血が出たとき、体の中でそれを止めようとする仕組みに欠かせない栄養素がビタミンKです。血液を固める働きに関与し、丈夫な骨をつくるのを助けるとされる脂溶性ビタミン(油に溶ける性質のビタミン)で、欠乏すると出血しやすくなったり、骨がもろくなるリスクが高まるとされています。なお、血液を固まりにくくするワーファリン(抗凝固薬)を服用中の方は、ビタミンKの摂取が薬の効果に影響するとされているため、医師・薬剤師に相談することをお勧めします。

日本人の食事摂取基準2025では、女性(30〜49歳)の1日の目安量は150µg。では、ビタミンKを多く含む食品の上位にはどんな顔ぶれが並ぶのでしょうか。成分表収載の食品から見ていきます。

上位5品中4品が緑茶の茶葉

第1位は玉露(茶葉)で、可食部100gあたりビタミンK 4000µg。目安量150µgの実に26倍以上の数値です。第2位は抹茶(茶葉)の2900µg、第3位はあまのり(ほしのり)の2600µg、第4位は番茶(茶葉)の2200µg、第5位はほうじ茶(茶葉)の2000µgです。第1位・第2位・第4位・第5位の4品が緑茶の茶葉であり、唯一の例外が第3位の海藻・ほしのりです。

ただし、ここに見落としやすい点があります。これらはすべて「茶葉そのもの」100gあたりの値です。急須でいれたお茶を飲む場合、実際に口に入るのは浸出液であり、茶葉を丸ごと摂取するわけではありません。煎茶の浸出液100gあたりのビタミンKは茶葉の数値とはまったく異なり、ごくわずかです。緑茶の茶葉がビタミンKの上位を占めるという数字は、飲み物としての緑茶の実態とは切り離して読む必要があります。

茶葉ごと食べる発想の限界――マンガンに注意

では「ならば茶葉をそのまま食べればいい」となるでしょうか。ここにもう一つ見落としやすい点があります。番茶の茶葉は可食部100gあたりマンガンが90.12mg含まれています。マンガンの耐容上限量(これ以上は健康への悪影響が懸念される量)は1日11mg。100gあたりの値が上限の約8.2倍に達します。ほうじ茶の茶葉も78.79mgで約7.2倍、玉露の茶葉も71mgで約6.5倍です。

これはあくまで「100gあたり」という単位での比較であり、実際に茶葉100gを一度に食べることはまずありません。しかし、ビタミンKを茶葉から積極的に稼ごうと茶葉を料理に多用したり、継続的に大量に食べ続ける場合を考えると、マンガンの過剰摂取に注意が必要になります。「ビタミンKが多い=茶葉をたくさん食べればよい」とはならないのです。

第3位・ほしのりは食卓で使いやすい選択肢

このランキングで異彩を放つのが第3位のあまのり(ほしのり)です。先述の通りビタミンKを多く含む食品でありながら、マンガン過剰の問題とは無縁の食品です。1枚(約4g)あたりビタミンKは約104µgで、目安量150µgの約7割にあたります。うまみと風味があるため、そのまま食べるだけでなく薄味の料理に添えるなど、日常の食卓で取り入れやすい特徴があります。なお、ほしのりはビタミンKを多く含む食品のため、ワーファリン(抗凝固薬)を服用中の方は摂取量の変動に注意し、医師・薬剤師に相談してください。

ヨウ素については、ほしのりに多く含まれます。通常量であれば多くの方で問題になりにくいですが、甲状腺疾患のある方や妊娠中・授乳中の方はヨウ素の過剰摂取に注意が必要なため、医師・管理栄養士に相談してください。のりを大量に食べ続けるような偏った食べ方は避け、バランスよく使うのが基本です。

抹茶は茶葉ごと現実的に摂れる緑茶

一般的な飲食習慣において、緑茶の茶葉の中で茶葉を丸ごと摂取できるのは抹茶のみです。玉露・番茶・ほうじ茶はいずれも葉の形状のまま急須で浸出して飲む使い方が一般的であり、茶葉を丸ごと日常的に食べる習慣はほとんどありません。一方、抹茶は茶葉を粉末状にしたもので、お湯に溶かして飲んだり、お菓子や料理の生地に混ぜ込むと茶葉の栄養をそのまま取り込めます。大さじ1杯(約6g)、小さじ1杯(約2g)という使いやすい単位で日常に取り入れられる点で、他の茶葉とは異なる現実的な選択肢といえます。マンガンについては、今回参照した日本食品標準成分表(八訂)に抹茶(茶葉)のマンガン収載値がなく(データなし)、具体値の記載は控えます。なお、抹茶もビタミンKを多く含む食品のため、ワーファリン(抗凝固薬)を服用中の方は摂取量の変動に注意し、医師・薬剤師に相談してください。

まとめ――数値の「単位」を確かめてから読む

「ビタミンKが多い食品」のランキングを眺めると、上位は緑茶の茶葉で埋まっています。しかし、その数値は「茶葉100g」という現実にはほぼ存在しない摂取量を前提にしています。茶葉ごと摂ろうとすればマンガンの摂取が増え、浸出液として飲むだけではビタミンKをそれほど摂れません。この二つの事情が、このランキングの読み方の要点です。

日常でビタミンKを意識するなら、茶葉を丸ごと使える抹茶を料理やお菓子に活用するか、ほしのりを食卓の一品として取り入れるのが現実的な方法です。ビタミンKを多く含む食品を摂る際は冒頭の注意事項もあわせてご確認ください(特にワーファリン服用中の方は医師・薬剤師にご相談ください)。栄養データは数値そのものより、「どんな状態の食品の、何gあたりの値か」を確かめてから読むことが、食品選びの第一歩になります。

※本記事の数値は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準2025に基づきます。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。