山々が深みを増す5月、里山の斜面や野原では緑のくるりとした芽がいっせいに顔を出します。わらびは、春の山菜の中でも特に庶民に親しまれてきた日本の旬食材。あく抜きの手間を惜しまなければ、子どもの成長を支える栄養がぎゅっと詰まった食材です。今回は、家族の食卓にわらびを取り入れるヒントをお伝えします。
この時期に注目したい栄養素
子どもが骨をつくり、脳を働かせ、体を大きくしていくこの時期、毎日の食事で意識したい栄養素があります。その代表がカルシウム・鉄・食物繊維の3つです。
カルシウムは骨や歯の形成に欠かせないミネラルです。最新の「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」によれば、成長期の子どもはとりわけ多くのカルシウムを必要とします。詳細は厚生労働省の最新資料をご確認ください。
鉄は全身に酸素を運ぶ赤血球のもとになる栄養素で、不足すると集中力の低下や疲れやすさにつながることがあります。子どもが活発に勉強や運動に取り組むためにも、毎日こまめにとりたいミネラルです。
食物繊維は腸内環境を整え、免疫機能のサポートにも関わります。腸は「第二の脳」とも呼ばれるほど体全体に影響が大きく、成長期の子どもの腸を健やかに保つことは学習や運動のパフォーマンスにもつながります。
おすすめ食品とその数値データ
山菜の中でも特に注目したいのが、干しわらび(乾燥)です。乾燥させることで栄養が凝縮され、100gあたりのデータは驚くほど充実しています。
- カルシウム:200mg(100gあたり) 骨形成を支えるミネラルがしっかり含まれています。
- 鉄:11.0mg(100gあたり) 植物性食品としては非常に高い数値です。
- 食物繊維:58.0g(100gあたり) 腸を整えるうえで心強い存在です。
- たんぱく質:20.0g(100gあたり) 筋肉や体づくりを支えます。
- エネルギー:216kcal(100gあたり)
乾燥品は濃縮されているため、実際に調理する際は水で戻して使います。戻すと重量が大幅に増えるため、食べる量は少量になりますが、それでも栄養価の高い山菜として家庭に取り入れる価値があります。
比較として、同じ山菜の生ぜんまい(若芽・生)は100gあたりカルシウム10mg・鉄0.6mgと控えめな数値ですが、ビタミンC24mgを含む点が特徴的です。一方、干しぜんまい(乾)は100gあたりカルシウム150mg・鉄7.7mgと乾燥により栄養が凝縮されており、食物繊維も34.8gと豊富です。干しわらび(乾燥)と干しぜんまい(乾)を組み合わせることで、より多彩な栄養をバランスよく取り入れることができます。
毎日の食事への取り入れ方
干しわらびを使う際は、まず十分な水に一晩漬けて戻し、沸騰したお湯で下茹でをすることで食感よく仕上がります。あく抜きをしっかり行うことが大切です(アクが強いため、重曹を使う方法も一般的です)。
- 煮物・だし煮:鶏肉や油揚げと一緒に薄めのだし醤油で煮ると、子どもが食べやすい優しい味になります。カルシウムが豊富な豆腐や小魚と組み合わせると、骨形成サポートの観点からもバランスが良くなります。
- ご飯に混ぜる:細かく刻んだ干しわらびを、だしで炊き込みご飯にすると子どもも食べやすくなります。鉄の吸収を高めるためにビタミンCを含む食材(ブロッコリーやミニトマトなど)を添えるのもおすすめです。
- みそ汁の具に:わらびの食感が楽しめるみそ汁は手軽に取り入れられる一品。豆腐や豆類と合わせると、植物性たんぱく質の補給にもなります。
- 和え物:ごまやくるみで和えると、子どもが喜ぶコクのある副菜になります。ごまにも鉄が含まれるため、組み合わせ効果が期待できます。
なお、わらびに含まれる鉄は植物性(非ヘム鉄)のため、肉・魚などの動物性たんぱく質や、ビタミンCを含む食材と一緒にとると吸収が高まることが知られています。献立を工夫してみましょう。
まとめ
山の恵みであるわらびは、日本の食文化に根ざした春の宝物。手間をかけて丁寧にあく抜きをする過程も、季節の食を楽しむ大切な時間です。子どもの骨を育て、鉄で体に活力を与え、食物繊維で腸を整える——そんな一石三鳥の食材を、ぜひこの5月の食卓に並べてみてください。旬の食材を囲む食卓は、家族の会話も豊かにしてくれるはずです。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。