著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。
掲載誌:Revista CERES
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
地域のコーヒーを分析で記録する
ブラジル・リオデジャネイロ州の北西部、アルト・ノロエステ・フルミネンセと呼ばれる地域では、生産者や研究機関などが協力して品質を重視したコーヒーづくりを進めており、地域のコーヒーとして注目が高まっています。一方で、この地域で育った豆が焙煎によってどのような成分の特徴を示すかについては、査読を経た情報がまだ限られていると研究チームは指摘しています。
焙煎はコーヒーの味や香り、酸味などを大きく左右する工程です。加熱が進むと水分が抜けるとともに、炭水化物、たんぱく質、脂質、有機酸などがさまざまに変化します。そこで研究チームは、この地域で生産されたアラビカ種コーヒーの豆を浅煎り、中煎り、深煎りの三通りで焙煎し、それぞれの物理化学的な特徴を調べることを目的としました。
一つにまとめた試料を三通りに焙煎
材料は、同地域のボン・ジェズス・ド・イタバポアナにある農園で2022年と2023年に収穫された、ナチュラル精製(果肉ごと乾燥させる方式)のアラビカ種の豆です。品種は記録されていませんでした。二つの年の豆を1対1で混ぜ合わせて一つの「混合試料」とし、それを三つに分けて浅煎り、中煎り、深煎りにしました。焙煎はおよそ13〜15分で、最終段階では約230℃に達しました。
焙煎後の豆を粉砕し、ブラジルの公的な分析手順に従って、水分、灰分(燃やした後に残るミネラル分)、脂質、たんぱく質、pH、滴定酸度(アルカリで中和するのに必要な量から求める酸の量)、水やアルコールに溶け出す成分の割合、カフェインを測定しました。
各焙煎度について測定は3回ずつ行いましたが、これは同じ試料を繰り返し測った「分析上の繰り返し」であり、別々の豆や別々の焙煎を用意した独立した実験の繰り返しではありません。このため研究チームは、焙煎度の間で統計的な検定は行わず、結果を記述的に解釈するとしています。
焙煎が深くなるにつれて見られた変化
論文によると、水分は浅煎りの3.51%から中煎りの2.94%、深煎りの1.76%へと減っていました。灰分は4.10%から4.46%へ、脂質は11.78%から13.92%へと増えた一方、たんぱく質は13.82〜14.00%で変化は比較的小さいものでした。
研究チームは、灰分や脂質の割合が増えたことについて、これらの成分が焙煎で新たに生じたのではなく、水分や揮発しやすい物質が失われて全体の重さが減った結果、相対的に割合が高くなったものと解釈しています。そのため、焙煎によって栄養が濃くなったことを示すものとして受け取るべきではないと述べています。
酸に関わる値では、pHが浅煎り4.98、中煎り5.02、深煎り5.23と上がり、滴定酸度は221.67、205.70、178.37 g/Lと下がりました。ただし、個々の有機酸は測定していないため、この低下を特定の成分、たとえばクロロゲン酸の分解に結びつけることはできないとしています。
溶け出す成分では、水に溶ける成分の割合は2.27〜2.39%で大きな差はありませんでした。アルコールに溶ける成分は4.86%から5.23%へと増えましたが、どの成分が関わっているかを特定するには別の分析が必要だとしています。
カフェインは100gあたり浅煎り0.876g、中煎り0.918g、深煎り0.896gで、水分や酸度、灰分、脂質と比べると焙煎度による違いは小さいものでした。
地域のコーヒーを知るための最初の基準
研究チームは、この結果を、まだ分析情報の少ない産地のコーヒーについての最初の物理化学的な参照データと位置づけています。同時に、一つの混合試料をそれぞれの焙煎度で一度ずつ焙煎しただけなので、農園や収穫年、ロットによるばらつきは評価できておらず、見られた違いをこの地域のコーヒー全体の特徴や、焙煎の一般的な効果として広げて考えるべきではないと強調しています。
焙煎が深くなるほど水分と酸の量が減り、pHや灰分・脂質の割合が上がる一方、カフェインは比較的変わりにくいという今回の傾向は、コーヒー豆の中の成分ごとに焙煎への反応が異なることを、特定の地域の豆について具体的な数値で示したものといえます。
原著論文の著者・所属:Gabriela Luiza Pacheco da Silva(Universidade Estadual do Norte Fluminense Darcy Ribeiro)、Brenda Pereira da Silva(Universidade Federal do Espírito Santo)、Maria Clara Nogueira da Silva Paiva(Universidade Federal do Espírito Santo)、Hilton Lopes Galvão(Instituto Federal Fluminense)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Gabriela Luiza Pacheco da Silva, Brenda Pereira da Silva, Maria Clara Nogueira da Silva Paiva, et al. Physicochemical characterization of a composite Coffea arabica L. sample from Alto Noroeste Fluminense under three roasting profiles. Revista CERES 2026-10-23. DOI: 10.71252/2177-34912026730023. 原著ライセンス:CC BY.