著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Food Research International Translational Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

見過ごされてきた穀物を活かすために

食料の安定確保、栄養の質の向上、環境負荷の軽減のために、世界の食料システムには変革が求められています。この論文の著者らは、その手がかりとして、主要穀物ほど広く使われていない「マイナー穀類(雑穀)」と、植物学上は穀物ではないものの穀物のように食べられる「擬穀類」に注目しています。

著者らによると、これらの作物は栄養が豊富で、機能性の面でも期待でき、さまざまな栽培環境に適応できることから、有望な食品原料と考えられるようになっています。一方で十分に活用されていない大きな理由は、加工のしにくさといった技術的な制約にあるといいます。この論文は、そうした制約を乗り越える方法として「熱可塑性押出加工(エクストルージョン)」に着目し、雑穀や擬穀類への応用についての知見を総合的に整理した総説です。

押出加工で何が起きるのかを整理

押出加工とは、原料に熱と圧力を加えながら練り混ぜ、機械から押し出して成形する加工法です。スナック菓子やシリアル食品などの製造に使われる技術として知られています。

著者らは、この加工によって雑穀や擬穀類に生じる物理化学的、技術的、栄養的な変化をまとめています。特に重視しているのは、デンプン、タンパク質、脂質、食物繊維といった成分の構造がどう変わるかという点です。さらに、これらの成分同士が結びついて大きな分子の複合体ができることや、それが食品の機能的な性質や消化のされやすさにどう影響するかについても取り上げています。

総説が示した主な内容

著者らは、押出加工を、雑穀や擬穀類を使った製品の栄養価、機能的な性質、安全性を高めることができる、効果的で応用範囲の広い技術だとまとめています。

報告されている望ましい変化としては、消化のされやすさの向上、栄養の吸収を妨げることがある「抗栄養因子」の低減、そしてそのまま食べられる保存性の良い食品を、目的に合った加工特性をもたせて作れることが挙げられています。

また著者らは、押出加工が十分に活用されていない作物の価値を高めることにつながり、持続可能性、食の多様化、新しい機能性食品の開発にも貢献しうると述べています。一方で、加工条件の最適化や、体に有用な成分(生理活性成分)をできるだけ失わずに残す方法については、さらなる研究が必要だとしています。

この総説が伝えること

この総説は、雑穀や擬穀類が持つ栄養面での可能性と、それを妨げてきた加工上の課題を結びつけ、押出加工がその橋渡し役になりうることを整理して示しています。あまり使われてこなかった作物を食品に取り入れていくうえで、加工技術の工夫が重要な鍵になるという視点を伝える内容です。

原著論文の著者・所属:Hugo José Martins Carvalho(Department of Food Science and Nutrition, Faculty of Food Engineering, Universidade Estadual de Campinas, 13083-862 Campinas, SP, Brazil)、Ana Carolina Souza Soares(Department of Food Science and Nutrition, Faculty of Food Engineering, Universidade Estadual de Campinas, 13083-862 Campinas, SP, Brazil)、Maria Teresa Pedrosa Silva Clerici(Department of Food Science and Nutrition, Faculty of Food Engineering, Universidade Estadual de Campinas, 13083-862 Campinas, SP, Brazil)、Bruna Lago Tagliapietra(Department of Food and Nutrition, Federal University of Santa Maria, Palmeira das Missões Campus, 98300-000 Palmeira das Missões, RS, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hugo José Martins Carvalho, Ana Carolina Souza Soares, Maria Teresa Pedrosa Silva Clerici, et al. Thermoplastic extrusion of minor cereals and pseudocereals: technological and nutritional properties, interactions, and applications. Food Research International Translational Research 2026-08-23. DOI: 10.1016/j.frintr.2026.100005. 原著ライセンス:CC BY.