著者の所属・活動拠点の国は、ブラジル、ペルーです。

掲載誌:Meat Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

肉製品の香りや栄養としての性質は、加熱調理や、体内で消化される過程によって変化します。一方で、キノコ由来の素材を肉製品に加えたときにこれらがどう変わるかは、よく分かっていませんでした。

そこで研究チームは、食用キノコのヒラタケ(学名プレウロトゥス・オストレアトゥス)から得た抽出物に注目しました。調べたのは、牛肉バーガーに加えたときの香り成分の変化と、消化の過程で遊離アミノ酸がどれだけ吸収されうる状態で放出されるかです。この「消化後に吸収されうる状態になる割合」を、英語でバイオアクセシビリティと呼び、日本語では「生体到達性」などと訳されます。これは、実際に吸収されて体内で利用される割合(バイオアベイラビリティ)とは区別される概念です。

何をどのように調べたか

著者らは4種類の牛肉バーガーを比べました。何も加えない対照、食品添加物のエリソルビン酸ナトリウムを0.01%加えたもの、ヒラタケの傘の抽出物を0.5%加えたもの、柄の抽出物を0.5%加えたものです。

調理したバーガーを、胃や腸での消化を試験管内で模擬する方法(in vitro消化)で処理しました。そのうえで、香りのもとになる揮発性化合物と、たんぱく質の構成要素がばらばらになった遊離アミノ酸を、それぞれ専用の分析機器で測定しました。

主な結果

加えた素材の違いは、調理後バーガーの香り成分の組成と遊離アミノ酸の組成の両方に統計的に意味のある差をもたらしました。遊離アミノ酸については、腸での消化を模擬した段階の試料でも差が見られました。

特に傘の抽出物を加えたバーガーでは、うま味に関わるアミノ酸であるアスパラギン酸とグルタミン酸の合計量が、調理後の段階で100gあたり18.1mgとなりました。比較の値は9.7mgで、ほぼ2倍にあたります。また、キノコ抽出物を加えたバーガーでは、消化後に、体内で合成できない必須アミノ酸やうま味関連アミノ酸のいくつかが、より高い濃度で見られました。

一方、アミノ酸の組成全体の違いの多くを説明したのは、加えた素材ではなく消化のどの段階にあるかでした。消化段階と素材の組み合わせによる効果は統計的に有意ではありませんでした。つまり、素材によって消化の過程でのアミノ酸の移り変わり方が全体として異なる、という傾向は検出されませんでした。それでも、アミノ酸ごとの変化や保持の度合いを示す指標で見ると、アスパラギン酸やヒスチジンなどで素材による選択的な違いが見られたと報告されています。

香りの面では、キノコ抽出物によって、酸化に関連する揮発性成分のいくつかが減少しました。ヘキサナール、1-オクタノール、2-ペンチルフランなどです。

この研究が示すこと

著者らは、ヒラタケ抽出物、とりわけ傘の抽出物が、牛肉バーガーのアミノ酸の生体到達性を高め、香り成分の組成を変えたとまとめています。この結果は、ヒラタケ抽出物を持続可能な肉製品の素材として活用できる可能性を支持するものだと論文は位置づけています。

原著論文の著者・所属:Milagros Coaguila-Gonza(Universidade de São Paulo (USP), Escola Superior de Agricultura "Luiz de Queiroz" (ESALQ), Departamento de Ciência e Tecnologia de Alimentos (LCA), Piracicaba, SP, Brazil)、Erick Saldaña(Sensory Analysis and Consumer Study Group, Escuela Profesional de Ingeniería Agroindustrial, Universidad Nacional de Moquegua, Prolongación Calle Ancash s/n, Moquegua 18001, Peru)、Severino Matias de Alencar(Universidade de São Paulo (USP), Escola Superior de Agricultura "Luiz de Queiroz" (ESALQ), Departamento de Ciência e Tecnologia de Alimentos (LCA), Piracicaba, SP, Brazil)、Adna Prado Massarioli(Universidade de São Paulo (USP), Escola Superior de Agricultura "Luiz de Queiroz" (ESALQ), Departamento de Ciência e Tecnologia de Alimentos (LCA), Piracicaba, SP, Brazil)、Jennifer Alvarez(Universidade de São Paulo (USP), Escola Superior de Agricultura "Luiz de Queiroz" (ESALQ), Departamento de Ciência e Tecnologia de Alimentos (LCA), Piracicaba, SP, Brazil)、Maria Patricia Pereira Castro(Universidade de São Paulo (USP), Escola Superior de Agricultura "Luiz de Queiroz" (ESALQ), Departamento de Ciência e Tecnologia de Alimentos (LCA), Piracicaba, SP, Brazil)、Alan Giovanini de Oliveira Sartori(Universidade de São Paulo (USP), Escola Superior de Agricultura "Luiz de Queiroz" (ESALQ), Departamento de Ciência e Tecnologia de Alimentos (LCA), Piracicaba, SP, Brazil)、Carmen Josefina Contreras Castillo(Universidade de São Paulo (USP), Escola Superior de Agricultura "Luiz de Queiroz" (ESALQ), Departamento de Ciência e Tecnologia de Alimentos (LCA), Piracicaba, SP, Brazil. Electronic address: [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Milagros Coaguila-Gonza, Erick Saldaña, Severino Matias de Alencar, et al. Pleurotus ostreatus extracts enhance amino acid bioaccessibility and modulate the volatile profile of cooked beef burgers. Meat Science 2026-10-26. DOI: 10.1016/j.meatsci.2026.110244. 原著ライセンス:CC BY.