著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Microbiology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

機能性ディスペプシアは、検査で病変が見つからないのに、食後のもたれ、げっぷ、食欲不振や吐き気、おなかの張りといった不快な症状が続く状態です。10代でもよく見られ、食事や成長、生活の質に影響します。原因は完全には解明されていませんが、腸と脳の連絡の乱れや、腸内細菌のバランスの乱れが関わると考えられています。

食物繊維は、人の消化酵素では分解されず、大腸で腸内細菌のえさになる成分です。研究チームは、10代の機能性ディスペプシアで、決まった配合の食物繊維を摂取する介入試験と、腸内細菌の詳しい解析を組み合わせた研究が少ないと指摘しています。そこで、本格的な大規模試験の準備段階にあたる予備的な試験(パイロット試験)を行いました。複合食物繊維を摂取したときの腸内細菌叢の多様性と構成、反応した細菌の種類、症状改善の傾向を探索的に観察することが目的です。

どのように調べたか

対象は、国際的な診断基準(ローマIV基準)で機能性ディスペプシアと評価された10〜19歳です。120人を選考し、条件を満たした34人を2群に無作為に分けました。直近3か月に抗菌薬やプロバイオティクスなどを使った人、ほかの消化器の病気がある人などは除外しています。

一方の群は、ポリデキストロース、イヌリン、難消化性デキストリンを組み合わせた複合食物繊維製品を1日15グラム、28日間摂取しました。もう一方の群は、見た目とエネルギー量が同じマルトデキストリン(偽薬)を摂取しました。参加者も研究者も、どちらを摂っているか分からない二重盲検で実施しています。途中で2人が除外され、最終的に32人(食物繊維群15人、偽薬群17人)を分析しました。

症状は、研修を受けた臨床医が患者の訴えをもとに、食後のもたれ、げっぷ、食欲不振・吐き気、おなかの張りの4項目を4段階で評価しました。腸内細菌は、介入終了時に集めた便を使い、細菌がもつ16S rRNA遺伝子を読み取る方法で、どの細菌がどれくらいの割合でいるかを調べました。

主な結果

症状が改善した人の割合は、食物繊維群が66.7%(15人中10人)、偽薬群が47.1%(17人中8人)でした。数値の上では食物繊維群が高かったものの、統計的に意味のある差には達しませんでした。著者らは、参加者が少なく、小さな差を検出する力が足りなかった可能性を挙げています。

腸内細菌叢には、より明確な違いが見られました。介入後の比較で、食物繊維群は偽薬群よりも、細菌の種類の豊富さやかたよりの少なさなどを示す4つの多様性指標がいずれも有意に高い値でした。細菌の系統関係と存在量を考慮した指標では、群集全体の構成にも群間の違いが認められました。一方、細菌がいるかいないかだけを見る指標では違いは見られませんでした。研究チームは、食物繊維が細菌の顔ぶれを大きく入れ替えるのではなく、もともといる細菌の割合を変えていると解釈しています。年齢、性別、BMIなどの影響はごく小さいと報告されています。

属のレベルでは、食物繊維群でアッカーマンシア、ロンボウツィア、ユーバクテリウム・コプロスタノリゲネス群が多く、ルミノコッカス・グナバス群とベイロネラが少ない結果でした。遺伝子情報から推定した代謝の働きでは、ステロイドやフラボノイドの合成に関わる経路が食物繊維群で多いと推定されました。ただし、これは計算による予測で、実際の代謝物は測っていません。

この研究が示すこと

この研究は、10代の機能性ディスペプシアで、複合食物繊維の摂取が腸内細菌叢の構成の違いと関連することを、偽薬と比べた二重盲検の小規模試験で示しました。症状の改善は数値上の傾向にとどまり、統計的な裏付けは得られていません。

著者らは、観察された細菌の変化が症状の軽減をもたらしたかどうかは確認できていないと強調しています。機能性ディスペプシアに関する過去の研究でも、細菌の変化の方向はばらつきがあり、今回の結果を単純に「良い変化」とは解釈できないとしています。この研究は予備的な観察として位置づけられ、著者らは、結論はより大きな規模の試験で確かめる必要があるとしています。

原著論文の著者・所属:Chengrui Yu(Shihezi University School of Public Health)、Jingsen Lv(Forevergen Biosciences Co, Ltd., Guangzhou, China)、Jianli Yang(Department of Radiology, Changji Branch of the First Affiliated Hospital of Xinjiang Medical University)、Yanping Zhang(Department of Clinical Laboratory, Changji Branch of the First Affiliated Hospital of Xinjiang Medical University; Department of Colorectal Surgery, Changji Branch of the First Affiliated Hospital of Xinjiang Medical University)、Yanping Zhang(Department of Clinical Laboratory, Changji Branch of the First Affiliated Hospital of Xinjiang Medical University; Department of Colorectal Surgery, Changji Branch of the First Affiliated Hospital of Xinjiang Medical University)、Ting Yang(Department of Pathology, Changji Branch of the First Affiliated Hospital of Xinjiang Medical University)、Yuan Wei(Department of Oncology, Changji Branch of the First Affiliated Hospital of Xinjiang Medical University)、Yuan Zhang(Department of Clinical Laboratory, Changji Branch of the First Affiliated Hospital of Xinjiang Medical University; Department of Colorectal Surgery, Changji Branch of the First Affiliated Hospital of Xinjiang Medical University)、Yuan Zhang(Department of Clinical Laboratory, Changji Branch of the First Affiliated Hospital of Xinjiang Medical University; Department of Colorectal Surgery, Changji Branch of the First Affiliated Hospital of Xinjiang Medical University)、Jiaying Li(Department of Teaching Research, Changji Branch of the First Affiliated Hospital of Xinjiang Medical University; School of Food Science and Technology, Shihezi University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Chengrui Yu, Jingsen Lv, Jianli Yang, et al. Composite fiber remodels gut microbiota and shows a trend of alleviating dyspepsia in adolescents with functional dyspepsia: a 16S rRNA pilot study. Frontiers in Microbiology 2026-08-10. DOI: 10.3389/fmicb.2026.1844725. 原著ライセンス:CC BY.