著者の所属・活動拠点の国は、ウズベキスタンです。
掲載誌:International Bulletin of Applied Sciences and Technology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
なぜマルメロの乾燥を調べたのか
マルメロ(学名 Cydonia oblonga Mill.)は、糖や有機酸、ペクチン、ビタミンなどを含む果物です。乾物(水分を除いた固形分)やペクチンが比較的多いため、ドライフルーツなどの加工原料として期待されています。
一方で、乾燥加工には難しさもあります。著者らによると、マルメロの果肉は密で硬いため、内部の水分が表面へ移動しにくく、通常の乾燥では時間とエネルギーが多くかかることがあります。また、果実を切ると細胞が壊れて空気中の酸素に触れ、ポリフェノールオキシダーゼという酵素の働きで切り口が茶色く変わります。これを「酵素的褐変」と呼び、乾燥品の色や見た目を損ないます。
そこで研究チームは、乾燥前の下処理として、薄く切ること、湯通し(ブランチング)、酸化を抑えるアスコルビン酸(ビタミンC)溶液での処理を組み合わせた場合の効果を調べました。あわせて、品種によって乾燥への向き不向きがあるかを明らかにし、品質の良い乾燥マルメロを作るための条件を見つけることを目的としました。
7品種を使った下処理と乾燥の実験
研究では、Samarqand yirik mevasi、Toshkent yumaloq behi、Andijon behi、Qoqon behi、Dessertnaya、Krupnoplodnaya、Maslyanka Pozdnyayaの7品種を用いました。実験は2023〜2025年に実験室と準工業規模の条件で行われ、各処理を3〜4回繰り返しています。
まず各品種の乾物、糖、有機酸、ビタミンC、ペクチンの含有量を測りました。続いて果実を5〜7mmの厚さに切り、何も処理しない対照、湯通しのみ、アスコルビン酸処理のみ、そして85〜90℃で2〜3分湯通ししたあと0.3%のアスコルビン酸溶液で処理する組み合わせ処理を比較しました。湯通しは褐変の原因となる酵素の働きを弱め、アスコルビン酸はその後の酸化を抑える役割が期待されています。
乾燥には、温風を当てる対流式乾燥と、赤外線で果肉の内部へ熱を伝える方法を組み合わせた方式に特に注目し、温度65℃、風速毎秒1.5mの条件を用いました。乾燥時間、最終的な水分、乾燥後に得られる製品の割合(収率)、エネルギー消費などを品種ごとに比べ、色・味・香り・食感などを5点満点で評価する官能評価も行いました。
主な結果:下処理は色とビタミンCを守り、組み合わせ乾燥は時間とエネルギーを減らした
組み合わせ下処理によって、乾燥前から乾燥中にかけての好ましくない変化が抑えられたと論文は報告しています。著者らのまとめでは、酵素的褐変は42〜48%減少し、本来の色の保持は40〜45%改善し、ビタミンCの保持率は85〜88%に達しました。特に反応が良かったのはSamarqand yirik mevasiで、褐変が48.0%減り、色の保持が45.0%改善し、ビタミンCの保持率は88.0%でした。Qoqon behiも褐変が46.2%減り、ビタミンCの保持率は86.6%でした。
乾燥の効率では、DessertnayaとKrupnoplodnayaが優れていました。Dessertnayaは乾燥時間が9.8時間と7品種で最も短く、収率は19.8%と最も高く、乾燥時間が22.0%、エネルギー消費が15.0%減りました。Krupnoplodnayaも乾燥時間9.9時間、収率19.5%で、従来の方法に比べて乾燥時間を21.3%、エネルギー消費を14.7%減らしました。論文は全体として、対流式と赤外線を組み合わせた乾燥により、反応の良い品種で乾燥時間がおよそ18〜22%短縮し、エネルギー消費が12〜15%程度減ったとまとめています。
品種ごとの差には、もとの成分が一部関係していると著者らは考えています。乾物の多い品種ほど収率が高い傾向があり、乾物18.8%のDessertnayaの収率が19.8%だったのに対し、乾物が最も少ない16.1%のToshkent yumaloq behiは乾燥時間が最も長く、収率は17.6%にとどまりました。
官能評価では、Samarqand yirik mevasiとQoqon behiがともに4.73点で最も高い総合評価を得ました。乾燥効率が最も高かったDessertnayaは4.65点で、味と香りの評価は高かったものの、総合点では上位2品種に及びませんでした。つまり、最も効率よく乾く品種が、官能評価の総合点でも最も高くなるとは限らないことが示されました。
品種に合わせた加工の考え方
研究チームは、マルメロの乾燥への適性は、品種の特徴やもとの成分、下処理の条件、乾燥方法によって左右されると結論づけています。色やビタミンC、官能評価を重視するならSamarqand yirik mevasiやQoqon behiが、乾燥効率や収率を重視するならDessertnayaやKrupnoplodnayaが有利だという整理です。
すべての品種に同じ方法を当てはめるのではなく、品種の選択と適切な下処理、効率的な乾燥条件を組み合わせることで、乾燥マルメロの品質を保ちながら加工効率を高めやすくなる。この研究は、そうした考え方を品種ごとの比較を通じて示しています。
原著論文の著者・所属:Saddambek Yunusov(PhD Student at the Research Institute of Horticulture, Viticulture and Winemaking named after Academician M. Mirzaev)、Shavkat Umidov(Associate Professor at Tashkent State Agrarian University, Doctor of Philosophy (PhD) in Agricultural Sciences, Tashkent, Uzbekistan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Saddambek Yunusov, Shavkat Umidov. INFLUENCE OF PRETREATMENT TECHNIQUES ON DRYING PERFORMANCE AND QUALITY CHARACTERISTICS OF QUINCE (CYDONIA OBLONGA MILL.). International Bulletin of Applied Sciences and Technology 2026-08-31. DOI: 10.5281/zenodo.22301313. 原著ライセンス:CC BY.