この研究は、ホンジュラスの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Revista Multidisciplinar Epistemología de las Ciencias

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜ焙煎と挽き目を「一緒に」調べたのか

コーヒーを淹れるとき、豆をどのくらい深く焙煎するか(焙煎プロファイル)と、どのくらいの粗さに挽くか(挽き目/グラインダーの設定)は、別々の場面で決める作業です。しかし著者によれば、その影響は最終的に一杯のカップへ同時に現れます。そこで問題になるのは、同じ挽き目の設定が、浅煎り・中煎り・深煎りのそれぞれで同じようにはたらくのかという点です。

この研究が扱ったのは、ホンデュラスのレパエラで標高1,500メートルで栽培された、水洗式(ウォッシュド)処理のアラビカ種パライネマという品種です。著者は、このパライネマについては焙煎と挽き目の関係を確かめた実験的な情報が少ないと述べており、それが今回の出発点になりました。立てられた仮説は、測定する項目のうち少なくとも一つで、焙煎と挽き目の「交互作用」——つまり挽き目を変えたときの効果が焙煎度合いによって変わる現象——が現れるだろう、というものです。

どのように調べたか

著者は、焙煎3水準と挽き目3水準を組み合わせた9通りの条件を用意し、それぞれ独立した4ロットずつ、合計36の試料を分析しました。豆はすべて同じ生豆から取っており、焙煎はサンプル用の電気焙煎機で100グラム単位、投入温度165℃から行われ、総時間は平均して9〜11分でした。焙煎の浅い・中くらい・深いの区分は、SCA(スペシャルティコーヒー協会)の色度計測の手順に沿って測色器で判定しています。挽き目は、ミルの目盛りでG3(中細、800ミクロン相当)、G4(中粗、1100ミクロン相当)、G4.5(粗、1400ミクロン相当)の3段階です。

抽出は浸漬(しんし)式、つまり粉を湯に浸しておく方式でした。カッピング用のカップに挽いた粉8.5グラムを入れ、91℃の精製水150ミリリットルを注ぎます(粉と湯の比は約1対17.6)。4分後に表面に浮いた層を崩して浮遊物を取り除き、合計10分間浸してからペーパーで濾しました。

得られた液体については、二つの物理的な指標が測られています。一つはTDS(総溶解固形分)で、飲み物にどれだけの成分が溶け込んでいるか、つまり濃さを表します。もう一つはEY(抽出収率)で、使った粉のうちどれくらいの割合が液体側へ移ったかを見積もる値です。著者は、この二つは異なる抽出条件を比べるのには役立つが、飲んだ人が感じることのすべてを説明するものではないと注意を添えています。そこで官能評価も併せて行われ、3名のカッターが各試料の酸味・甘み・総合的な好ましさを0から10の尺度で採点しました。採点は3名の平均を1ロットの値として扱い、統計解析には二元配置分散分析とテューキーの検定が用いられています。

報告された主な結果

著者の報告で最も大きく出たのは、挽き目の影響です。挽き目は測定した5項目すべて——TDS、EY、酸味、甘み、総合評価——に有意な影響を示しました。一方の焙煎プロファイルは、TDS・酸味・甘み・総合評価には影響したものの、抽出収率EYについては有意な効果が認められませんでした。

TDSの動きは、焙煎度合いによって同じパターンにはなりませんでした。浅煎りではG3が最も濃く1.42%で、G4とG4.5はいずれも0.93%にとどまりました。ところが中煎りと深煎りではG4.5の値が上がってG3に近づき、G4は0.92〜0.93%のまま推移しています。抽出収率のほうはより一様で、平均するとG3が最も高く15.33%、次にG4.5が14.55%、G4が最も低い12.31%でした。全体としてEYは11.62%から15.51%の範囲に収まっています。

官能評価では、G3とG4が良い結果を得ました。酸味は浅煎りで最も高く、G3とG4ではG4.5より高い点がついています。差がさらに明確だったのは甘みで、G3とG4は三つの焙煎すべてで高い値を保った一方、粗挽きのG4.5はどの焙煎でも甘みを下げました。総合評価も同じ傾向をたどり、浅煎りとG4.5の組み合わせが最も低い5.92点、G3とG4では多くが8.19〜8.36点に達しました。TDSと総合評価の二つでは焙煎と挽き目の交互作用が有意となり、著者はこれをもって当初の仮説が確認されたとしています。

この結果が示すこと

著者が強調するのは、物理的な指標と味わいの評価が必ずしも同じ方向へ動かなかったという点です。G4.5は中煎りと深煎りでTDSとEYを回復させましたが、それでも甘みと総合評価は最も低いままでした。つまりこの実験では、似たような抽出の数値に届いたからといって、感覚的に同等の一杯になったわけではありませんでした。著者はこの食い違いを、先行研究が報告してきた「濃さ・収率と、知覚される品質との乖離」と重ねて論じています。

G4.5でTDSとEYが持ち直した理由については、著者は慎重な読み方を求めています。G3・G4・G4.5はあくまでミルの目盛りの位置であり、粒度分布を測った値ではありません。微粉の存在、粉の層が締まること、湯が通る道筋の偏りなどが抽出のむらを生む可能性は挙げられていますが、今回は粒度分析を行っていないため、どの仕組みが働いたのかはこのデータからは特定できないと明記されています。

評価された条件のもとでは、G3が抽出と官能品質のあいだで最も安定したバランスを示し、G4は高い甘みと好ましさを保ちつつ抽出収率は低めでした。ただし著者自身が範囲の限界を示しています。対象は単一の品種・単一の収穫年であり、淹れ方も浸漬式に限られるため、ドリップやエスプレッソへそのまま当てはめることはできません。カッターは3名で、ロット数も各4、焙煎後の豆の色や粒度分布は測られておらず、浅・中・深やG3〜G4.5は実験室内での作業上の区分だと述べられています。

それでもこの報告が伝えているのは、焙煎と挽き目を切り離して決めるのではなく、組み合わせとして考える必要がある、という一点です。少なくともTDSと総合評価については、挽き目を変えたときに何が起きるかが焙煎度合いに左右されていました。そして数値上の抽出がそろっていても、飲んだときの印象はそろわないことがある——著者が実際のカップで確かめたのは、この二つの事実です。

著者:Kevin Jarod Mejía Osorto(Universidad Nacional Autónoma de Honduras)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kevin Jarod Mejía Osorto. Efecto del perfil de tueste y el ajuste de molienda sobre la extracción y la calidad sensorial de café Coffea arabica var. Parainema. Revista Multidisciplinar Epistemología de las Ciencias 2026-09-28. DOI: 10.71112/699hm149. 原著ライセンス:CC BY.