著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:プロバイオティクス酵母でつくった果実入り蜂蜜酒の味わいを確かめる

ミード(蜂蜜酒)は、水で薄めた蜂蜜を酵母で発酵させてつくるお酒で、人類が知る最も古い発酵飲料の一つとされています。そこに果物を加えたものは「メロメル」と呼ばれます。今回の研究で使われた果物はクプアス(Theobroma grandiflorum)です。ブラジルのアマゾン地域原産で、黄色みのある果肉、強い酸味、独特の香りを持ち、飲料や菓子、氷菓に広く使われています。

ミードづくりには一般にサッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisiae)という酵母が使われます。一方、近年はその変種で、プロバイオティクスとして知られるサッカロミセス・セレビシエ var. ブラウディ(S. boulardii)を使ってアルコール飲料をつくる試みが報告されています。プロバイオティクスとは、生きた状態で取り入れることで有益に働くとされる微生物のことです。著者らのグループは以前、この酵母でクプアス入りメロメルをつくれることを示していましたが、その飲み物を人が飲んだときの味わいや好まれ方はまだ調べられていませんでした。

そこで研究チームは、S. boulardiiで発酵させたクプアス入りメロメルの官能特性、つまり人の感覚で捉えた見た目・香り・味の特徴と、消費者にどの程度受け入れられるかを明らかにすることを目的としました。

何を調べたか:2種類の酵母でつくった飲み物を113人が飲み比べ

研究チームは、以前の研究で定めた手順に従って新たに飲み物を仕込みました。蜂蜜を水で薄めた液と、クプアスの果肉を水で薄めた果汁をそれぞれ加熱殺菌し、蜂蜜液80%、クプアス果汁20%の割合で混ぜました。これにS. boulardii、または市販のS. cerevisiaeをどちらも1リットルあたり1グラム加え、25℃で10日間発酵させました。それぞれ3回ずつ仕込みを行っています。

試飲の前には、大腸菌群、大腸菌、サルモネラ属菌といった衛生上問題となる微生物の検査を行い、いずれも検出されなかったことを確認しています。

評価には、アルコールやはちみつ、クプアスにアレルギーや不耐症がない18歳以上の健康なボランティア113人が参加しました。参加者は、冷やした2種類の飲み物を、どちらがどちらか分からないよう番号を付けたカップで、ランダムな順番に試飲しました。

評価は二つの方法で行われました。一つは、見た目、香り、色、風味、総合的な印象を「非常に嫌い」の1点から「非常に好き」の9点で採点し、さらに「絶対に買わない」の1点から「いつも買う」の7点で購入意向を答えてもらう受容性テストです。もう一つはCATA(Check-All-That-Apply)法で、「明るい琥珀色」「透明」「濁っている」「蜂蜜の香り」「甘味」「苦味」「アルコールの味」など20個の言葉の一覧から、その飲み物に当てはまると思うものをすべて選んでもらうやり方です。どの言葉がどちらの飲み物に多く選ばれたかを比べることで、それぞれの特徴を描き出せます。

主な結果:S. boulardii版は風味・総合印象・購入意向で高い評価

受容性テストでは、S. boulardiiで発酵させたメロメルが、市販酵母でつくったものより統計的に意味のある差で高く評価されました。9点満点の風味は7.64点対7.04点、総合的な印象は7.51点対7.25点でした。7点満点の購入意向も4.63点対4.09点と、S. boulardii版が上回りました。一方、色、香り、見た目の点数には統計的な差は見られませんでした。

CATA法では、S. boulardii版に「明るい琥珀色」「透明」「蜂蜜の香り」「甘味」「蜂蜜の風味」「風味豊か」といった言葉が多く選ばれました。これに対して市販酵母版には「濁っている」「苦味」「辛口(ドライ)」「酢のような風味」「アルコールの味」がより多く選ばれました。「クプアスの香り」「クプアスの風味」「酸味」などは、両者で差がありませんでした。

著者らは、S. boulardii版に「甘味」が多く選ばれた点について、以前の研究でこの酵母を使った飲み物に糖分がより多く残っていたという報告と整合すると述べています。ただし、今回試飲に使った仕込みそのものの糖分などの成分は測定していないとしています。

研究が示すこと

研究チームは、S. boulardiiがメロメルづくりに使える酵母の選択肢になりうると結論づけています。点数による好みの評価と、言葉による特徴づけの結果が同じ方向を示したことも、この見方を支えるものとされています。

一方で著者らは、慎重な解釈も求めています。観察された味わいの違いは、同じ条件で発酵させたときに酵母の種類の違いに伴って現れたもので、酵母の働きと、その結果生じた飲み物の成分の違いが合わさった影響を反映している可能性があります。また、参加者の72.6%が18〜24歳で、約88.5%がミードを飲んだ経験がなかったため、結果を消費者全体に広げることはできません。購入意向の差も7点中0.54点で、市場での成功を直接示すものではなく、初期段階の手がかりと位置づけられています。この研究は、プロバイオティクス酵母を使って、消費者に好まれる味わいの発酵酒をつくれる可能性を、実際の試飲を通じて示したものといえます。

原著論文の著者・所属:Karina Nascimento Pereira(Department of Food Engineering, School of Animal Science and Food Engineering, University of São Paulo, Av. Duque de Caxias Norte, 225, Pirassununga 13635-900, SP, Brazil)、Handray Fernandes de Souza(Department of Food Engineering, School of Animal Science and Food Engineering, University of São Paulo, Av. Duque de Caxias Norte, 225, Pirassununga 13635-900, SP, Brazil)、Ricardo Donizete Teixeira(Department of Food Engineering, School of Animal Science and Food Engineering, University of São Paulo, Av. Duque de Caxias Norte, 225, Pirassununga 13635-900, SP, Brazil)、Amanda Cristina Dias de Oliveira(Department of Food Engineering, School of Animal Science and Food Engineering, University of São Paulo, Av. Duque de Caxias Norte, 225, Pirassununga 13635-900, SP, Brazil)、Victor Dédalo Di Prospero(Department of Food Engineering, School of Animal Science and Food Engineering, University of São Paulo, Av. Duque de Caxias Norte, 225, Pirassununga 13635-900, SP, Brazil)、Rafael Lopes de Alcântara(Department of Food Engineering, School of Animal Science and Food Engineering, University of São Paulo, Av. Duque de Caxias Norte, 225, Pirassununga 13635-900, SP, Brazil)、Marina Vieira de Carvalho(Department of Food Engineering, School of Animal Science and Food Engineering, University of São Paulo, Av. Duque de Caxias Norte, 225, Pirassununga 13635-900, SP, Brazil)、Carlos Augusto Fernandes de Oliveira(Department of Food Engineering, School of Animal Science and Food Engineering, University of São Paulo, Av. Duque de Caxias Norte, 225, Pirassununga 13635-900, SP, Brazil)、Eliana Setsuko Kamimura(Department of Food Engineering, School of Animal Science and Food Engineering, University of São Paulo, Av. Duque de Caxias Norte, 225, Pirassununga 13635-900, SP, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Karina Nascimento Pereira, Handray Fernandes de Souza, Ricardo Donizete Teixeira, et al. Sensory Analysis of Cupuaçu (Theobroma grandiflorum) Melomel Produced with Saccharomyces cerevisiae var. boulardii Using Acceptance Testing and the Check-All-That-Apply (CATA) Method. Foods 2026-09-24. DOI: 10.3390/foods15193411. 原著ライセンス:CC BY.