著者の所属・活動拠点の国は、ペルー、ブラジルです。

掲載誌:Applied Food Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

多くの開発途上国では、栄養不足と過体重・肥満という正反対に見える問題が同時に存在し、公衆衛生上の負担となっています。著者らは、広く食べられている菓子類の配合を見直すことが、この課題への一つの手がかりになると考えました。

この研究では、さくさくとした食感のショートクッキーを対象に、発芽させたキヌアの粉(発芽キヌア粉)の配合と脂肪の削減を組み合わせた場合に、栄養成分、色や硬さなどの物理的な性質、抗酸化能、食べたときの感覚の移り変わり、そして消費者の好ましさがどう変わるかを調べています。

何を調べたか

研究チームは、発芽キヌア粉の配合割合を0%と20%の2段階、脂肪の削減率を0%、10%、20%の3段階とし、これらを組み合わせたクッキーを比較しました。

測定項目には、粗繊維や灰分(ミネラル分の目安)、水分、脂肪などの成分のほか、機器で測った色と食感、抗酸化能、総フェノール化合物量が含まれます。色は、明るさ(L*)、赤み(a*)、黄色み(b*)、色の鮮やかさ(彩度)、色合いを角度で示す色相角といった指標で評価されています。

味わいについては、TDS(感覚の時間的優位性)と呼ばれる方法が用いられました。これは、食べ始めてから食べ終わるまでの間に、各時点でどの感覚が最も目立っていたかを記録していく手法です。さらに、時間の経過に沿ってどの感覚が好ましさを高めたり下げたりするかを分析し、消費者による受容度の評価も行っています。

主な結果

発芽キヌア粉を加えると、粗繊維、灰分、水分、赤みと黄色み、彩度、抗酸化能が高まり、可溶性無窒素物(主に炭水化物にあたる成分区分)、機器で測った硬さと割れやすさ、明るさ、色相角は低下したと報告されています。

脂肪を減らすと、可溶性無窒素物、硬さ、割れやすさ、焼成後の重量、総フェノール化合物量が増え、粗脂肪と可消化養分総量は減少しました。

味わいの時間的な変化では、通常のクッキーでは甘さとサクサク感が主に目立った一方、発芽キヌア粉入りのクッキーでは硬さ、キヌアの風味、苦味が目立つ感覚になりました。統計的な分析でも、クッキー同士の違いを生んでいた主な要因は発芽キヌア粉であることが確認されています。好ましさとの関係では、甘さとサクサク感が好ましさを高める方向に、苦味と硬さが下げる方向に働く感覚として示されました。

消費者の受容度は、発芽キヌア粉を含まないクッキー(6.65〜7.10)のほうが、含むクッキー(5.34〜5.66)より有意に高い結果でした。一方、同じキヌア粉の条件の中では、脂肪の削減率による受容度の有意な差は見られませんでした。

研究が示すこと

著者らは、通常のショートクッキーでは最大20%まで脂肪を減らしても受容度を損なわずに済むこと、また発芽キヌア粉は抗酸化に関わる特性を大きく高めることを結論としています。同時に、発芽キヌア粉の配合は苦味やキヌアの風味を目立たせ、好ましさを下げる方向に働いたことも示されており、身近な菓子の配合を見直す際に、栄養面の特性と食べたときの感じ方の両方を見ていく必要があることを伝える研究といえます。

原著論文の著者・所属:Darwin Tique(Sensory Analysis and Consumers Study Group, Escuela Profesional de Ingeniería Agroindustrial, Universidad Nacional de Moquegua, Prolongación Calle Ancash S/N, Moquegua, 18001, Peru)、Karina Eduardo(Universidad Tecnológica del Perú, Arequipa, Peru)、Jennifer Alvarez(Departamento de Ciência e Tecnologia de Alimentos (LCA), Escola Superior de Agricultura “Luiz de Queiroz” (ESALQ), Universidade de São Paulo (USP), Piracicaba, Brazil)、Milagros Coaguila-Gonza(Departamento de Ciência e Tecnologia de Alimentos (LCA), Escola Superior de Agricultura “Luiz de Queiroz” (ESALQ), Universidade de São Paulo (USP), Piracicaba, Brazil; Sensory Analysis and Consumers Study Group, Escuela Profesional de Ingeniería Agroindustrial, Universidad Nacional de Moquegua, Prolongación Calle Ancash S/N, Moquegua, 18001, Peru)、Juan D. Rios-Mera(Grupo de Investigación en Reformulación de Alimentos (GIRA), Instituto de Investigación de Ciencia y Tecnología de Alimentos (ICTA), Universidad Nacional de Jaén, Carretera Jaén-San Ignacio, km 24-Sector Yanuyacu, Jaén, 06800, Peru)、Erick Saldaña(Sensory Analysis and Consumers Study Group, Escuela Profesional de Ingeniería Agroindustrial, Universidad Nacional de Moquegua, Prolongación Calle Ancash S/N, Moquegua, 18001, Peru)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Darwin Tique, Karina Eduardo, Jennifer Alvarez, et al. Sprouted quinoa flour and fat reduction in shortcrust cookies: effects on nutritional composition, instrumental color and texture, antioxidant capacity, and temporal sensory profile. Applied Food Research 2026-09-16. DOI: 10.1016/j.afres.2026.102614. 原著ライセンス:CC BY.