著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:INSOLOGI Jurnal Sains dan Teknologi

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:セリアック病の食事と食物繊維

セリアック病は、小麦などに含まれるたんぱく質のグルテンに体が適応できず、免疫の反応によって小腸が傷つき、栄養の吸収が妨げられる自己免疫疾患です。論文によると、現在有効な治療はグルテンを除いた食事(グルテンフリー食)だけです。一方で、市販のグルテンフリー食品の多くは精製したでんぷんを主原料とするため、食物繊維が少ないことが課題として挙げられています。

食物繊維には、水に溶ける「水溶性繊維」と溶けない「不溶性繊維」があります。著者らは、水溶性繊維は腸内細菌に発酵されて短鎖脂肪酸のもとになり、不溶性繊維は便のかさを増やして腸内の通過を助けると説明しています。

インドネシアの研究チームは、地元で手に入りやすい二つの食材に注目しました。キャッサバ(芋の一種)を天日で乾燥させて粉にした「ガプレック粉」と、大豆をカビで発酵させた伝統食品テンペを乾燥・粉砕した「テンペ粉」です。同じ配合のクッキーを扱った先行研究はたんぱく質量と硬さを調べたもので、食物繊維はまだ詳しく調べられていませんでした。そこで本研究は、配合を変えたクッキーの水溶性繊維、不溶性繊維、総食物繊維の量を比べることを目的としました。

何を調べたか

研究チームは4種類の配合でクッキーを作りました。F1はガプレック粉もテンペ粉も加えない基準のクッキーです。F2はガプレック粉25%とテンペ粉75%、F3は50%ずつ、F4は75%と25%を加えました。方法の記載では、これらの割合は小麦粉の重さに対する添加量として示されています。各配合を2回ずつ作り、それぞれの試料を2回分析しました。

食物繊維量は、酵素ででんぷんやたんぱく質を分解し、残ったものを乾燥させて重さを量る標準的な方法(酵素重量法)で測りました。総食物繊維は水溶性繊維と不溶性繊維の合計です。配合による違いは、データの分布を前提にしない統計手法で検定しました。

主な結果

論文によると、配合の違いは水溶性繊維、不溶性繊維、総食物繊維のいずれにも統計的に有意な影響を与えていました。三つの指標はいずれもF3(ガプレック粉とテンペ粉が50%ずつ)で最も高くなりました。F3の値は水溶性繊維が0.85%、不溶性繊維が10.34%、総食物繊維が11.20%です。最も低かったのはF1で、それぞれ0.43%、6.18%、6.62%でした。

どの組み合わせに差があるかを調べた追加の検定では、有意な差が確認されたのはF1とF3の間だけでした。F2とF4は、F1ともF3とも有意な差はありませんでした。また、ガプレック粉75%・テンペ粉25%のF4では、三つの指標がいずれもF3より低い値でした。著者らはこの低下について、焼成中の熱による繊維の構造変化や、たんぱく質と多糖類の相互作用の可能性などを挙げていますが、こうした仕組みは直接測定しておらず、文献にもとづく解釈だとしています。

どの配合でも、不溶性繊維は水溶性繊維よりずっと多く含まれていました。一方、F3の水溶性繊維は繰り返し作った試料の間でばらつきが大きく、著者らは慎重な解釈が必要な点として、研究の限界に挙げています。

この研究が示すこと

著者らは、ガプレック粉とテンペ粉を半分ずつ使うF3が、調べた三つの食物繊維指標で最も有望な配合だったと結論づけています。そのうえで、この配合はセリアック病の人の食物繊維摂取を支えるグルテンフリー食品の候補として発展させられる可能性があると述べています。

ただし、この研究で分析したのはクッキーの化学的な成分だけです。消化されたあとの食物繊維の働きや、体内での効果は調べていません。著者らは、食物繊維はあくまで腸の健康を補助するものであり、セリアック病の主な治療であるグルテンフリー食の代わりにはならないと明記しています。さらに、グルテンを含まないという安全性や栄養の質、食べた人の受け入れやすさについては、別途確認が必要だとしています。地元の食材の組み合わせによってクッキーの食物繊維量が変わることを、配合ごとに具体的に示した報告といえます。

原著論文の著者・所属:Shabrina Novia Nur Fitriani(Universitas Muhammadiyah Surakarta)、Sudrajah Warajati Kisnawaty(Universitas Muhammadiyah Surakarta)、Fitriana Mustikaningrum(Universitas Muhammadiyah Surakarta)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shabrina Novia Nur Fitriani, Sudrajah Warajati Kisnawaty, Fitriana Mustikaningrum. Kadar Serat pada Cookies berbahan Tepung Gaplek dan Tepung Tempe sebagai Terapi Celiac Disease. INSOLOGI Jurnal Sains dan Teknologi 2026-08-07. DOI: 10.55123/insologi.v5i4.9389. 原著ライセンス:CC BY.