著者の所属・活動拠点の国は、カナダ、ドイツです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
グルテンは小麦などに含まれるたんぱく質です。グルテンに体が反応して不調が起こる状態をまとめて「グルテン関連疾患」と呼びます。代表的なものは二つあります。一つは、遺伝的な素因を背景にした自己免疫疾患であるセリアック病です。もう一つは非セリアック・グルテン過敏症で、免疫を介さずにグルテンへの生体反応が起こるとされます。どちらの場合も、グルテンを含まない食事(グルテンフリー食)を続けることが求められます。
論文によると、カナダではグルテンフリー製品が通常の食品より大幅に高価です。また、脂肪・砂糖・ナトリウムが多いことも少なくありません。さらに、グルテンフリー食では鉄や食物繊維などの栄養素が不足しやすいと指摘されています。そこで研究チームが注目したのが豆です。豆はもともとグルテンを含まず、たんぱく質や食物繊維が豊富です。ただし、豆を食べるうえでの障壁を調べたこれまでの研究は主に一般の人々が対象でした。グルテン関連疾患のある人については、十分に分かっていませんでした。
そこでこの研究は、セリアック病または非セリアック・グルテン過敏症のある成人について、豆に関する知識と食べる頻度を探ることを目的としています。
どのように調べたか
研究チームは、セリアック病の人々を支援するカナダの全国団体と協力して参加者を募りました。調査は匿名のオンラインアンケートで行いました。ある一時点での状態を調べる「横断研究」と呼ばれる方法です。対象は18歳以上で英語に堪能な人のうち、セリアック病または非セリアック・グルテン過敏症の診断を受けたと自己申告した人です。
アンケートは、専門家などの意見を受けて改訂を重ねて作られました。質問の内容は、診断と健康状態、食習慣と豆を食べる頻度、豆に関する知識への自信、豆を食べる動機と障壁、回答者の背景情報などです。
分析対象は最後まで回答した528人で、内訳はセリアック病490人、非セリアック・グルテン過敏症38人です。参加者の約9割は女性でした。
豆を食べる頻度は、乾燥豆と缶詰の豆のそれぞれについて「食べない」から「毎日」までの6段階で点数化しました。二つの点数を合計したものを、豆を食べる頻度の総合点として分析しています。そのうえで、どのような要因がこの総合点と関連しているかを統計的に調べました。
主な結果
何らかの症状を挙げた参加者のうち、最も多かった症状は疲労(72.2%)でした。診断時に何らかの栄養素不足を挙げた参加者では、69.0%が鉄欠乏性貧血を報告しました。また、グルテンフリー食が日々の生活の重要な一部だと強く同意した人は96.4%に上りました。
野菜や果物、全粒穀物、豆類、ナッツなどの植物性食品を毎日食べている人は88.6%いました。一方、豆を毎日食べている人はごくわずかで、乾燥豆で0.9%、缶詰の豆で0.4%でした。総合点で分けると、頻度が低い人が39.8%、中程度の人が47.9%、高い人が12.3%でした。
豆を食べる動機として最も多く挙がったのは栄養価(74.9%)でした。菜食の選択肢になること、価格、味や食感がこれに続きます。一方、最も多い障壁は浸水や調理に時間がかかること(40.2%)でした。ほかに、食べる習慣がないこと、胃腸の不快感、調理法を知らないことも挙げられました。グルテンが混入する可能性を心配する声も寄せられました。
豆の知識への自信は、全体として高い結果でした。特に「豆はもともとグルテンを含まない」という知識については、多くの人が自信を示しました。最も自信が低かったのは豆の調理法です。調理法をもっと知れば豆をもっと食べるようになると考える人は68.9%でした。豆についてもっと学びたいと答えた人は63.0%で、知りたい話題としてはレシピ、調理法、胃腸の不快感が多く挙がりました。
統計分析では、挙げた動機の数が多い人ほど総合点が高く、障壁の数が多い人ほど総合点が低いという関連がみられました。また、豆について学びたいという関心が高い人や、調理法の知識に自信がある人ほど、豆を食べる頻度が高い傾向がありました。
一方で、動機や障壁を個々の項目ごとにみた関連は、多くの比較を同時に行うことを考慮した補正を加えると、統計的に有意ではなくなりました。このため著者らは、これを探索的な結果として扱っています。また論文は、横断研究であるため、これらの結果は関連を示すものであり、原因と結果の関係を示すものではないと述べています。
この研究が示すこと
著者らは次のように結論づけています。セリアック病や非セリアック・グルテン過敏症のある人々は豆への関心が高く、豆の知識にも強い自信を持っています。それにもかかわらず、実際に豆を食べる頻度は比較的低いままです。
研究チームは、調理法やレシピ、胃腸での受け入れやすさに焦点を当てた情報提供が、豆を食べる頻度を高める助けになるかもしれないと述べています。この研究は、豆への関心や知識への自信があっても、それが日々の食事にそのまま結びつくわけではないことを示しています。
原著論文の著者・所属:Alicia Stahl(Department of Family Relations and Applied Nutrition, University of Guelph, Guelph, ON N1G 2W1, Canada)、Alyssa Chapleau(Department of Family Relations and Applied Nutrition, University of Guelph, Guelph, ON N1G 2W1, Canada)、Sana Tasawar(Department of Human Health Sciences, University of Guelph, Guelph, ON N1G 2W1, Canada)、Safa Shahid(Department of Family Relations and Applied Nutrition, University of Guelph, Guelph, ON N1G 2W1, Canada)、Niels J. Maywald(Department of Nutritional Crop Physiology, University of Hohenheim, Fruwirthstraße 20, 70599 Stuttgart, Germany)、Nanette Stroebele-Benschop(Department of Applied Nutritional Psychology, University of Hohenheim, Fruwirthstraße 12, 70599 Stuttgart, Germany)、Iris Joye(Department of Food Science, University of Guelph, Guelph, ON N1G 2W1, Canada)、Dalia El Khoury(Department of Family Relations and Applied Nutrition, University of Guelph, Guelph, ON N1G 2W1, Canada)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alicia Stahl, Alyssa Chapleau, Sana Tasawar, et al. Exploring Knowledge and Consumption of Beans Among Adults with Gluten-Related Disorders—A Cross Sectional Study in Canada. Nutrients 2026-10-28. DOI: 10.3390/nu18213553. 原著ライセンス:CC BY.