「水をしっかり飲む」とはよく言われますが、私たちが日々体に取り込む水分は、飲み物だけが源ではありません。食事から摂る水分も含めた「総水分摂取量」に、どんな食習慣が関係しているのか――機械学習という最新の統計手法を使った研究が、その謎に迫っています。

研究でわかってきたこと

2026年3月に栄養学誌に掲載された研究では、肥満のない健康な成人219名を対象に、「プリフォームドウォーター(preformed water)」と呼ばれる水分摂取量の決まり方が調査されました。プリフォームドウォーターとは、水や飲み物、そして食品そのものに含まれる水分を合わせた、いわば「食事由来の総水分」のことです。

この研究では、二重標識水法(deuterium and oxygen-18を用いた同位体追跡法)という高精度の測定技術を使い、連続する2つの14日間(合計28日間)にわたって実際の水分摂取量を定量化しました。そのうえで、線形回帰・ランダムフォレスト・勾配ブースティングなど複数の機械学習モデルを比較した結果、25の変数を用いたリッジ回帰モデルが最も精度が高く、水分摂取量のばらつきの約38%を説明できたと報告されています。

特に注目されるのは、食物繊維・たんぱく質・アルコール・食べた食品の総重量が多いほど、また炭水化物とナトリウムの摂取量が少ないほど、プリフォームドウォーターの摂取量が高い傾向があったという点です。さらに、除脂肪体重(筋肉や骨などの脂肪以外の体重)が大きいこと、エネルギー消費量が多いことも関連していたと示唆されています。加えて、人種・民族的背景、性別、活動量なども関連する要因として挙げられており、水分摂取には個人差に関わる複合的な要因が絡み合っていることがうかがえます。

注目の食品と関連する栄養素

今回の研究では「食物繊維」「たんぱく質」「食品の重量(水分を多く含む食品)」が水分摂取量と関連している可能性が示されました。以下では、研究の知見をもとに、どのような食品に着目できるかを紹介します。

食物繊維を多く含む代表的な食品としては、野菜類・豆類きのこ類海藻類などが知られています。これらは水分含量が高いものも多く、食物繊維と水分を同時に摂りやすい食品群と考えられます。たんぱく質については、魚介類・肉類・大豆製品乳製品などが代表的な供給源です。また、野菜や果物など水分を豊富に含む食品を積極的に取り入れることが、食事からの水分補給という観点でも合理的だと考えられます。

一方で、この研究ではナトリウム摂取量が多いほど水分摂取量が低い傾向も示唆されています。厚生労働省が定める日本人の食事摂取基準でも、ナトリウム(食塩相当量)の目標量が設けられており、減塩を意識した食生活は水分バランスの観点からも参考になるかもしれません。

研究知見から考える食事の視点

本研究は観察的な関連性を示したものであり、特定の食習慣が水分摂取量を直接増やすことを証明したものではありません。以下は、研究で関連が示唆された要因をもとに、食事を振り返る際の視点として参考にしてください。

  • 野菜・きのこ・海藻との関連:食物繊維と水分を同時に含みやすい食品群として、研究の関連要因と重なります。汁物や煮物に加えるなど、日常的に取り入れやすい食品です。
  • 主菜とたんぱく質の関係:たんぱく質摂取量が水分摂取量と関連していた知見をふまえると、魚・肉・豆腐などを取り入れたバランスのよい食事構成が参考になるかもしれません。
  • 食事の「かさ」と総重量:研究では食べた食品の総重量も関連していました。カロリーが低く水分が多い食材(葉野菜きゅうりトマトなど)を活用すると、食事全体のボリュームを意識しやすくなります。
  • ナトリウム摂取への着目:研究でナトリウム摂取量との逆の関連が示唆されていることから、醤油・味噌などの使い方を見直し、だしやスパイスで風味を補う工夫が参考になります。
  • 炭水化物の種類と組み合わせ:炭水化物摂取量との関連が示された知見をふまえると、精製された炭水化物に偏りすぎず、食物繊維を多く含む食品と組み合わせる食事構成を意識してみることが考えられます。

水分補給というと「1日2Lの水を飲む」といったイメージが先行しがちですが、今回の研究は食事そのものの内容が体内の水分量と深く関わっている可能性を示唆しています。水を飲むことだけでなく、食事の質と構成を整えることが、体の水分バランスを意識するうえでの参考になるかもしれません。

参考文献:Use of Machine Learning to Identify Determinants of Habitual-Preformed Water Intake(栄養学誌(2026-03-11))