「畑の肉」と呼ばれるだいず(黄大豆 国産 乾)は、100gあたりたんぱく質33.8gを含む。ところが同じ大豆をゆでた状態にすると14.8gまで下がる。同じ大豆なのに数字がほぼ半分になるのはなぜか。答えは単純で、乾燥豆が水を吸ってゆで上がる過程で重さそのものが増え、たんぱく質の「濃度」が薄まるからだ。畑の肉という呼び名は乾燥大豆の話であって、私たちが実際に鍋で扱う「ゆで大豆」の話ではない、というのが最初の気づきになる。
豆腐は薄まった大豆ではなく、軽さを持つ別の食品
この「加水で薄まる」流れをそのまま追いかけると、豆腐にたどり着く。絹ごし豆腐はたんぱく質5.3g、木綿豆腐は7g。乾燥大豆の33.8gと比べれば、絹ごしは6分の1程度、木綿でもおよそ5分の1の水準まで下がっている計算になる。数字だけを見ると大豆が薄まったように映るが、豆腐は大豆をそのまま小さくした食品ではなく、水分を多く含むぶん脂質が軽く、乾燥大豆とは別の性質を持つ食品になっている。
では絹ごしと木綿の差はどこから来るのか。ここでもう一段、意外な仕組みが隠れている。豆腐の差を生んでいるのは大豆の品種でも産地でもなく、作り方の一工程、圧搾だ。木綿豆腐は豆乳を固めたあとに圧搾して水分を絞り出すため、絞らない絹ごしよりたんぱく質が濃くなる。エネルギーも絹ごしの56kcalに対し木綿は73kcalとやや高く、これも同じ「水分がどれだけ抜けたか」で説明がつく。豆腐という一つのカテゴリーの中の差さえも、結局は水分量というたった一つの糸でつながっている。
あずきとごまは、たんぱく質より別の顔で脇を固める
あずき(全粒 ゆで)はたんぱく質8.6gと大豆ほどの主役感はないが、炭水化物25.6g・食物繊維8.7gを含み、豆の中では食感と食物繊維で存在感を出す食材だ。ごま(乾)はたんぱく質19.8gに加え100gあたりカルシウム1200mgを含む食品だ。ただし料理に使う量はごく少量にとどまるため、カルシウムの一日の推奨量(成人でおおむね650〜800mg)に照らせば、ごま一振りで賄える量は控えめだ。ごまは主役というより、少量をカルシウム源として補う脇役と考えるのが実態に近い。
使い分けの実践
ここまでの流れを踏まえると、豆腐を「大豆の代わりに食べるたんぱく源」と考えるのは少しずれている。むしろ豆腐の価値は、大豆とは別の食品として持つ脂質の軽さと消化のしやすさにある。豆腐は脂質が少なく消化吸収しやすいたんぱく源とされ、乾燥大豆や煮豆よりも胃に負担をかけずに取り入れやすい。がっつり量を確保したい食事には乾燥大豆やゆで大豆、軽く済ませたい一皿には木綿豆腐、なめらかさを楽しみたいなら絹ごし豆腐、というように「量」と「軽さ」で使い分けるのが実践的だ。あずきは食物繊維と食感を足す小さな一品として、ごまはごく少量をカルシウム源として料理に振りかける、という脇役の使い方が向いている。
まとめ
大豆は乾物としては確かに「畑の肉」だが、ゆでれば数字は半分近くに薄まり、豆腐になればさらに水分が増える。絹ごしと木綿の差を生んでいたのも、水分をどれだけ抜くかという圧搾の一工程だった。豆腐を選ぶときは「大豆の代用品」としてではなく、「軽さ」を積極的に選び取っている、と捉え直すと、次に豆腐売り場で絹ごしと木綿の表示を見る目が少し変わってくるはずだ。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:e-ヘルスネット「カルシウム」(厚生労働省)