著者の所属・活動拠点の国は、ポルトガル、スペインです。

掲載誌:International Journal of Biological Macromolecules

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

コーヒーには、食物繊維として働く多糖類(糖が多数つながった大きな分子)が含まれています。研究チームは、焙煎や豆の挽き方によってこうした食物繊維の量が変わり、腸の内部(腸管内腔)でのコレステロールの溶けやすさなどへの働きも変わる可能性に着目しました。

そこで著者らは、焙煎の度合いと挽き方の違いが、コーヒーに含まれる多糖類の構造と、そこから生じるメラノイジンにどう影響するかを調べることにしました。メラノイジンは、焙煎中に生じる褐色の高分子成分です。あわせて、これらの成分が胆汁酸塩のミセルによるコレステロールの溶解にどう影響するかも検討しました。ミセルとは、胆汁酸などが集まってできる小さな粒子で、腸内で脂質を溶かし込む役割を持ちます。

調べたこと

研究チームは、浅煎りと深煎りのコーヒー豆を、細挽きと粗挽きの2通りに挽き分けました。それぞれから淹れたコーヒー液について、糖類の組成を分析しました。

さらに、コーヒー液から分子量の大きい成分を分けて取り出しました。取り出したのは、多糖類のガラクトマンナンとアラビノガラクタン、そしてメラノイジンを主とする画分です。これらの成分の組成も調べました。

コレステロールの溶けやすさへの影響は、腸管内腔を模した試験管内(in vitro)のモデルで評価しました。このモデルには、胆汁酸の一種であるグリコデオキシコール酸のミセルが含まれます。測定には、炭素13を対象とした核磁気共鳴(NMR)法による定量分析を用いました。

主な結果

論文によると、焙煎によってアラビノガラクタンの枝分かれ部分が外れる変化(脱分岐)が進みました。また、細かく挽くほど、コーヒー液に溶け出す高分子成分が増えました。

試験管内モデルでは、コーヒー液がコレステロールの溶けやすさを36〜50%低下させたと報告されています。分けた成分の中で最も効果が大きかったのはメラノイジンを多く含む画分で、低下幅は35〜45%でした。次いでガラクトマンナンを多く含む画分が18〜30%、アラビノガラクタンを多く含む画分が16〜29%でした。

一方、コレステロールの溶けやすさの低下と、胆汁酸の減少の度合いには相関が見られませんでした。このことから著者らは、成分が胆汁酸塩を取り込んで減らすこと以外の仕組みも関わっている可能性を示唆しています。

研究が示すこと

この研究は、焙煎がアラビノガラクタンの構造を変え、細挽きがコーヒー液に溶け出す高分子成分を増やすなど、身近な加工条件がコーヒーの多糖類に影響することを報告しました。また、試験管内のモデルでは、成分の種類によってコレステロールの溶けやすさへの影響の大きさが異なることも示されています。著者らは、これらの知見を、炭水化物の構造と働きの関係を考えるうえで、炭水化物を用いたコレステロール管理の取り組みに関わるものと位置づけています。

原著論文の著者・所属:Fernanda Machado(LAQV-REQUIMTE, Chemistry Department, University of Aveiro, 3810-193, Aveiro, Portugal)、María Dolores del Castillo(Institute of Food Science Research (CIAL) (CSIC-UAM), Calle Nicolás Cabrera, Madrid, Spain)、Manuel A. Coimbra(LAQV-REQUIMTE, Chemistry Department, University of Aveiro, 3810-193, Aveiro, Portugal)、Filipe Coreta-Gomes(LAQV-REQUIMTE, Chemistry Department, University of Aveiro, 3810-193, Aveiro, Portugal; Coimbra Chemistry Centre - Institute of Molecular Sciences (CQC-IMS), University of Coimbra, 3004-535, Coimbra, Portugal. Electronic address: [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fernanda Machado, María Dolores del Castillo, Manuel A. Coimbra, et al. Impact of roasting and grinding on coffee polysaccharide structure and derived melanoidins: Influence on cholesterol solubilization by bile salt micelles. International Journal of Biological Macromolecules 2026-08-13. DOI: 10.1016/j.ijbiomac.2026.154039. 原著ライセンス:CC BY.