著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Jurnal Ilmiah Kesehatan (JIKA)

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

スタンティング(発育阻害)とは、妊娠中から2歳ごろまでの「最初の1000日」に慢性的な栄養不足などで成長が妨げられ、年齢に対する身長が国際的な成長基準の中央値から標準偏差の2倍以上低い状態を指します。身体の成長だけでなく、認知の発達や将来の生産性にも影響し、貧困が世代を超えて続く一因になりうるとされています。

論文によると、インドネシアのスタンティング有病率は2019年の27.7%から2022年には21.6%へ下がりましたが、世界保健機関(WHO)の基準では依然として公衆衛生上「高い」水準にあります。政府は保健分野の直接的な対策と、水・衛生や社会保障など保健以外の分野の対策を組み合わせて取り組んでいます。

著者らは、これまでの研究の多くが個人単位や限られた地域を対象にしていたことから、州という広い単位で政策の実施状況とスタンティングの関係を捉える必要があると考えました。そこで、州レベルでスタンティング有病率と関連する要因を特定し、各種対策プログラムの効果を検討することを目的としました。

どのように調べたか

研究チームは「生態学的研究」という手法を用いました。これは個人ではなく、州などの集団単位でまとめられたデータ同士の関係を調べる方法です。対象はインドネシアの34州で、2022年に保健省や統計庁など政府機関が公表した公式データを使いました。

調べた項目は大きく二つに分かれます。一つは、低出生体重(出生時2500グラム未満)、下痢や肺炎、エネルギーやたんぱく質の充足度、食事の多様性とバランスを示す得点、貧困率、平均就学年数、出生証明書の保有率、家計支出に占める食費の割合などの「背景要因」です。もう一つは、栄養不良の妊婦や幼児への補助食の提供、妊婦と思春期女子への鉄剤の配布、母乳育児、妊婦健診、医療従事者による出産介助、予防接種、産後の家族計画、安全な飲み水やトイレ・下水などの衛生設備の普及、条件付き現金給付(PKH)などの「対策プログラム」の普及率です。

これらの値と各州のスタンティング有病率との関係を、相関分析という統計手法で調べました。相関は「一方が高い州ほどもう一方も高い(または低い)」という傾向を示すもので、原因と結果を直接示すものではありません。著者ら自身も、州単位で見られた傾向がそのまま個人に当てはまるとは限らない点を、この手法の限界として挙げています。

主な結果

34州の有病率の平均は23.29%でした。WHOの区分では半数の17州が「高い」、6州が「非常に高い」、10州が「中程度」に当たり、「低い」に分類されたのは1州だけでした。著者らは、対策の成果がまだ十分ではなく、地域によって差があることを示していると述べています。

背景要因では、低出生体重の割合、貧困率、家計に占める食費の割合が高い州ほど、スタンティング有病率も高い傾向が見られました。反対に、食事の多様性とバランスの得点、平均就学年数、出生証明書の保有率、食費以外の支出の割合が高い州ほど、有病率は低い傾向にありました。中でも食事の多様性の得点と出生証明書の保有率は、比較的はっきりした関連を示しました。一方、下痢や肺炎、エネルギーやたんぱく質の充足度、10代での出産などには統計的に明確な関連は認められませんでした。

対策プログラムでは、栄養不良の妊婦と幼児への補助食、妊婦と思春期女子への鉄剤配布、医療従事者による出産介助、妊婦健診の4回以上の受診、基礎的な予防接種の完了、産後の家族計画、衛生設備の普及率が高い州ほど、有病率が低い傾向が見られました。母乳育児、医療機関へのアクセス、低所得者向けの公的医療保険、食料購入支援などには明確な関連は見られませんでした。

一方で、安全な飲み水の普及率と条件付き現金給付の受給率は、高い州ほど有病率も高いという、予想とは逆の関係を示しました。飲み水について著者らは、指標が水の微生物学的な安全性や家庭での扱い方までは反映していない可能性などを挙げています。現金給付については、支援が最初の1000日にある子どもを持つリスクの高い家庭に十分届いていない可能性を推測しています。

研究が示すこと

この研究は、インドネシアのスタンティングが、母子の健康、食事の質、貧困や教育、衛生環境といった複数の分野にまたがる要因と結びついていることを、州単位のデータで示しました。著者らはこの結果から、最初の1000日を中心に、保健、衛生、貧困対策、教育など分野を横断した対策を一体的に強化することが重要だと結論づけています。

原著論文の著者・所属:Charoline Adelyn Dwi Della(Nutrition Study Program, Faculty of Medicine and Nutrition, IPB University, Bogor, Indonesia)、Hadi Riyadi(Nutrition Study Program, Faculty of Medicine and Nutrition, IPB University, Bogor, Indonesia)、Yayuk Farida Baliwati(Nutrition Study Program, Faculty of Medicine and Nutrition, IPB University, Bogor, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Charoline Adelyn Dwi Della, Hadi Riyadi, Yayuk Farida Baliwati. Intervention Programs and Determinant Factors of Stunting Prevalence in Indonesia: An Ecological Study. Jurnal Ilmiah Kesehatan (JIKA) 2026-08-02. DOI: 10.36590/jika.v8i2.2024. 原著ライセンス:CC BY.