ビタミンEの一種「α-トコフェロール」の含有量ランキングをつくると、1位に躍り出るのは緑茶です。油でも種実類でもなく、急須に入れるあの茶葉が首位という結果は、少し意外に映るかもしれません。しかしこの数字、実は素直に受け取ると見誤ります。

ビタミンEは脂に溶ける性質を持つ栄養素で、体の中では脂質の酸化を防いだり、細胞の膜が正常に働き続けるのを支えたりする役割を持つとされています。α-トコフェロールはビタミンEの仲間の中の一種類です。日本人の食事摂取基準では、30〜49歳女性のα-トコフェロールの目安量は1日6mgとされています。この6mgという数字を頭に置きながら、上位食品を見ていきましょう。

上位5食品の読み解き

1位・2位は緑茶——ただし「茶葉の値」であることが重要

1位はせん茶で、100gあたりα-トコフェロール65mg。2位は番茶で40.8mgです。目安量6mgに対して非常に大きな数値に見えますが、ここに数字のトリックがあります。これらは乾いた「茶葉」100gあたりの値であって、湯呑み一杯分の値ではありません。せん茶は大さじ1杯(茶葉6g程度)を急須に入れるのが一般的で、実際に使う量はごくわずかです。茶葉6g分に換算すると、せん茶のα-トコフェロールは数mg程度にとどまり、しかも茶葉に含まれる成分の大半は湯に溶け出さずに出がらしに残ります。つまり「お茶をよく飲むからビタミンEは足りている」とは言い切れないのです。

ちなみにせん茶は、ビタミンK(茶葉100gあたり1400µg、女性30〜49歳の目安量150µg/日を大きく上回る量)やビタミンC(260mg、同世代の推奨量100mg/日の2.6倍)、β-カロテン当量(13000µg)も豊富です。ただしこれらも茶葉100gあたりの値であり、実際に飲むお茶からどれだけ摂れるかは別の話です。番茶もビタミンKやビタミンC、葉酸が多い点は共通しており、茶葉という食品自体が持つ成分の濃さがうかがえます。

3位タイはひまわり油3種——同じα-トコフェロールでも中身は別物

3位はひまわり油が3種類並び、いずれもα-トコフェロールは39mgで同程度です。ミッドオレイック、ハイオレイック、ハイリノールという名前の違いは、実は脂肪酸の構成の違いを表しています。ひまわり油 ミッドオレイックリノール酸が28000mg(28g)、ひまわり油 ハイオレイックは6600mg(6.6g)、ひまわり油 ハイリノールは58000mg(58g)と、同じ「ひまわり油」でも量に大きな差があります。リノール酸は体内で合成できないn-6系の必須脂肪酸で、ハイリノール種はこのリノール酸がとりわけ多く、油としての個性を決める主役になっています。α-トコフェロールの量だけを見れば3種とも横並びですが、脂肪酸の組成は品種によってまったく違う。同じ数字の裏に別の顔がある、という点は緑茶の話とはまた違う形の「数字の罠」といえるでしょう。なお油は大さじ1杯で12〜13.7g程度使うのが目安で、こちらは茶葉と違って口に入れる量がそのまま栄養価に反映されます。

まとめ——数字だけでなく「実際にどれだけ摂れるか」まで見る

α-トコフェロールの含有量ランキングでは、茶葉100gあたりでは緑茶が上位を占めます。しかし実際に飲む一杯に換算すると寄与はわずかで、日々の目安量6mgを支えているのは、茶葉ではなく油脂類などの実際に「食べる量」がそのまま摂取量になる食品だと考えられます。同じランキングの中でも、茶葉は「淹れて捨てる」食品、油は「使った分だけ摂れる」食品という違いがあり、この違いを知らずに数値だけを比べると実態を見誤ります。食品を選ぶときは、100gあたりの数字だけでなく、実際にどれだけ口にするか、その食品が他にどんな特徴を持つかまで見て判断することが大切です。なお、α-トコフェロールには耐容上限量が定められているため、サプリメント等での過剰摂取には注意が必要です(通常の食事で過剰になることはまれとされています)。

※特定の食品の効果・効能を示すものではありません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準