著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、カナダです。
掲載誌:Applied and Environmental Microbiology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
腸内細菌は、短鎖脂肪酸、ビタミンB群、トリプトファン(アミノ酸の一種)に由来する物質などを作り出します。抄録によると、これらはエネルギー代謝や腸のバリア機能、睡眠、免疫など、体のさまざまな働きを調節する重要な物質とされています。
腸内細菌叢に働きかける方法としては、生きた微生物を取り入れるプロバイオティクスや、すでにいる菌の栄養となるプレバイオティクスがよく知られています。これに対し「コバイオティクス」は、人の細胞と腸内細菌の両方の働きに同時に作用する化合物を指す、別のカテゴリーとして位置づけられています。
著者らは、コバイオティクスを含むサプリメントへの関心が高まっている一方で、配合製品全体が腸内細菌叢の構成や働きにどう影響するかは評価されてこなかったと指摘しています。そこで研究チームは、新たに開発された3種類の配合製品を対象に、この点を調べました。
何をどのように調べたか
対象は、マルチビタミンの「DM-02」、活力と集中を目的に配合された「AM-02」、睡眠を促す目的で配合された「PM-02」の3種類です。比較のため、何も加えない対照条件も用意されました。
実験は人の体内ではなく、体外で消化の過程を再現するモデルで行われました。まず胃や小腸など上部消化管での消化を模擬し、その消化物を、健康な成人6人の便から得た腸内細菌とともに、大腸内を模した環境で24時間発酵させました。この発酵には、研究チームが妥当性を確認済みとする「SIFR」と呼ばれる体外発酵技術が使われています。
測定項目は、酸性度を示すpH、短鎖脂肪酸とガスの生成量、遺伝子情報を非常に深く読み取って菌の種類や代謝の経路を調べる解析、そして発酵後の液に含まれる代謝物を網羅的に測定する解析です。いずれも対照条件と比較されました。
主な結果
3種類の配合はいずれも対照と比べてpHを3〜4%低下させ、短鎖脂肪酸の総量を9〜11%、その一種である酢酸を9〜12%増やしたと報告されています。AM-02とPM-02では、短鎖脂肪酸のうち酪酸が20%、プロピオン酸が7〜8%増加しました。一方で、ガスの生成量は増えていませんでした。
菌の構成については、各配合が短鎖脂肪酸やビタミンB群を作る特定の菌を有意に増やしていたとされています。働きの面では、AM-02でピルビン酸を酢酸や乳酸へ発酵させる2つの代謝経路が増え、PM-02ではトリプトファンを合成する2つの経路が増えました。PM-02ではさらに、利用可能なトリプトファンの量と、トリプトファンを作る菌の量も増えていました。
また3種類とも、腸内細菌に由来する代謝物の量を増やしており、著者らはこれを配合によって腸内細菌叢の働きが変化したことを示すものと解釈しています。
この研究が示すこと
この研究は、コバイオティクスを含む配合製品が、ガスを増やさずに腸内細菌の構成や代謝の働きを変えうることを、6人分の腸内細菌を用いた体外モデルで示したものです。人が実際に摂取した場合の効果を確かめたものではありませんが、著者らは今回の結果が、これらの配合を人で臨床的に評価するための仕組みの面での土台になると位置づけています。
原著論文の著者・所属:Brooke A. Napier(Seed Health, New York, New York, USA)、Bryan D. Merrill(Seed Health, New York, New York, USA)、Madeline Krieger(Seed Health, New York, New York, USA)、Dirk Gevers(Seed Health, New York, New York, USA)、Gregor Reid(Lawson Research Institute and Department of Microbiology and Immunology, Western University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Brooke A. Napier, Bryan D. Merrill, Madeline Krieger, et al. Formulations containing co-biotic compounds mediate microbiome function and composition without increased gas production in an ex vivo gastrointestinal model. Applied and Environmental Microbiology 2026-10-01. DOI: 10.1128/aem.01311-26. 原著ライセンス:CC BY.