著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Food biomacromolecules.

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食用油は、エネルギー源や脂肪酸の供給源となり、脂溶性ビタミンを取り込む媒体にもなる、食事に欠かせない成分です。一方で、揚げ物のような高温調理では、油に含まれる脂肪酸の構成が変化することが知られています。

研究チームは、高温とその加熱時間が食用油の脂肪酸の安定性と組成にどのような変化をもたらすかを調べました。特に注目したのは、加熱によるトランス脂肪酸の生成です。対象は、原料を加熱せずに搾る低温圧搾法でつくられた油7種と、精製工程を経た油5種です。

調べた方法

論文の抄録によると、各油を230±5℃で加熱し、加熱時間を0時間(加熱なし)、1時間、2時間、4時間と変えて脂肪酸組成を比べました。

脂肪酸は大きく、二重結合を持たない飽和脂肪酸、二重結合を1つ持つ一価不飽和脂肪酸、2つ以上持つ多価不飽和脂肪酸に分けられます。トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸のうち、二重結合の部分が特定の立体構造(トランス型)をとっているものを指します。

主な結果

加熱により、低温圧搾油と精製油のいずれでも飽和脂肪酸の割合が段階的に増えました。一価不飽和脂肪酸は加熱時間とともに全体としては増える傾向を示しましたが、油ごとに違いがありました。抄録では、低温圧搾パーム油(41.31%から40.64%)、精製パーム油(44.99%から42.60%)、低温圧搾ココナッツ油(7.71%から0.62%)で大きな減少がみられたと報告されています。

多価不飽和脂肪酸は熱に非常に弱いことが示されました。最も大きく減ったのはマスタード油(30.64%から17.31%)と大豆油(61.20%から40.65%)でした。これに対し、低温圧搾と精製のヒマワリ油、そして米ぬか油は、高温処理後も多価不飽和脂肪酸を比較的よく保っていました。

トランス脂肪酸については、加熱前の段階で精製油の含有量(0.16%〜1.22%)が低温圧搾油より比較的高いことが報告されています。加熱すると、精製大豆油では最大5.88%、低温圧搾ごま油では最大4.05%までトランス脂肪酸が増えました。一方、低温圧搾と精製のヒマワリ油とパーム油、低温圧搾マスタード油では、加熱中もトランス脂肪酸の量はほぼ一定でした。

また、精製油では2時間の加熱後に脂肪酸組成が大きく変化したのに対し、低温圧搾油では4時間の加熱後に変化が非常に大きくなったとされています。

この研究が示すこと

この研究は、高温で長時間加熱したときの脂肪酸の変化が一様ではなく、油の種類や、低温圧搾か精製かという製法によって大きく異なることを示しています。多価不飽和脂肪酸の減り方やトランス脂肪酸の増え方、組成が大きく変わり始める加熱時間に油ごとの違いがみられた点が、著者らの報告の中心です。

原著論文の著者・所属:Nandipeta Venkatesh(Food Chemistry and Nutrient Analysis Division ICMR‐National Institute of Nutrition Hyderabad India)、V. S. S. Prasad(Food Chemistry and Nutrient Analysis Division ICMR‐National Institute of Nutrition Hyderabad India)、R. Ananthan(Food Chemistry and Nutrient Analysis Division ICMR‐National Institute of Nutrition Hyderabad India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nandipeta Venkatesh, V. S. S. Prasad, R. Ananthan. Impact of high temperature processing and heating duration on fatty acid composition and trans fatty acid formation in seven cold‐pressed and five refined vegetable oils. Food biomacromolecules. 2026-08-21. DOI: 10.1002/fob2.70086. 原著ライセンス:CC BY.