妊娠中の食事は、おなかの赤ちゃんだけでなく、母親自身の健康にも深く関わっています。なかでも近年注目されているのが、妊娠糖尿病(GDM)と日々の食事内容との関係です。11万人以上のデータを分析した大規模な研究から、妊娠前・妊娠中の「何をどれだけ食べるか」が、妊娠糖尿病のリスクと関連している可能性が浮かび上がってきました。
研究でわかってきたこと
ビーエムシー・メディシン誌(2026年4月)に掲載されたこの研究は、前向き観察研究(将来に向けて参加者を追跡する信頼性の高い研究デザイン)25本を対象とした系統的レビューおよびメタ解析です。対象となった妊婦は合計11万5,496人にのぼります。
研究では、たんぱく質・脂質・糖質・アルコールといった主要な栄養素(マクロ栄養素)の摂取量と、妊娠糖尿病の発症との関連が詳しく分析されました。その結果、特に注目すべきいくつかの傾向が報告されています。
- 動物性たんぱく質の摂取量が多いグループでは、少ないグループと比べて妊娠糖尿病の発症リスクが相対的に高い傾向が示唆されました(相対リスク:1.62、95%信頼区間:1.20〜2.18)。この関連については「中程度の確実性」があると評価されています。
- 一方、植物性たんぱく質については、動物性とは異なる関連が示唆されており、たんぱく質の「量」だけでなく「由来(動物性か植物性か)」が重要である可能性が示されています。
- 脂質や糖質についても種類・由来ごとに異なる関連が検討されており、食事の質を総合的に考えることの重要性が浮き彫りになっています。
なお、この研究は観察研究を分析したものであり、因果関係を断定するものではありません。あくまで「関連性」として報告されているものであることに注意が必要です。
注目の食品と実測データ
今回の研究では「動物性たんぱく質」と「植物性たんぱく質」の違いが鍵となっています。日本の食卓でよく登場する食品のたんぱく質含有量についても、把握しておくと献立を考える際の参考になります。
最新の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)によれば、妊婦のたんぱく質推奨量は妊娠初期・中期・後期それぞれに応じた付加量が設定されており、一般成人女性よりも多くのたんぱく質摂取が推奨されています(出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」)。
植物性たんぱく質の代表格として知られる豆腐・納豆・豆類、そして魚介類の中でも脂質の質が異なる食品など、多様な食品からバランスよくたんぱく質を摂ることが、現在の栄養学の考え方においても重視されています。
日々の食事に取り入れるヒント
この研究の知見を踏まえ、妊娠中または妊娠を考えている方が日々の食事を見直す際のヒントをご紹介します。
- たんぱく質の「出どころ」を意識する:肉・卵・乳製品などの動物性食品に偏りすぎず、豆腐・納豆・豆類・魚といった多様な食品からたんぱく質を摂る工夫をしてみましょう。「1食1品は植物性たんぱく質を意識する」という習慣が、食事の多様性につながります。
- 加工食品より素材を生かした調理を:加工肉(ウインナーやハムなど)は動物性たんぱく質と飽和脂肪酸を同時に多く含む傾向があります。できるだけ素材に近い形の食品を選ぶことが望ましいとされています。
- 食物繊維と組み合わせる:豆類や野菜、海藻などは食物繊維が豊富で、血糖値の急激な上昇をゆるやかにする働きが期待されています。たんぱく質源と食物繊維豊富な食品を組み合わせると、食事全体の栄養バランスが整いやすくなります。
- かかりつけの医師・管理栄養士に相談を:妊娠中の食事管理は個人差が大きく、持病や体格によっても適切な摂取量が異なります。心配な方は専門家に個別に相談することをおすすめします。
妊娠糖尿病は、産後に2型糖尿病へ移行するリスクが高いとも報告されており、妊娠中の食習慣は長期的な健康にも影響する可能性があります。だからこそ、「妊娠中だけの話」と捉えず、食生活全体を見直すきっかけにしていただければと思います。
今回の研究が示すのは、たんぱく質の「量」だけでなく「質と由来」を意識することの重要性です。特定の食品を極端に避けたり過剰摂取したりするのではなく、多様な食品をバランスよく組み合わせることが、妊娠中の食生活の基本として推奨されています。食事は毎日積み重ねるものだからこそ、無理なく続けられる小さな工夫から始めてみてください。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。参考文献:Maternal macronutrient intake and gestational diabetes: systematic review of prospective observational studies and dose-response meta-analyses(ビーエムシー・メディシン(2026-04-11))