マンガンは、いくつかの酵素の構成成分として働く無機質(ミネラル)です。エネルギー代謝や骨の形成に関わる酵素の成分になるとされ、量は多くありませんが体の働きを支える存在です。成人女性(30〜49歳)の食事摂取基準では、目安量が1日3.0mgと定められています。この基準に照らして、100gあたりのマンガン含有量が多い食品の上位5位を見てみると、思いがけない顔ぶれが並びます。
1位から5位まで、実は同じ棚にある
最も多いのはクローブ 粉で、可食部100gあたり93mgです。クローブはチョウジ(丁字)という植物の花のつぼみを乾燥させて粉にした香辛料です。この量は耐容上限量11mg/日のおよそ8.5倍にあたり、あくまで100gという量での話ですが、香辛料をひとつまみ超えて大量に摂ることは想定されていない食品だと分かります。同じ100gの中にはカルシウム640mg(成人女性30〜49歳の推奨量650mg/日の98%)や鉄9.9mg(同・月経なし推奨量6.0mg/日の165%)も多く含まれ、粉末調味料としての密度の高さがうかがえます。
2位以下は、様相が一変します。番茶90.12mg、ほうじ茶78.79mg、玉露71mg、せん茶55mgと、5位まですべてを緑茶類が占めています。番茶は硬化した芽やせん茶製造時の粗い部分から作られるとされ、ほうじ茶は番茶やせん茶の再製で出た大型茶を焙じたものとされます。玉露は被覆栽培した上質の原葉、せん茶は蒸して揉んだ一般的な茶とされ、いずれも同じ茶の木の葉が原料です。上位5食品を貫く共通項は、乾燥させて粉や葉のまま成分表に載る加工食品だという点にあります。茶葉もクローブも、水分をほとんど飛ばして凝縮された状態で成分表に載っているため、100gあたりの数値が押し上げられていると考えられます。
茶葉が並ぶ理由と、その持ち味
5位までが番茶・ほうじ茶・玉露・せん茶と緑茶類で埋まる並びで、どれも100gあたりでは耐容上限量11mg/日を大きく超える数値です。ただしこれは茶葉100gをそのまま食べた場合の話で、実際にはお湯で淹れて浸出液を飲む形で摂取するため、茶葉そのものを大量に食べることは通常ありません。
茶葉ならではの持ち味も見えます。番茶は葉酸670µg(成人女性30〜49歳の推奨量240µg/日の279%)、ほうじ茶は葉酸370µg(推奨量の154%)を含み、いずれも核酸の生合成に関わり、赤血球の形成や胎児の発育に関わるとされる成分です。玉露は葉酸1000µg(推奨量の417%)とさらに高く、ビタミンKも4000µgと5食品中最多で、正常な血液凝固の維持や骨の形成に関わるとされています。せん茶は葉酸1300µg(推奨量の542%)と5食品中で最も高い値を示しますが、この葉酸の耐容上限量はサプリメントなど合成型の葉酸にのみ適用されるもので、茶葉のような食品由来の天然の葉酸には当てはまりません。
茶葉は「飲んで」摂る食品
ここまでの数値はすべて100gあたりのものですが、実際に急須に入れる茶葉はひとつまみ、せん茶なら数グラム程度です。100gという数字だけを見ると耐容上限量を大きく超えるように見えても、実際に口にするのは淹れた後の浸出液であり、茶葉そのものをまとめて食べる食品ではありません。クローブも料理に使うのはごく少量で、100gという量とは桁が違います。
マンガンの含有量ランキングは、香辛料と茶葉という、ふだんはグラム単位でしか使わない乾燥食品が並ぶ結果になりました。毎日何気なく飲んでいる一杯のお茶にも、こうした成分が凝縮されていると知ると、急須の中の葉を見る目が少し変わってきます。次にどんな食品がこの数値を更新するのか、また確かめてみたくなるランキングです。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 日本人の食事摂取基準