著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:MIMBAR AGRIBISNIS Jurnal Pemikiran Masyarakat Ilmiah Berwawasan Agribisnis

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

地域特産の果実を加工する事業を経済面から評価する

パリジョト(学名 Medinilla speciosa)は、インドネシア・ジャワ島中部のムリア山の斜面に特有の植物で、クドゥス県のいくつかの村で栽培されています。生の果実は傷みやすく、現代的な市場ではあまり知られていないため、そのままでは活用が限られています。そこで、シロップなどの加工品にして価値を高める取り組みが注目されてきました。

研究チームが対象にしたのは、同県コロ村でパリジョトシロップを製造する先駆的な企業「CV Seleksi Alam Muria」です。著者らによると、同社の需要は通常時には月約400リットルに達していましたが、2023年末から2024年にかけて販売量が40〜50%減り、月約200リットルにまで落ち込みました。原料の確保の難しさ、労働の効率、市場需要の不安定さ、競合製品、販売戦略などが影響したとされています。こうした状況を受け、研究チームは、果実をシロップに加工することで生まれる「付加価値」と、事業の「収益性」を分析することを目的としました。

一年分の生産・販売・費用のデータを分析

研究は2025年10月に実施された事例研究です。同社の経営者、製造担当者、事務スタッフへの聞き取りや現地観察、社内記録などから、生産量、販売価格、製造費用のデータを集め、2024年11月から2025年10月までの12か月分を分析しました。

付加価値の算出には、農産物加工の分析でよく使われる「ハヤミ法」を用いました。これは、原料1キログラムを加工したときに生まれる製品の価値から、原料代やその他の投入物の費用を差し引き、残った価値が労働への報酬と企業の利益にどう配分されるかを示す方法です。収益性は、月ごとの純利益を総製造費用で割った割合として計算し、その平均を国営銀行BRIの2025年8月時点の定期預金金利3.50%と比べました。つまり「同じお金を預金しておくより有利な事業か」という基準で評価したことになります。

付加価値は高いが、収益性は預金金利を下回る

論文によると、同社では月平均308.75キログラムのパリジョト果実を使い、同量の308.75リットルのシロップを生産していました。果実1キログラムから1リットルのシロップができる計算です。シロップの販売価格は1リットルあたり18万ルピア、果実の仕入れ価格は1キログラムあたり7万5千ルピア、砂糖などその他の投入物は1万5千ルピアでした。

この結果、原料1キログラムあたりの付加価値は9万ルピアとなり、製品価値に占める付加価値の割合は50%で、著者らはこれを「高い」水準と評価しています。この付加価値のうち約45%(4万485ルピア)が労働への報酬、約55%(4万9515ルピア)が企業の利益に配分されると報告されています。

一方、事業全体の収益性には課題が見られました。月平均の製造費用は約5204万ルピアで、そのうち約2195万ルピアが減価償却費や人件費などの固定費、約3010万ルピアが原料や容器などの変動費でした。12か月間の純利益は合計で約2193万ルピアでしたが、月ごとの変動が大きく、赤字となった月もありました。収益性が最も高かったのは需要が増えた2025年1月の約13.3%、最も低かったのは販売が少なく在庫が積み上がった2024年11月の約マイナス14.4%でした。

12か月の平均収益性は3.013%で、比較基準とした預金金利3.50%を下回りました。研究チームはこの結果から、事業の利益を生み出す力はまだ十分ではないと結論づけ、その背景として製造費用の高さ、生産量の変動、販売の不安定さを挙げています。また、同社は山間部の農家から果実を直接買い付けているものの長期的な契約関係はなく、果実が季節性で新鮮な状態でしか使えないことが、原料供給の不安定さにつながっていると指摘しています。

「価値を生む加工」と「利益の出る事業」は別の問題

この研究は、地域特産の果実をシロップに加工すること自体は、原料の価値を大きく引き上げる効果があることを一企業の事例で示しました。その一方で、加工による付加価値が高くても、生産量や販売が安定しなければ、事業としての収益性は預金金利にも届かない場合があることも明らかにしています。

著者らは、費用の効率化、原料供給の安定化、生産能力の有効活用が、この事業の持続性を高めるために必要だと述べています。地域資源を生かした小規模な加工業が、付加価値の高さを安定した利益に結びつけるうえで何が壁になるのかを、具体的な数字で示した事例といえます。

原著論文の著者・所属:Puspa Indah Fitritama(Universitas Diponegoro)、Titik Ekowati(Universitas Diponegoro)、Hery Setiyawan(Universitas Diponegoro)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Puspa Indah Fitritama, Titik Ekowati, Hery Setiyawan Analisis Nilai Tambah Produk Sirup Parijoto di CV Seleksi Alam Muria Kabupaten Kudus. MIMBAR AGRIBISNIS Jurnal Pemikiran Masyarakat Ilmiah Berwawasan Agribisnis 2026-08-01. DOI: 10.25157/ma.v12i2.23432. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。