著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Warta Desa (JWD)
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
取り組みの目的
発育阻害(スタンティング)は、長い期間にわたって十分な栄養をとれないことで起こる慢性的な低栄養の状態です。子どもの身体の成長だけでなく、認知面の発達にも影響するとされ、特に妊娠期から2歳ごろまでの「最初の1000日」が重要だといわれています。論文によると、インドネシア全国の発育阻害の割合は2022年の調査で21.6%でした。
著者らが活動したのは、ロンボク島東部ラブハン・ハジ郡のクルタサリ村です。9月の地元の身体計測データでは、村の6つの集落の乳幼児健診所(ポシャンドゥ)で計124人の乳幼児が発育阻害と判定されました。内訳は「非常に低身長」が20人、「低身長」が104人です。このうち7人は、年齢に対して身長が低いだけでなく、身長に対して体重も少ない「二重の負担」の状態にありました。
村は土地が肥えており、栄養豊富な植物として知られるモリンガ(ワサビノキ)がよく育ちます。著者らは、モリンガの葉がたんぱく質や鉄、カルシウム、抗酸化成分などを含むことを紹介しています。しかし、葉は主に澄んだスープの具として使われるだけで、幼い子どもにはあまり好まれていませんでした。そこで、大学の地域貢献活動として、子どもが好むクッキーにモリンガの葉を加える方法を住民に伝え、知識と調理技術を高めることを目的に、この取り組みが行われました。
どのように進めたか
活動は村役場のホールで行われました。参加者は、健診所のボランティア(カデル)、家族福祉推進の女性組織(PKK)のメンバー、発育阻害の子どもをもつ母親です。進め方には、住民自身が参加しながら課題の解決に取り組む「参加型アクションリサーチ」の考え方が用いられました。
最初の段階は、栄養に関する説明会です。発育阻害とは何か、最初の1000日の栄養がなぜ大切か、モリンガを地元の栄養源としてどう生かせるかを、対話形式で伝えました。理解度は口頭での質問や話し合いへの参加の様子から観察しました。
次の段階は、クッキーづくりの実習です。参加者は、材料の準備から、モリンガの葉を細かくする作業、生地づくり、焼き上げまでを指導を受けながら体験しました。材料は小麦粉、細かくしたモリンガの葉、砂糖、マーガリン、卵です。分量は家庭で作りやすく、地元で手に入る材料に合わせて調整されました。最後に、作業への参加の様子、口頭での感想、できあがったクッキーの形や食感、受け入れられ方から活動を評価しました。
報告された主な結果
説明会には30人が出席しました。このうち10人(約33.3%)が、質問や意見を述べるかたちで積極的に参加しました。著者らは、この参加の様子などを根拠に、対話形式の説明が理解を深めるのに役立ったとみています。ただし、論文自身が述べているとおり、講習の前後でテストを行って知識の変化を数値で測ったわけではありません。理解の向上は観察にもとづく判断です。
実習では、参加者が自分たちの手で、サクサクした食感と見た目のよいモリンガクッキーを作れるようになったと報告されています。クッキーはモリンガの葉による自然な緑色をしており、子どもが手に取りやすいよう容器や袋に詰められました。論文の要旨では、子どもを対象とした試食で、味と食感がよく受け入れられたと述べられています。
さらに、村の役場関係者の間では、このクッキーを健診所の補助食提供プログラム(PMT)のメニューに取り入れることが話題に上ったといいます。著者らは、取り組みを続けていくには、今後も見守りと支援が必要だとしています。
この取り組みが示すこと
この報告は、村に豊富にありながら十分に使われていなかったモリンガの葉を、子どもが食べやすいおやつに変える方法を、地域の担い手が実際に身につけられたことを示しています。なお、今回の活動では、クッキーを食べた子どもの成長や発育阻害の割合がどう変わったかは調べていません。この論文が伝えているのは、身近な食材を生かす知識と技術を地域に根づかせる第一歩としての実践の記録です。
原著論文の著者・所属:Syarifa Wahidah Al Idrus(Program Studi Pendidikan Kimia, Universitas Mataram, Indonesia)、I Nengah Dwi Witarsana(Program Studi Teknik Informatika, Universitas Mataram, Indonesia)、Sri Dinda Ambar Sari(Program Studi Kimia, Universitas Mataram, Indonesia)、Hani Soraya(Program Studi Pendidikan Bahasa Dan Sastra Indonesia, Universitas Mataram, Indonesia)、Septi Wahyuni(Program Studi Studi Peternakan, Universitas Mataram, Indonesia)、Petronela Kabes(Program Studi Pendidikan Guru Pendidikan Anak Usia Dini, Universitas Mataram, Indonesia)、Ranissa Putri Natar Agustiya(Program Studi Teknik Arsitektur, Universitas Mataram, Indonesia)、Lalu Muh. Khairul Luthfi(Program Studi Peternakan, Universitas Mataram, Indonesia)、Ilham Arafat Arrazy(Program Studi Teknik Elektro, Universitas Mataram, Indonesia)、Naufal Septian Husain(Program Studi Ilmu Hukum, Universitas Mataram, Indonesia)、Irwin Aftullah(Program Studi Ekonomi Pembangunan, Universitas Mataram, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Syarifa Wahidah Al Idrus, I Nengah Dwi Witarsana, Sri Dinda Ambar Sari, Hani Soraya, Septi Wahyuni, Petronela Kabes, Ranissa Putri Natar Agustiya, Lalu Muh. Khairul Luthfi, Ilham Arafat Arrazy, Naufal Septian Husain, Irwin Aftullah PEMANFAATAN PANGAN LOKAL BERBASIS DAUN KELOR DALAM PEMBUATAN COOKIES SEBAGAI UPAYA PENCEGAHAN STUNTING DI DESA KERTASARI MELALUI EDUKASI GIZI DAN PELATIHAN PARTISIPATIF. Jurnal Warta Desa (JWD) 2026-08-05. DOI: 10.29303/jwd.v8i2.364. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。