著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Manajemen dan Agribisnis
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
新しい健康志向のお菓子は受け入れられるか
インドネシアでは、味や手軽さだけでなく、食物繊維やたんぱく質などの付加価値を求めて食品を選ぶ消費者が増えています。その中で注目されているのが、小麦に含まれるたんぱく質「グルテン」を含まないグルテンフリー食品です。セリアック病や小麦アレルギーなど医療上の理由に加え、生活スタイルとして選ぶ人もいます。
今回の研究で取り上げられたのは、「モカフ粉」と微細藻類を使ったクッキーです。モカフ粉はキャッサバを乳酸菌で発酵させた現地産の粉で、グルテンを含みません。微細藻類はスピルリナやクロレラといった小さな藻類で、たんぱく質やビタミン、ミネラルを多く含むとされています。
一方で、微細藻類を使った食品は、なじみのない味や色、一般的なお菓子より高い価格、消費者の知識不足などから、受け入れが進みにくいと指摘されています。そこで研究チームは、このクッキーに消費者がどの程度の価格を支払ってよいと考えるか(支払意思額)を推定しました。あわせて、その支払意思額に個人の考え方や周囲の人の影響がどう関わっているかを調べました。
試食してもらったうえでの調査
調査の対象は、東ジャワ州マラン都市圏に住む18歳以上の消費者220人です。参加条件は、新しい健康食品を少なくとも一つ試したことがあることでした。参加者は実際にクッキーを試食してから、「まったくそう思わない」から「とてもそう思う」までの5段階で答える質問票に回答しました。回答者には学生が多く、全体の81.8%を占めました。年齢は18〜22歳が69.1%でした。
支払意思額の推定には、仮想的な状況で支払ってよい金額を尋ねる「仮想評価法」が使われました。研究チームは製品の原価をもとに複数の価格水準を用意して回答者に提示し、それぞれの価格を選んだ人の割合で重み付けして平均額を求めました。
さらに、健康への関心、五感で感じた製品体験、栄養表示などで望ましい選択をそっと後押しする「ナッジ」、価格に見合う価値があるという感覚、自分は無理なく買えるという感覚、周囲の人からの影響を取り上げました。これらが製品への態度、購入意向、支払意思額とどうつながっているかを、多数の要因の関係をまとめて分析できる統計手法(構造方程式モデリング)で検証しました。この枠組みは、人の行動を態度や周囲の期待、行動のしやすさから説明する「計画的行動理論」を広げたものです。
平均は約3万ルピア、購入意向と買いやすさが鍵
著者らによると、平均の支払意思額は3万213ルピアでした。提示された3つの価格のうち、2万9000ルピアを選んだ人が41.82%、3万4800ルピアが39.55%で、最も低い2万3200ルピアを選んだ人は18.64%にとどまりました。研究チームは、平均額が最も低い提示価格を上回ったことから、比較的高い支払意思が示されたと報告しています。また、2万9000〜3万4800ルピアの価格帯が中心になっていたとしています。
分析モデルの中で、支払意思額と最も強く直接結びついていたのは購入意向でした。その購入意向と最も強く結びついていたのは、「自分はこの製品を手に入れ、買うことができる」という感覚で、モデル全体の中でも最も強い関係だったと報告されています。この感覚は、支払意思額とも直接結びついていました。
製品への好意的な態度に対しては、取り上げた個人の要因がいずれも正の関連を示しました。中でも、価格に見合う価値があるという感覚とナッジの関連が比較的強いものでした。こうした要因は、好意的な態度から購入意向へ、さらに支払意思額へと段階的につながる経路でも、統計的に意味のある関連を示しました。
周囲の人の影響も、態度や支払意思額と正の関連を示しました。態度や購入意向を介した間接的な経路でも、支払意思額との関連が確認されています。一方、周囲の影響と購入意向との直接の関連は小さく、研究で設定した基準では「わずかに有意」という位置づけでした。
研究が示すこと
この研究は、なじみの薄い新しい機能性食品を実際に試食した消費者の多くが、提示された3つの価格のうち中位から上位の価格を選んだことを報告しています。その支払意思は、製品を好ましいと思うかどうかだけで説明されるものではありませんでした。価値があるという実感や、無理なく買えるという感覚、そして周囲の人の評価が、態度や購入意向を通じて重なり合う形で関わっていたと著者らはまとめています。
ただし、回答者の多くはマラン都市圏の若い学生でした。結果は、この調査の参加者における要因どうしの関連を分析したものとして読む必要があります。
原著論文の著者・所属:Hegi Aulia Azzahra Putri(Magister Program of Agribusiness, Department of Sosial Ekonomi , Faculty Agriculture, Universitas Brawijaya)、Agustina Shinta Hartati Wahyuningtyas(Departement of Agricultural Social Economics, Faculty of Agriculture, Universitas Brawijaya)、Rachman Hartono(Departement of Agricultural Social Economics, Faculty of Agriculture, Universitas Brawijaya)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hegi Aulia Azzahra Putri, Agustina Shinta Hartati Wahyuningtyas, Rachman Hartono. Consumer Willingness To Pay Model For Gluten Free and Microalgae Based Cookies. Jurnal Manajemen dan Agribisnis 2026-07-31. DOI: 10.17358/jma.23.2.278. 原著ライセンス:CC BY.