著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:LWT
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
コーヒーの果肉(コーヒーパルプ)は、コーヒー豆を取り出す際に残る副産物です。研究チームは、この副産物をパン作りの材料として活用できるかを調べました。
論文の抄録によると、著者らはコーヒーパルプ由来の2種類の素材に注目しました。1つは、酸を使ってコーヒーパルプから取り出した多糖類(AEP)です。もう1つは、コーヒーパルプに蒸気爆砕という処理を施したもの(SE-CP)です。蒸気爆砕は、高圧の蒸気で処理したあと一気に圧力を下げて素材をほぐす方法です。研究チームは、これらがパンの機能性素材として使えるかを評価しました。
何を調べたか
研究チームは、モデルとなるパン生地にAEPとSE-CPをさまざまな割合で加えました。そのうえで、生地の吸水量、こね上がりまでの時間、生地の安定性などを測定しました。
さらに、生地の中で水がどのような状態にあるかも調べました。用いたのは、低磁場核磁気共鳴(LF-NMR)とX線回折(XRD)という2つの分析手法です。LF-NMRでは、水が自由に動ける状態か、成分と結び付いて動きにくい状態かが分かります。XRDでは、成分の結晶構造の割合が分かります。あわせて、生地の粘りや弾力といった性質(レオロジー)を調べ、実際に焼いたパンの硬さや体積も評価しました。
主な結果
抄録によると、どちらの素材を加えた場合も、生地の吸水量、こね上がりまでの時間、安定性が有意に増えました。分析の結果、どちらの素材も生地中の自由な水の動きを抑えていました。水はより動きにくく、しっかり結び付いた状態へ移っていたと報告されています。また、水とたんぱく質の相互作用が強まり、相対的な結晶化度も高まっていました。生地の性質の面では、SE-CPは物理的な充填材のように働いていたとされています。
焼成した結果は、素材ごとに異なりました。AEPを1キログラムあたり30〜50グラム加えた場合、パンの体積の目安である比容積は保たれ、パンの硬さは有意に下がりました。
SE-CPを1キログラムあたり200グラム以下の適度な量で加えた場合、生地の安定性と粘弾性が高まりました。焼成中に失われる重さ(焼減)も少なくなり、焼いている間に水分が保たれやすくなったことが示されました。一方、200グラムを超えて加えると、生地の骨格となるグルテンの網目構造が薄まって壊れました。その結果、パンの体積や食感に悪い影響が出たと報告されています。
研究が示すこと
著者らは、AEPとSE-CPがそれぞれ異なる働きを持ち、互いに補い合う関係にあると結論づけています。AEPは、パンの体積を保ったまま硬さを下げていました。SE-CPは、適度な量であれば生地の安定性や保水性を高めていましたが、加えすぎると逆効果でした。この研究は、コーヒーの副産物をパンの品質向上に活用する持続可能な方法の一つとして、その可能性を示しています。
原著論文の著者・所属:Chunyan Zhang(College of Food Science and Technology, Yunnan Agriculture University, Kunming, 650500, People’s Republic of China; Yunnan College of Modern Coffee Industry, Yunnan Agriculture University, Kunming 650500, People’s Republic of China)、Yu Wang(College of Food Science and Technology, Yunnan Agriculture University, Kunming, 650500, People’s Republic of China; Yunnan College of Modern Coffee Industry, Yunnan Agriculture University, Kunming 650500, People’s Republic of China)、Shan Nong(College of Food Science and Technology, Yunnan Agriculture University, Kunming, 650500, People’s Republic of China; Yunnan College of Modern Coffee Industry, Yunnan Agriculture University, Kunming 650500, People’s Republic of China)、Yanan Shi(College of Food Science and Technology, Yunnan Agriculture University, Kunming, 650500, People’s Republic of China)、Xiaohui Liu(College of Tea Science, Yunnan Agricultural University, Kunming 650500, People’s Republic of China)、Hong Li(College of Food Science and Technology, Yunnan Agriculture University, Kunming, 650500, People’s Republic of China; Yunnan College of Modern Coffee Industry, Yunnan Agriculture University, Kunming 650500, People’s Republic of China)、Danxia Shi(College of Food Science and Technology, Yunnan Agriculture University, Kunming, 650500, People’s Republic of China)、Wei Zhang(College of Food Science and Technology, Yunnan Agriculture University, Kunming, 650500, People’s Republic of China; Yunnan College of Modern Coffee Industry, Yunnan Agriculture University, Kunming 650500, People’s Republic of China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Chunyan Zhang, Yu Wang, Shan Nong, et al. Utilizing coffee pulp as an ingredient of dough: Influence of polysaccharide rich extract and steam explosion on dough properties and bread baking quality. LWT 2026-09-24. DOI: 10.1016/j.lwt.2026.119975. 原著ライセンス:CC BY.