著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、コロンビアです。

掲載誌:ACS Food Science & Technology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

コーヒーは世界で年間およそ4000億杯が飲まれているとされる、最も身近な飲み物の一つです。研究チームは、その化学的な成り立ちを理解することが、持続可能性と健康の両面で重要だと位置づけています。

論文の抄録によると、コーヒーの主要な成分はメラノイジンと呼ばれる物質です。メラノイジンは糖、たんぱく質、フェノール酸、アルカロイドなどが結びついた高分子で、焙煎の過程でできる褐色の物質として知られています。しかし、その詳しい組成はまだよく分かっていません。そこで著者らは、焙煎の度合いや豆の産地が異なるコーヒーで、メラノイジンや酸味、ポリフェノールなどの成分がどのように違うのかを比べました。

何をどう調べたか

比較したのは、浅煎り・中煎り・深煎りという焙煎度の異なるコーヒーと、米国市場で販売されている複数産地のブレンド豆およびコロンビア産の豆です。

分析には三つの方法が使われました。一つ目は高分解能UHPLC-MS/MSで、液体クロマトグラフィーで成分を分離し、質量分析によって多数の化合物を検出して量を比べる手法です。二つ目は自動滴定で、飲み物に含まれる酸の量の目安となる「滴定酸度」を測りました。三つ目は分光光度法で、光の吸収を利用してメラノイジンの濃度と総ポリフェノール量を求めました。

主な結果

著者らは、メラノイジンの含有量がpHと正の相関を示し、滴定酸度および総ポリフェノール量とは負の相関を示したと報告しています。つまり、メラノイジンが多い試料ほどpHが高い(酸性が弱い)傾向があり、滴定酸度や総ポリフェノール量は低い傾向が見られたということです。これは相関関係の報告であり、どちらが原因かを示したものではありません。

UHPLC-MS/MSの分析では、すべてのコーヒー試料が化学的に互いに異なることが示されました。最も違いが大きかった組み合わせ(コロンビア産中煎りの試料と、米国市場のブレンド深煎りの試料)では、検出された化合物全体の約60%で濃度に統計的な差がありました。一方、最も似ていた米国市場のブレンド中煎りと深煎りの間では、差があった化合物は約1%にとどまりました。

全体として、米国市場のブレンドの中煎り・深煎りは、コロンビア産の試料とははっきり区別されました。たとえば、キナ酸やカテコールはブレンドの中煎り・深煎りに多く、クロロゲン酸やその他の有機酸はコロンビア産に多く含まれていました。また、多数のデータを少数の軸にまとめて傾向を見る主成分分析では、最初の二つの軸で試料間のばらつきの65.8%が説明されたと報告されています。

この研究が示すこと

この研究は、焙煎度や産地の違いによって、同じコーヒーでも含まれる化合物の構成が大きく異なりうることを、網羅的な成分分析で示しました。著者らは、コーヒーの多様性を分子のレベルで理解することが、コーヒーを飲むことの健康面や持続可能性に関する今後の研究の土台になると述べています。

原著論文の著者・所属:Kailey E. Komnick(University of Wisconsin-Madison , , 1101 University Ave , , ,; University of Wisconsin-Madison , , 1605 Linden Dr. , , ,)、Juan Carlos Carmona-Hernandez(Universidad de Manizales , , Carrera 9 # 19-09 , ,)、Bradley W. Bolling(University of Wisconsin-Madison , , 1605 Linden Dr. , , ,)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kailey E. Komnick, Juan Carlos Carmona-Hernandez, Bradley W. Bolling. High-Resolution UHPLC-MS/MS Distinguishes Coffee Acidity and Polyphenols by Roasting Method and Bean Origin. ACS Food Science & Technology 2026-10-05. DOI: 10.1021/acsfoodscitech.6c00629. 原著ライセンス:CC BY.