著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。
掲載誌:Plants
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
サトイモ科のアルム属の植物には、ポリフェノールなど体によい働きが期待される成分がある一方で、毒性の原因となる成分も含まれています。主な原因として知られているのは、シュウ酸カルシウムの結晶と、青酸配糖体と呼ばれる物質です。青酸配糖体は、植物の組織が切られたり加熱されたりすると分解し、有毒なシアン化水素(青酸)を生じます。
トルコ東部のアナトリア地方に自生するアルム・ルピコラ(Arum rupicola var. virescens)の葉は、ゆでて水を切り、ピラフに加えて食べられています。食品の加工では、乾燥や下ゆでなどによってシュウ酸や青酸配糖体を減らせることが報告されています。そこで研究チームは、この植物の葉について、乾燥方法と下処理の違いが有毒成分と有用成分にどのような影響を与えるかを調べました。
何を比べたのか
研究チームは、2024年にトルコのハッカリ県で採取した葉を5センチほどに切り、5種類の方法で乾燥させました。真空下で赤外線を当てる方法(真空赤外線乾燥)、出力300ワットの電子レンジ乾燥、70℃の熱風による一般的な乾燥、日陰干し、天日干しです。それぞれ、水分が乾燥重量あたり7.5〜9.5%になるまで乾燥させました。
乾燥とは別に、生の葉に施す3種類の下処理も試しました。超音波を10分・20分・30分当てる処理、90℃の湯に5分・10分浸す湯通し(ブランチング)、冷凍して解凍する処理です。
測定した項目は、ポリフェノールとフラボノイドの総量、抗酸化力、クロロフィル(葉緑素)とカロテノイド、ビタミンC、加熱による品質劣化の目安となるHMFという物質、青酸配糖体の量、そして顕微鏡で観察したシュウ酸カルシウムの針状結晶(ラフィド)の長さです。
主な結果
乾燥にかかる時間は電子レンジが最も短く、約10分でした。論文によると、電子レンジ乾燥は真空赤外線乾燥の5分の1、熱風乾燥の18分の1の時間で済みました。機械を使う3つの方法は、日陰干しや天日干しよりも大幅に短時間で乾燥できました。
有用成分の残り方は方法によって大きく異なりました。真空赤外線乾燥と電子レンジ乾燥では、ポリフェノールとフラボノイドの総量、抗酸化力が生の葉より高くなり、なかでも真空赤外線乾燥が最も高い値を示しました。一方、日陰干しと天日干しではこれらの値が下がり、天日干しが最も低くなりました。クロロフィルとカロテノイドも、真空赤外線乾燥で最もよく保たれていました。生の葉はビタミンCを豊富に含んでいましたが、乾燥によって減少しました。減少率は真空赤外線乾燥で約16%、電子レンジで約17%、熱風で約23%だったのに対し、日陰干しでは約83%、天日干しでは約85%に達しました。研究チームは、乾燥に時間がかかるほど成分が酸化にさらされることが、こうした差の一因と考えています。
有毒成分については、生の葉の青酸配糖体は乾燥重量1キログラムあたり約121ミリグラムでした。どの乾燥方法でもこの量は減少し、減少率は真空赤外線乾燥が約74%で最も大きく、電子レンジが約67%、熱風が約60%、日陰干しが約57%、天日干しが約47%でした。下処理では、超音波を長く当てるほど青酸配糖体が減り、30分の処理で約76%が除去されました。これは、どの乾燥方法よりも大きな減少でした。湯通しでは5分で約40%、10分で約68%が減りましたが、冷凍・解凍による減少は約12%にとどまりました。
シュウ酸カルシウムの針状結晶の長さは、生の葉で約38マイクロメートルでした。乾燥や下処理を施したすべての試料で結晶は生の葉より短くなり、その減少率は約14〜56%でした。乾燥方法の中では電子レンジで最も短くなりました。下処理では、30分の超音波処理と10分の湯通しで結晶が最も小さくなり、超音波を当てる時間が長いほど結晶は短くなりました。著者らは、下処理のほうが乾燥よりも全体として結晶が小さくなる傾向があったと報告しています。
研究が示すこと
著者らは、真空赤外線乾燥は電子レンジ乾燥より時間がかかるものの、栄養成分と抗酸化力をよく保ち、品質の高い乾燥品が得られると結論づけています。また、青酸配糖体を減らしシュウ酸カルシウムの結晶を小さくするうえでは、30分の超音波処理と真空赤外線乾燥が特に効果的な方法の一つだとしています。
今回の研究で測ったのは、成分の量と結晶の長さです。加工によってシュウ酸カルシウムの結晶が小さくなる仕組みについては、まだ調べた研究が少なく、さらなる検討が必要だと著者らは述べています。伝統的に食べられてきた野草について、加工の仕方によって有毒成分の減り方と有用成分の残り方が大きく変わることを、具体的な数値で比べた研究といえます。
原著論文の著者・所属:Serdar Uğurlu(Department of Plant and Animal Production, Yüksekova Vocational School, Hakkari University, Hakkari 30100, Türkiye)、Emre Bakkalbaşı(Department of Food Engineering, Faculty of Engineering, Van Yüzüncü Yıl University, Zeve Campus, Van 65080, Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Serdar Uğurlu, Emre Bakkalbaşı. Effect of Different Drying Methods and Pretreatments on Cyanogenic Glycosides, Calcium Oxalate, and Bioactive Compounds of Arum rupicola Boiss. var. virescens (Stapf) P.C. Boyce. Plants 2026-10-21. DOI: 10.3390/plants15203241. 原著ライセンス:CC BY.