タツノオトシゴは、漢方などで珍重されてきた生き物ですが、養殖・加工の過程では体の一部しか使われず、残りは廃棄されることが少なくありません。もし捨てられている部位にも栄養的な価値があるとしたら、それを無駄にしてしまうのはもったいない話です。今回紹介する研究は、養殖されたタツノオトシゴの一種「Hippocampus abdominalis」を対象に、体の部位ごとに栄養成分やタンパク質の特徴がどう違うのかを調べたものです。

研究でわかったこと

研究チームは、養殖されたHippocampus abdominalis合計90個体を、頭部・体部(胴体と尾を含む)・内臓の3つの部位に分けて解剖しました。それぞれの部位について、独立した3つのサンプル(生物学的反復、n=3)で栄養成分やタンパク質の組成を測定しています。

その結果、まず内臓については、加工の過程でしばしば廃棄されてしまう部位であるにもかかわらず、必須アミノ酸のバランスが最も整っており、タンパク質の質を示す指標も最も高かったと報告されています。一方、体部(胴体・尾)は構造を支えるタンパク質やコラーゲンを豊富に含んでいたとされます。また頭部には、マグネシウムや亜鉛といったミネラルが多く含まれるほか、神経の働きや視覚に関わるタンパク質も多く見られたということです。

これらの結果から、タツノオトシゴの体の部位ごとに、それぞれ異なる機能的な特徴があることが示唆されています。研究チームは、こうした部位ごとの違いが、これまで廃棄されがちだった副産物を価値あるものとして活用するための分子レベルの根拠になり、持続可能な養殖の実践にも実用的な手がかりを与えるものだとしています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、あくまで一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。今回の要旨からは、対象がHippocampus abdominalisという特定の種の養殖個体であることが読み取れますが、他の種や天然個体、あるいは異なる飼育環境でも同様の傾向が見られるかどうかは、この要旨だけでは分かりません。また、内臓や頭部に含まれる成分が実際にヒトの健康にどのような影響を与えるかについては、この研究では直接調べられていない点にも注意が必要です。

まとめ

今回の研究は、養殖タツノオトシゴの頭部・体部・内臓という3つの部位について、栄養やタンパク質の特徴を比較したものです。内臓は必須アミノ酸のバランスとタンパク質の質に優れ、体部はコラーゲンなどの構造タンパク質に富み、頭部はミネラルや神経・視覚関連のタンパク質を多く含むという、部位ごとの特徴が示されました。これまで廃棄物として扱われがちだった部位にも価値がある可能性を示す研究として、水産資源の有効活用を考えるうえで興味深い知見と言えそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:タツノオトシゴ(Hippocampus abdominalis)各部位の栄養・タンパク質プロファイリング:副産物の高付加価値利用(フロンティアーズ・イン・マリンサイエンス・2026年07月)