日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
掲載誌:Food Chemistry X
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:摘果で出る若い柿の実を食品素材として生かす
柿の栽培では、残す実を大きく育てるために、若いうちに一部の実を間引く「摘果」が行われます。間引かれた若い実は農業副産物となりますが、渋みのもとになるタンニンを多く含んでいます。研究チームは、この若い柿の実から得た抽出物(YPE)を、アイスクリームに加える天然の添加素材として利用できるかを調べました。
著者らは、YPEを加えたときに、アイスクリームの色や溶け方、食感、抗酸化活性、そして食べた人の好ましさがどう変化するかを検討しています。
何を調べたか:タンニンの量を変えて性質を比較
研究チームは、YPEとして加える水に溶けるタンニン(可溶性タンニン)の量が0.0〜1.0%になるようにアイスクリームを作り、YPEを加えないものと比べました。
調べた項目は、酸性度を示すpH、糖度の目安となるBrix、抗酸化活性、内部の微細な構造、粒子の大きさ、粘り気(粘度)です。さらに、製造時にどれだけ空気が含まれて体積が増えたかを示す「オーバーラン」、完全に溶けるまでの時間、硬さや付着性などの食感、総合的な好ましさも評価しました。加えて、牛乳の主なたんぱく質であるカゼインとβ-ラクトグロブリンについて、ELISAと呼ばれる抗体を使った測定法で、検出される量を探索的に調べています。
主な結果:溶けにくくなり、0.1〜0.5%が実用的な範囲
抄録によると、YPEはアイスクリームに天然の赤褐色を与え、抗酸化活性を有意に高めました。一方で、pHやBrixはほとんど変わりませんでした。
構造や粘度、オーバーランなどの分析から、著者らは、タンニンと牛乳たんぱく質が結びつくことでアイスクリームの内部が密になり、取り込まれる空気が減ったと解釈しています。その結果、溶けにくさが向上しました。YPEを加えないアイスクリームは42分で完全に溶けたのに対し、タンニン添加量0.1〜0.5%では51〜54分(最も長かったのは0.3%)、1.0%では75分かかりました。
食感では、タンニンの添加量が増えるほど、硬さ、付着性、そして噛み砕くのに必要な力に関わるガム性が増しました。総合的な好ましさは0.5%までは保たれましたが、1.0%では低下しました。このことから、研究チームは実用的な添加範囲を0.1〜0.5%としています。
探索的なELISAの測定では、タンニンの濃度が高くなるにつれて、検出されるカゼインとβ-ラクトグロブリンの量が緩やかに減り、減少幅は最大で26%でした。
研究が示すこと
この研究は、摘果で生じる若い柿の実の抽出物が、アイスクリームの色づけ、抗酸化活性の向上、溶けにくさの改善という複数の役割を同時に担いうることを示しています。ただし、加えすぎると好ましさが下がるため、適した量には範囲があることも報告されました。著者らは、YPEを農業副産物に価値を与える、原材料表示を簡潔にしやすい(クリーンラベルの)多機能な天然添加素材として有望だと結論づけています。
原著論文の著者・所属:Miyuna Kobayashi(Faculty of Human Sciences, Shimane University, Matsue 690-8504, Shimane, Japan)、Tomoyoshi Hara(Faculty of Human Sciences, Shimane University, Matsue 690-8504, Shimane, Japan)、Akari Sunahara(Faculty of Human Sciences, Shimane University, Matsue 690-8504, Shimane, Japan)、Mika Ishigaki(Institute of Agricultural and Life Sciences, Academic Assembly, Shimane University, Matsue 690-8504, Shimane, Japan)、Yoko Tsurunaga(Faculty of Human Sciences, Shimane University, Matsue 690-8504, Shimane, Japan; Graduate School of Human and Social Sciences, Shimane University, Matsue 690-8504, Shimane, Japan; The United Graduate School of Agricultural Sciences, Tottori University, 4-101 Koyama-Minami, Tottori 680-8553, Japan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Miyuna Kobayashi, Tomoyoshi Hara, Akari Sunahara, et al. Young persimmon fruit extract as a multifunctional natural additive in ice cream: Effects on physical properties, antioxidant functionality, and sensory acceptability. Food Chemistry X 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.fochx.2026.104662. 原著ライセンス:CC BY.