日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

掲載誌:Agricultural and Resource Economics Review

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:国産食材は数ある「食の価値」の中でどこに位置するのか

共働き世帯の増加や時間的な余裕の減少などを背景に、家庭で調理する食事から、持ち帰り弁当やおにぎり、総菜といった「中食」、そして「外食」へと食生活の重心が移ってきました。著者らは、2020年時点で中食が家計の食料支出の13.8%、外食が20.6%を占め、合わせて食費全体の3分の1を超えると指摘しています。

一方で、消費者が食品を選ぶときに何を重んじるかという研究の多くは、家庭での食事や特定の商品カテゴリーを対象にしてきました。日本では国産農産物の利用拡大や食料自給率の向上が政策課題であり、米や酒類、水産物、畜産物などで国産を好む傾向(いわゆる「国内バイアス」)が報告されてきましたが、中食や外食の場面で、国産食材が味・価格・安全性・栄養といった他の価値と比べてどの程度重視されるのかについては、実証的な知見が限られていました。

そこで研究チームは、中食と外食という二つの場面について、消費者が食に対して抱く評価基準の優先順位を記述的に明らかにし、その中で国産食材がどこに位置づけられるのかを調べることを目的としました。

調べ方:11の価値を「最も重要」「最も重要でない」で比べてもらう

著者らが用いたのは、ベスト・ワースト・スケーリング(BWS)という手法です。これは、いくつかの選択肢を一度に示し、その中から「最も重要なもの」と「最も重要でないもの」を一つずつ選んでもらう作業を繰り返す方法です。評価尺度に点数をつける方式と違い、人によって点のつけ方の癖が出にくく、相対的な重要度の順位がはっきり読み取れるとされています。

対象とした価値は、国産であること、価格、見た目、栄養、味、安全性、自然さ(遺伝子組換えやホルモン処理などの現代的な食品技術を使っていないこと)、習慣、利便性、目新しさ、公正さ(生産者・加工業者・小売業者が価格を公平に分け合っていること)の11項目です。これらは、食品一般にあてはまる広い評価基準として先行研究で提案されてきた枠組みに基づいています。なお著者らは、日本では認知度が低いという理由で動物福祉を、グローバル化や食の多様化で重要性が薄れているとして伝統を、項目から除いています。

調査は2024年10月にインターネットで実施され、全国の20〜69歳の居住者3,000人を都道府県・性別・年齢の人口構成に合わせて抽出しました。回答者は家庭の食事・中食・外食のいずれかの場面に振り分けられ、過去2年間に自分で代金を払ってその形態の食事をとったことがある人に絞った結果、分析対象は中食786人、外食771人となりました。さらに著者らは、個人ごとの点数をもとに潜在クラス分析という統計手法を用い、優先順位の違いによって消費者をいくつかのグループに分けています。

主な結果:上位は味・価格・安全性、国産食材は5位

中食でも外食でも、最も重視されたのは味で、次いで価格、安全性という順序でした。この上位三つは、日本の消費者を対象とした先行研究とも整合する結果だと著者らは述べています。

国産食材の重要度を示す指標は、中食で0.342、外食で0.316となり、どちらの場面でも11項目中5位でした。著者らはこれを、国産であることは肯定的に評価されてはいるものの、味・価格・安全性・栄養といった中心的な要素ほどは重視されていない、と説明しています。

注目すべきは、二つの場面で順位のパターンがきわめてよく似ていた点です。中食と外食は、購入や消費の過程、価格帯、サービスの有無、利便性重視か経験重視かといった動機の面で異なるにもかかわらず、価値の優先順位は大きく変わりませんでした。著者らは、食に関する価値の序列には相当の安定性があることを示唆するものだとしています。性別や所得で分けた場合も、順位は概ね一致していました。

潜在クラス分析では、どちらの場面でも四つのグループが見いだされました。価格を圧倒的に重視する「価格志向」層が最も大きく(中食では43.3%)、味や見た目を重んじる「快楽志向」層がそれに次ぐ規模(中食では30.8%)でした。これに加えて、安全性と自然さを強く重視する「健康・安全重視」層(中食では18.7%)、公正さや目新しさ、国産食材といった社会的な価値を相対的に重く見る「社会的影響重視」層(中食では7.2%)という、より小規模なグループが確認されています。これらのグループは、性別・年齢・所得や国産食材に対する印象において系統的な違いがあり、特に外食では利用頻度にも違いが見られました。なお著者らは、この分析は個人ごとに集計した点数に基づく記述的な分類であり、構造的なモデルとして解釈すべきものではないと断っています。

この研究が示すこと

回答者の多くは国産食材に対して好意的な印象を持っており、「安全・安心」「高品質」と答えた人はそれぞれ半数を超えていました。それでも、実際に中食や外食を選ぶ場面で国産であることが置かれる位置は、味・価格・安全性に次ぐ二次的なものにとどまっていました。

著者らは、この結果を、国産食材の位置づけを食の価値の序列の中で捉えるための基準となる知見だと位置づけています。そして、国産であることが味や安全性といった具体的な利点と信頼できるかたちで結びつけられない限り、その重要性は副次的なものにとどまる、という点を指摘しています。日本の消費者が外食・中食において何を基準に選んでいるのかを、共通の物差しで二つの場面にわたって描き出した点に、この研究の意義があります。

著者:Guanjun Li(Kochi University)、Kohei Yagi(Kobe University)、Ting Chen(Kobe University)、Gioacchino Pappalardo(University of Catania)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Guanjun Li, Kohei Yagi, Ting Chen, et al. Consumer preferences for domestically produced ingredients in Japan’s ready-to-eat meals and dining out: a best–worst scaling analysis. Agricultural and Resource Economics Review 2026-10-02. DOI: 10.1017/age.2026.10041. 原著ライセンス:CC BY.