この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Water Biology and Security

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を目的とした研究か

養殖業の持続可能性は、魚に与える飼料の配合によって大きく左右されます。一方で、その飼料をつくる際の「押出加工(エクストルージョン)」という製造工程が環境や経済にどう影響するかは、これまで十分に調べられてきませんでした。押出加工とは、原料を加熱しながら押し出して粒状の飼料に成形する加工方法で、その際の温度設定が飼料の性質を左右します。

研究チームは、植物性タンパク質を主原料とするソウギョ(草魚)用飼料を対象に、押出加工の温度条件を変えたときの環境面・経済面への影響を評価することを目的としました。

どのように調べたか

研究チームは、二つの押出温度条件を比較しました。105/120/120 °C の条件をシナリオS1、105/120/140 °C の条件をシナリオS2としています。これは押出機内の区間ごとの設定温度で、S2は最終段階の温度がより高く設定されています。

評価は二つの実験で行われました。一つは長期の飼育試験(EP1)で、魚の成長や栄養素の利用状況を調べています。もう一つは短期の水質モニタリング実験(EP2)で、飼育水の状態と水中の細菌群集の変化を追跡しています。

報告された主な結果

長期飼育試験(EP1)では、S2の飼料を与えた場合に増重量、効率、そして炭素・窒素・リン・硫黄の魚体全体での保持率が有意に高まったと報告されています。あわせて、固形の栄養素損失と溶存炭素の排出も減少しました。

環境負荷の指標としては、魚1トンを生産する際のカーボンフットプリント(生産に伴って排出される温室効果ガスを二酸化炭素量に換算した値)がS2で17.3%減少し、これは0.46トンCO2相当分にあたると報告されています。研究チームは、この条件を中国全体に適用した場合、年間の温室効果ガス排出量が1.24〜6.18×10⁶トンCO2相当分減らせる可能性があると試算しています。

経済面では、増重量1kgあたりおよびタンパク質生産1kgあたりの飼料コストがS2で有意に低く、それぞれ16.7%、15.5%の削減だったとされています。

水質モニタリング実験(EP2)では、水質の各項目が時間とともに異なる動きを示し、S2ではいくつかの時点でpHと全炭素(TC)が低く、全リン(TP)は高くなりました。水中の細菌群集も時間とともに大きく移り変わり、Flavobacterium、Curvibacter、Aeromonas が優占する属として見られ、これらは二つのシナリオの間でpH、全有機炭素(TOC)、アンモニウム態窒素(NH₄⁺-N)との相関の仕方が異なっていたと報告されています。なお、これらは関連として示されたものであり、因果関係を示したものではありません。

この研究が示すこと

研究チームは、これらの結果から、押出温度の改善が、植物性タンパク質を用いた養殖飼料の系において、生産効率の向上とカーボンフットプリントおよび環境負荷の低減、そして魚の生産単位あたりの飼料コストの引き下げを同時に達成しうる有効な方策であると結論づけています。

飼料の「中身」だけでなく「つくり方」の設定にも、環境面と経済面の両方に関わる余地があることを示した報告と言えます。

著者:Zhimin Zhang(State Key Laboratory of Breeding Biotechnology and Sustainable Aquaculture, Institute of Hydrobiology, Chinese Academy of Sciences, Wuhan, 430072, China)、Qiushi Yang(Guangzhou Nutriera Biotechnology Co., Ltd., Guangzhou, 511483, China)、Jiankun Gao(College of Fisheries, Huazhong Agricultural University, Wuhan, 430070, China)、Haokun Liu(State Key Laboratory of Breeding Biotechnology and Sustainable Aquaculture, Institute of Hydrobiology, Chinese Academy of Sciences, Wuhan, 430072, China)、Junyan Jin(State Key Laboratory of Breeding Biotechnology and Sustainable Aquaculture, Institute of Hydrobiology, Chinese Academy of Sciences, Wuhan, 430072, China)、Dong Han(Hubei Engineering Research Center for Aquatic Animal Nutrition and Feed, Wuhan, 430072, China)、Yong Yang(Guangzhou Nutriera Biotechnology Co., Ltd., Guangzhou, 511483, China)、Shouqi Xie(Hubei Engineering Research Center for Aquatic Animal Nutrition and Feed, Wuhan, 430072, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zhimin Zhang, Qiushi Yang, Jiankun Gao, et al. Improved extrusion temperature of plant protein-based grass carp aquafeeds for environmental and economic gains. Water Biology and Security 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.watbs.2026.100721. 原著ライセンス:CC BY.