著者らは、いくつかの限界を指摘しています。対象研究の多くは自己申告の食事調査に基づく観察研究であり、関連があっても因果関係は確定できません。また、完了した試験はいずれも短期間で、筋肉量やサルコペニアの長期的な変化までは見ていません。結果の確からしさは、筋肉量とサルコペニア・フレイルでは中程度、骨密度では低〜中程度、長期的な臨床上の効果については低いと評価されています。

この研究が示すこと

このレビューは、植物性と動物性のどちらか一方が中高年の筋肉に一律に有利だという結論は、現時点の証拠からは支持されないことを示しています。著者らは、まずはタンパク質を総量として十分にとることが最も一貫した要素だと整理しています。そのうえで、由来の違いがどう影響するかは、炎症の状態や、筋肉・骨など何に注目するかによって変わりうるとしています。「肉か豆か」という二択ではなく、量と個人の状態を踏まえて考える必要があることを伝える研究といえます。

著者:Wasathorn Maksuwan、Kamon Chaiyasit、Varit Srisukthaveerat、Teerachat Saeheng、Kesara Na-Bangchang

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Wasathorn Maksuwan, Kamon Chaiyasit, Varit Srisukthaveerat, et al. Plant versus animal protein intake and muscle mass, strength, and physical function in middle-aged and older adults: A systematic review. Functional Foods in Health and Disease 2026-10-06. DOI: 10.31989/ffhd.v16i10.2135. 原著ライセンス:CC BY.