著者の所属・活動拠点の国は、ポーランド、アルバニアです。

掲載誌:Microorganisms

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:牛乳向けの菌は雑穀飲料でどう働くか

牛乳の代わりとなる植物性飲料は、乳糖不耐症や牛乳たんぱく質アレルギー、環境への関心などを背景に広く研究されています。ただし著者らは、牛乳を穀物の液体に置き換えるのは単純ではないと指摘しています。穀物飲料はたんぱく質が少なく、発酵乳の食感を支えるカゼインの網目構造もありません。保存中に沈殿したり、液体が分離したりしやすいという課題もあります。

研究チームが注目したのは、干ばつに強くグルテンを含まない雑穀のキビです。発酵に使ったのは、乳製品向けの2種類の市販スターター(発酵の種菌)です。1つはヨーグルトに使われるストレプトコッカス・サーモフィルスとラクトバチルス・ブルガリクスの組み合わせです。もう1つは、スイスタイプのチーズに使われるプロピオン酸菌(プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒイ)です。牛乳でうまく働く菌が穀物でも同じように働くとは限らないため、著者らは実際に発酵と保存を行い、その違いを調べました。

何をどのように調べたか

研究チームは、市販のキビ飲料にキビ粉を0〜3%加えた液を用意しました。これをヨーグルト菌だけ、プロピオン酸菌だけ、両方を合わせた混合の3通りで、37℃で発酵させました。ヨーグルト菌を含む条件は6時間、プロピオン酸菌だけの条件は18時間発酵させています。その後、飲料を冷蔵で28日間保存しました。

保存中には、次の項目を時期を追って測定しました。酸性度を示すpH、培養で数えた生きた菌の数、器具で測った硬さと付着力、遠心分離したときに分かれ出る液体の割合、そして一部の糖の残量です。菌数は、1mLあたりの菌数を10の何乗かで表す「log CFU/mL」で示されています。たとえば7なら、1mLあたり約1000万個に相当します。

主な結果:菌の組み合わせと粉の量で異なる変化

ヨーグルト菌を含む条件では、pHの低下の大部分が最初の3時間に起こりました。発酵終了時のpHは、ヨーグルト菌だけで約4.4、混合で約4.1〜4.2でした。プロピオン酸菌だけの条件では酸性化が遅く、18時間後に約4.2に達しました。冷蔵保存中、混合の飲料はpHがおおむね4.1〜4.2で推移しました。

プロピオン酸菌の数は、28日目に混合の条件で6.1〜6.7、プロピオン酸菌だけの条件で5.2〜5.7でした。混合のほうが最終的な菌数は多くなりました。ただし著者らは、最終的な菌数が多いことが、保存中の生き残りの割合が高いことを意味するわけではないと述べています。たとえば粉を加えない条件では、混合のほうが菌数の減少幅はわずかに大きくなりました。一方、ヨーグルト菌のうちストレプトコッカスの菌数は、28日目にはすべての条件で発酵直後より低くなっていました。

キビ粉を加えると、ヨーグルト菌を含む条件で飲料が硬くなりました。粉3%の場合、発酵直後の硬さはヨーグルト菌だけで1.6N、混合で1.7Nでした。粉なしでは0.2Nです。粉を加えないと、遠心分離で分かれ出る液体の割合は28日目に94〜95%に達しました。粉を加えると、この割合はおおむね下がりました。粉3%での28日目の値は、ヨーグルト菌だけが48.3%と最も低く、混合では57.8%、プロピオン酸菌だけでは68.9%でした。著者らは、この値は強い遠心力をかけたときの分離であり、冷蔵容器の中で同じ割合が自然に分離するという意味ではないと注意しています。

糖については、ショ糖がおおむね保存中に減少し、ラフィノースもいくつかの条件で減少しました。ただし低濃度の値は検量範囲の外で推定したもので、半定量的な情報にとどまると説明されています。どの菌が糖を使ったのかも特定されていません。

研究から分かること

著者らは、菌の組み合わせは主に酸性化の速さと菌数に関係し、キビ粉の量は主に硬さと液体の分離に関係していたとまとめています。プロピオン酸菌の最終菌数が最も多かった条件と、液体の分離が最も少なかった条件は別でした。そのため、すべての性質を同時に最良にする配合はなく、配合には一長一短があると結論づけています。

論文は、今回の結果が菌どうしの相乗効果やプロバイオティクスとしての効果を示すものではないと明記しています。独立した製造実験が2回にとどまることも、解釈上の制約として挙げています。飲料や発酵食品としての適性を判断するには、粘度、自然な分離、風味の評価などが必要とされています。それでも本研究は、キビ飲料の発酵でどの条件が何に影響するのかを整理した、基礎的な比較として位置づけられます。

原著論文の著者・所属:Małgorzata Ziarno(Department of Food Technology and Assessment, Faculty of Bioeconomy and Food Systems, Warsaw University of Life Sciences—SGGW (WULS–SGGW), Nowoursynowska 159c St., 02-776 Warsaw, Poland)、Dorota Zaręba(Professor E. Pijanowski Catering School Complex in Warsaw, 04-110 Warsaw, Poland)、Rozeta Hasalliu(Department of Food Science and Biotechnology, Faculty of Food Biotechnology, Agricultural University of Tirana, Rruga “Pajsi Vodica”, Kodër-Kamëz, 1029 Tirana, Albania)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Małgorzata Ziarno, Dorota Zaręba, Rozeta Hasalliu. Fermentation and Refrigerated Storage of Millet-Based Beverages with Yoghurt and Propionic Acid Bacteria. Microorganisms 2026-10-08. DOI: 10.3390/microorganisms14102288. 原著ライセンス:CC BY.