著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。
掲載誌:Scientific Electronic Archives
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
捨てられてきた「コーヒーの殻」に注目
コーヒーを生産する過程では、果実から豆を取り出すときに大量の果皮(殻)が出ます。研究チームによると、この副産物を適切に処理せずに捨てると、土や水の有機物の負荷が増え、カフェインやタンニン、フェノール化合物と呼ばれる成分が環境に放出されるおそれがあります。高い濃度では水中の生き物や微生物の活動に悪影響を及ぼし得るとされています。
一方で、果皮には役に立つ成分も多く含まれています。著者らは、資源を捨てずに循環させる「循環型経済」の考え方から、コーヒー果皮の化学組成、生物に対する働き(生理活性)、技術的な利用法、安全性に関する既存の知見をまとめ、まだ分かっていない点を明らかにすることを目的としました。
既存の研究をどう集めたか
この論文は新たな実験を行ったものではなく、これまでに発表された研究を読み比べて整理する「ミニレビュー」です。研究チームは、Scopus、Web of Science、PubMed、SciELO、ScienceDirectといった学術文献データベースを検索し、補助的にGoogle Scholarも使いました。対象は2026年8月までに公開された、ポルトガル語・英語・スペイン語の文献です。
果皮、果肉、パーチメント(豆を包む薄い殻)、カスカラ(乾燥させた果皮)を区別できない研究は除外しました。テーマごとに内容を整理する物語的なレビューであり、複数研究の数値を統計的に統合する解析は行っていないと著者らは説明しています。
果皮の成分と広がる使い道
レビューによると、コーヒー果皮はセルロース、ヘミセルロース、リグニンといった植物の骨組みをつくる成分(リグノセルロース)や食物繊維を豊富に含み、たんぱく質やミネラル、多糖類も含まれます。紹介された研究の一つでは、食物繊維が乾燥重量の約65.8%を占めると報告されています。さらに、カフェイン、トリゴネリン、クロロゲン酸類、フラボノイドなどのフェノール化合物も含まれます。ただし、成分の量はコーヒーの種類、産地、加工方法、分析方法などによって変わるとされています。
こうした組成から、さまざまな用途が報告されています。乾燥した果皮は「カスカラ」としてお茶のような飲み物や発酵飲料に使われ、欧州連合では新規食品として認められています。その繊維をパンやビスケットに加える試みもあります。ほかにも、家畜の飼料、生分解性の材料や複合材料、色素や金属イオンなどを吸着して排水を浄化する素材、たい肥やバイオ炭(植物を蒸し焼きにした炭)、バイオガスやバイオエタノールなどの燃料への利用が挙げられています。著者らは、価値の高い成分から順に取り出し、残りを材料やエネルギーに回す「バイオリファイナリー」という一体的な利用法を特に有望なものとして位置づけています。
生理活性については、実験研究で抗酸化作用、抗菌作用、抗炎症作用が示されており、代謝への影響や抗ウイルス、抗寄生虫、抗がん作用の可能性も指摘されています。しかし著者らは、これらの多くが試験管内や細胞を使った研究段階の結果であり、単独の成分や別の素材で得られた結果をそのまま果皮の抽出物に当てはめることはできないと注意を促しています。
資源化に向けて残る課題
研究チームは、利用にあたっての注意点も挙げています。果皮に含まれるカフェインやタンニンは、量が多いと体への負担や栄養吸収の妨げになり得ます。かびの毒素や残留農薬、微生物による汚染の管理も必要です。また、加工せずにそのまま畑にまくと、これらの成分が植物の生育を妨げることがあるとされています。人を対象にした臨床研究が少なく、成分のばらつきも大きいため、現時点で効果を一般化することは難しいとしています。
著者らは、使う部位を正確に特定し、加工や抽出の方法を標準化したうえで、安全性評価や経済性・環境影響の評価を行えば、コーヒー果皮をごみではなく再生可能な原料として生かせる可能性があると結論づけています。この論文は、身近な飲み物の副産物が持つ潜在的な価値と、それを安全に活用するために確かめるべき点の両方を示しています。
原著論文の著者・所属:Nascimento, Andreza Vitória de Souza、Almeida, Letícia Marques de、da Silva, Ana Carine(Universidade Federal de Pernambuco)、Pereira, Arthur Van Lauter Albuquerque、Dos Santos Silva, Wagner Miguel(Universidade Federal de Pernambuco)、de Oliveira Moraes Miranda, Josué Filipe(Universidade Federal de Pernambuco)、de Oliveira Queirós, Maria Emanuelle(Universidade Federal de Pernambuco)、Ávila dos Anjos Santos, Carolina、Felix Freire da Silva, Arthur、Santa Clara Marques, Diego(Universidade Federal de Pernambuco)、da Cruz Filho, Iranildo José(Universidade Federal de Pernambuco)、Alves de Lima, Maria do Carmo
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nascimento, Andreza Vitória de Souza, Almeida, Letícia Marques de, da Silva, Ana Carine, et al. Casca do café como recurso sustentável: composição química, bioatividade e aplicações na economia circular. Scientific Electronic Archives 2026-08-24. DOI: . 原著ライセンス:CC BY.