著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:BMJ Open Diabetes Research & Care
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
糖尿病の治療では食事の管理が基本とされています。しかし、たんぱく質、炭水化物、糖類、食物繊維、脂質といった主要な栄養素や摂取エネルギーを、どの程度とると合併症や死亡のリスクが低いのかは、はっきりしていませんでした。これまでの研究の多くは一般の人を対象としたもので、結果も一致していませんでした。
糖尿病の合併症の一つである糖尿病性腎臓病(DKD)は、糖尿病の人の20〜40%にみられ、新たに透析を始める人の原因として最も多い病気です。研究チームは、糖尿病の人を対象に、これらの栄養素とエネルギーの摂取量が、糖尿病性腎臓病の有無および全死因死亡(原因を問わない死亡)とどのように関連するかを、同時に調べることを目的としました。
何を調べたか
著者らは、米国で全国を代表するように対象者を選んで行われている健康・栄養調査(NHANES)の2011〜2018年のデータを用いました。糖尿病があり、必要なデータがそろった成人3066人を分析対象としました。
食事の内容は、前日24時間に食べたり飲んだりしたものを聞き取る調査を2回行い、その平均から各栄養素とエネルギーの摂取量を計算しました。糖尿病性腎臓病は、腎臓のろ過機能の指標(推算糸球体ろ過量)が低い、または尿中にアルブミンというたんぱく質が一定以上出ている状態として定義しました。ただし、これは1回の測定に基づくもので、臨床診断のように状態が続いていることまでは確認していないと論文は説明しています。
死亡については、全米の死亡記録と照合して2019年末までの状況を追跡しました。追跡期間の中央値は48か月でした。分析では、年齢、性別、収入、体格指数(BMI)、血糖の指標、喫煙・飲酒、心臓病や高血圧の既往など、結果に影響しうる多くの要因を調整しました。
主な結果
対象者のうち約37.6%に糖尿病性腎臓病がみられ、追跡期間中に366人が亡くなりました。
他の要因を調整した後でも、たんぱく質と食物繊維の摂取量が多い人ほど、糖尿病性腎臓病がみられる確率が低いという関連が認められました。摂取量で4つのグループに分けて比べると、最も多いグループは最も少ないグループに比べ、糖尿病性腎臓病のオッズ(起こりやすさの指標)が、たんぱく質で約0.41倍、食物繊維で約0.50倍でした。摂取量と腎臓病との関係を曲線で詳しく調べた分析では、たんぱく質は1日約74g、食物繊維は1日約14gを上回ると、腎臓病のオッズが低いことと関連していました。一方、調整後には、エネルギーや脂質の摂取量と腎臓病との関連はみられませんでした。
死亡との関係では、調整後に独立して関連していたのは摂取エネルギーだけでした。エネルギー摂取量と死亡リスクの関係はU字型を示し、少なすぎても多すぎてもリスクが高く、1日約1750〜1810kcalの範囲で死亡リスクが最も低くなっていました。たんぱく質や食物繊維の摂取量と死亡との間には、関連は認められませんでした。
さらに探索的な分析として、これらの関連の一部が別の要因を通じて説明できるかを調べたところ、たんぱく質と腎臓病の関連の約9.5%がBMIで、食物繊維と腎臓病の関連の約8.0%が血液中のヘモグロビン値で統計的に説明されました。ただし腎臓病の分析は一時点のデータに基づくため、どちらが先に起きたかは分からず、因果の経路を示すものではないと著者らは注意しています。
この研究が示すこと
この研究は、糖尿病の人において、たんぱく質と食物繊維を多めにとっていることが腎臓病の少なさと、エネルギーをとりすぎず不足もしないことが死亡リスクの低さと、それぞれ関連していることを示しました。
これは観察研究であり、食事が腎臓病や死亡の原因になったことを示すものではありません。食事内容の把握は2回の聞き取りに頼っており、エネルギー摂取が少ない人には体の弱りや病気が隠れている可能性も否定できません。著者らは、示された数値は統計モデルから得られた目安であり、そのまま臨床の目標値として受け取るべきではないとしています。そのうえで研究チームは、栄養素とエネルギーのバランスが糖尿病の人の腎臓病や死亡と関わりうることを示す探索的な手がかりとして、この結果を位置づけています。
原著論文の著者・所属:Qiuhong Li(Department of Nephrology, The First Affiliated Hospital of Zhengzhou University, Zhengzhou, China)、Xiaomeng Lv(The First Affiliated Hospital of Zhengzhou University, Zhengzhou, China)、Liuwei Wang(Department of Nephrology, The First Affiliated Hospital of Zhengzhou University, Zhengzhou, China)、Yulin Wang(Department of Nephrology, The First Affiliated Hospital of Zhengzhou University, Zhengzhou, China)、Yanhong Guo(Department of Nephrology, The First Affiliated Hospital of Zhengzhou University, Zhengzhou, China)、Lu Yu(Department of Nephrology, The First Affiliated Hospital of Zhengzhou University, Zhengzhou, China)、Zihan Zhai(Department of Nephrology, The First Affiliated Hospital of Zhengzhou University, Zhengzhou, China)、Zhibin Huang(Department of Nephrology, The First Affiliated Hospital of Zhengzhou University, Zhengzhou, China)、Lin Tang(Department of Nephrology, The First Affiliated Hospital of Zhengzhou University, Zhengzhou, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Qiuhong Li, Xiaomeng Lv, Liuwei Wang, et al. Associations of dietary macronutrients and energy intake with diabetic kidney disease and all-cause mortality in diabetes: evidence from NHANES. BMJ Open Diabetes Research & Care 2026-09-01. DOI: 10.1136/bmjdrc-2026-005941. 原著ライセンス:CC BY.